第04話 最強伝説-11 - 戦後処理
第04話 最強伝説-11 - 戦後処理
「わかった」
シリンからの返答があり、展開していた魔法陣も消えた。
さて、あと処理である。
まずは、早いところこの場を立ち去らないと、さっきのフレアに気づいた人間がやってくるだろう。
関係者と思われたくない。
というわけで、俺はシリンを抱き上げると、立体駐車場の屋上へと移動する。もちろん外からだ。
人の気配から死角になっている場所を選んでいるので、これといった目撃者はいないはずだ。
もちろん、肝心のヤンキー君達はがっつりとシリンに関わっているのだが、それに関しては後で対処するしかない。
「いいか、これから帰るまで一言も話すなよ。一言もだ」
俺は立体駐車場の中を移動しながら、噛んで含めるように言って聞かせる。
「わかった」
シリンはけっこう素直に返事をするが、
「話すなと言ったはずだ。返事はうなずくだけでいい」
俺はしっかりと念押ししておく。
すると、今度は黙って頷いた。
一階まで降りると、明らかに騒がしくなってきた。
何かが起こったらしいということが、伝わってきているのだ。
外にでるとヤンキー君達が居た場所の近くに人だかりができ始めている。
おそらく誰かが通報したのだろう、警邏中であったと思われる制服警官が現場の様子を確認していた。
俺はシリンを連れて野次馬の中に混ざり、どんな状況になっているのかを確認する。
それほど時間が経っていないこともあり、現場に変化はほとんどなかった。
目をやられ火傷に苦しがっていたヤンキー君達はウロウロとするのをやめて、地面にうずくまったままうめき声をあげている。
俺の関心はそっちではなく、シリンを雇ったヤンキー君達にある。ただ、まだ意識は戻っていないらしく転がったまま動かない。
パトカーと救急車のサイレンの音が聞こえてきたから、じきにやってくるだろう。
俺は、手早くスマホで現場の様子を撮影しておく。同様なことをやっている野次馬は他にも何人もいて、目立つような行動ではない。
野次馬はどんどん増えているし、より目立たなくはなっているが、すぐに応援の警官がやってくるだろう。その前に、この場を離れる。
家に帰り着いた後、俺はシリンと向き合った。
「さて、何があったか話してもらおうか?」
だが、シリンは頷いたまま黙っている。
たぶん、嫌味のつもりだろう。もちろん俺は、そんな嫌味に付き合いたい気分ではないので、シリンの見た目だけはやたらと綺麗な顔を両手で挟んでへんてこな顔にしてやる。
「帰るまでと言ったろ? それとも、俺に喧嘩うってんのか?」
どうも、俺の頭もヤンキー思考に汚染されてしまったかも知れない。
「いや、そんなことは……」
シリンはへんてこな顔をしたまま言葉を濁す。




