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宮廷監察局の魔女令嬢~宮廷に渦巻く嘘を、私が暴きます~  作者: ポムの狼
第二章「公爵令嬢になる」

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第13話 皇帝陛下の呼び出し

 私は侍女の手首に指を当てる。


 脈が速くて弱い。

 血の巡りから整えないと。


 背中に手を当てて、ゆっくりと私の魔力を侍女の体に流し込む。

 侍女の体を淡い光が包み込んだ。


「体を流れる命の川よ、その怒りを鎮めよ」


 手首の脈が落ち着いてきた。

 次は呼吸だ。手を当てる位置を少し上へずらす。


「体を抜ける風の道。大きく門を開き、新しき風を受け入れよ」


 苦しそうだった侍女の呼吸が少しずつ落ち着いていく。


「……マノン……殿下」


「アデル!」


 侍女が顔を上げると、皇女が涙を流しながら侍女の手を握った。

 意識も戻ってきた。ひとまずこれで、死ぬことはないだろう。


「ニーナ、よくやった」


「お父様」


 父が私の肩に手を置いていた。

 その表情は、心配と安堵が入り混じったような顔だった。


 周りの貴族たちも「ストヤノフ公爵家のご息女が魔法で侍女を救った」と大騒ぎだ。


 その後すぐに宮廷の医官が駆けつけて、アデルと呼ばれた侍女は担架に乗せられ運ばれていった。


 園遊会はそれで打ち切りとなった。

 父も宮廷監察局の局員たちと急遽の仕事が入った。第四皇女であるマノン殿下の紅茶に何が混ざっていたのか、犯人は誰なのか、調べないといけないことが山積みらしい。

 私だけ先にラリサとステファンと一緒に公爵家へ帰る羽目になった。まぁ、じろじろ見られて、窮屈だったから喜ばしい限りである。




 その後数日、私はイルディコ先生と勉強したり、ラリサとお茶をしたりと穏やかな日々が続いた。

 父はというとほとんど帰ってくることはなく、宮廷で事件の捜査に追われている。可愛そうではあるが、これもお仕事だ。


「あ、お嬢様、見てください」


 私とラリサが庭でお茶を飲んでいると、父の乗った馬車がやっと帰ってきた。

 ラリサが急いで紅茶を片付け始める。


「何をしているのです、お嬢様! 早くお出迎えに行きませんと」


 いつまでも紅茶を飲んでいた私をラリサが急かした。

 仕方がない。これも公爵令嬢の務め。数日休みなしで頑張った父を労ってあげよう。

 

 日傘をさして馬車に駆け寄ると父が慌てた様子で降りてきた……どうかしたんだろうか。


「おかえりなさいませ、お父様」


「ニーナ、急いで準備をしなさい。陛下がお呼びだ」


「へ?」


 予想外のことに変な声が出る。


「陛下が? 私をですか?」


 父は顔を顰めながら頷く。嫌な予感しかしなかった。





 登城用のドレスに着替えた私は、急いで父と馬車に乗る。

 一体全体何がどうなったんだ!?


「お父様、どうして私が陛下に呼ばれたのですか?」


 父はため息を吐いた。


「私もまだ聞かされていない。でも、あの方のことだ。碌なことじゃないことだけは覚悟しておけ」


 もう帰りたいんだが。


「陛下とお父様は、随分と親しいのですね」


「仕事の付き合いだ……」


 父は窓の外を見ながら、疲れた顔でどこか遠くを見ている。

 ご苦労されているのですね、お父様。


 そうこうしているうちに馬車が宮廷の前で停まる。

 父の手を取り馬車を降りた。




 父が私を案内したのは、宮廷の中の金の装飾が施された大扉の前だった。

 扉の両脇には、兵士が立っていて、ここが常人には立ち入りを禁じられている場所だということがひしひしと伝わってきた。


 父が大扉をノックすると「入れ」と短く返事があった。

 扉の横に控えていた兵士の二人が大きな扉を押して開けた。


 赤い絨毯が敷かれた先。一段高くなったところに皇帝陛下がいた。

 金の玉座に腰掛け、私と父を見るとニヤリと不敵に笑う。


「近くへ」


 陛下の声で、父と私は前へ出た。

 皇帝陛下の前で頭を下げた父の少し後ろ――私もカーテシーをして、目線を絨毯へ落とした。


「ニーナ・ストヤノフ嬢」


「……はい」


「そなたに宮廷監察局への入局を命じる」


 息が止まった。

 宮廷監察局……私が?

 

「陛下!」


「なんだ、イヴァン。文句でもあるのか?」


 すぐに陛下に食ってかかったのは父だった。


「まだ十四歳です」


「何を言っている。我が国は完全実力主義。年齢も身分も関係なく官吏に登用できるではないか。軍部には士官学校を飛び級して十三で入隊した者もいる」


 父が唸る。私としては、元から父に何か仕事を紹介してもらう約束だったのだから、ただそれが早まったと思えば御の字だ。それに母が勤めていた宮廷監察局がどんな仕事なのかも興味がある。


「私としては、ニーナ嬢が事件解決に協力してくれるなら役職はなんだっていい。皇女の侍女か皇子の誰かの婚約者にしたっていいんだぞ。お前の目の届くところにと思ったが、いらない気遣いだったか?」


 父は歯が欠けるんじゃないかってくらい噛みしめてから、項垂れた。

 どうにもできないと諦めたらしい。


「陛下、発言をお許しいただけますか?」


「許そう。ニーナ嬢」


「事件解決とは何のことですか?」


 皇帝は顎鬚を撫でた。


「先日、第四皇女のお茶を毒見して、侍女が倒れた件。その犯人を突き止めてほしい」


 私はここで父を見た。

 連日宮廷に籠って仕事をしているのに、まだ犯人が見つかっていなかったのか?

 あれから、もう一週間になる。プロの宮廷監察局の人間が一週間調べて分からなかったものを私に解き明かせるとは思えないが……

 その事件解決に私が必要な理由があるということか。


 もう一度、皇帝陛下の顔を見る。

 陛下の顔には、私を品定めするような嫌な笑顔が張り付いていた。


「承知いたしました。その任、謹んで拝命いたします」


 陛下のお考えは、私には分からない。

 そもそも断れないのだから、潔く引き受けた方が利口というものだろう。


 深々と頭を下げた私を見て、父は皇帝陛下の前なのに大きなため息を吐いた。




第2章 完

こんにちは!ポムの狼です!


魔女令嬢の事件録~宮廷に渦巻く嘘を、私が暴きます~を最後までお読みいただき、ありがとうございますm(_ _)m


宣伝用ということで、なろうにはここまでとしておきます。

9月18日からカクヨムにて、続きを投稿する予定ですので、「続きも読みたいぞ!」という方がいらっしゃいましたら、カクヨムにも遊びに来ていただけますと幸いでございます。


また、9月18日になりましたら、URLも次のお話で宣伝させていただきますので、よろしくお願いいたします。


最後になりますが、本作をお手に取り、お読みいただき、誠にありがとうございました( ;∀;)

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