第2章1ー31
踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々。カサは生まれて初めて、滑稽な男女の踊りを夢見て、願うほど、阿呆になれた。それはルタンという男の力なのか、はたまた、神からの啓蒙の一環なのか、この時点では定かではなかったし、カサとしては、これはまさしく、ルタン様の輝きにしか想えなかった。今までのカサの人生も輝いていたが、この男の存在によって、幸か不幸か、それがより鮮明な色彩を持って、迫りくるようになった。それは時に、眩しすぎるものでもあるから、目にも心にも酷く焼き付いてしまい、ハレーションを起こし、しばしば焦点が合わず、錯覚し、色々とぶつかるし、痛い。疼く。これが恋というものなのか…。少しでもルタンと離れるのが、嫌で嫌で嫌で嫌より嫌で仕方が無かった。ルタンが居ない世界など、ぶっ壊れてしまえ!そのような尋常ではないものさえも、脳裏によぎり、身体はシーラカンスのように熱くなった。フェルマエ城の西方のとある一室のなかで、女は、窶れ、髪も散らばり、壊れていた。だが、何故か、瞳はガーネット。
同じ部屋にいるアミは、その様子や経緯に気付いていたのだが、これは、女としても、霊的にも大事なところを通過している最中であるから、言葉を掛けず、そっと見守っていた。人間には、底知れぬ魁偉な力がっ!
ハマエは、弟であるのに、何も気付かなかった。ハマエは、本当に、悪気が全く無いので、赦して欲しい。どうやら、人が気付かないということも(気付けないということも)、神のご経綸のひとつのようだ。気付かないこと、無意識下においても、世界全体がより循環していく、潤滑油となることも、時には、あるようだ。命は、存在しているだけで、充分に、世界の役に立っている。「この役立たずが!」と言ってしまう人々もなかにはいるが、それは、大きな見落とし点があることに、気付いていないことを暗に示している(時と場合によっては、そのように一喝をすることも大切)。ただ生きる。皆、ただ生きていれば、それだけで、特大のはなまるを授かっているのだ!
だがしかし、生きながら、死んでもいいし、無理しろとは言っていないのだが、、が、しかし、元気になってきたのなら、やはり、躍動した生を、過ごして欲しい。疾風怒濤のように!そして、もっといえば、決して眠ってはならない!その手でしっかり舵を握れ!握るんだ!
※続く




