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5.【検索】安寧とは

「ねえほぼ毎日じゃん。先代魔王は何してたの。職務放棄?」

「むしろ歴代の“魔王”は皆血の気が多いものですよ。先代魔王様も例に漏れず、戦のお好きなお方でした。ですからすれ違いに強そうな魔力をお持ちだった貴女様に勝負を仕掛けたのです。平和主義なのは現魔王である貴女様くらいですよ」

「そんなもんなの」

「そんなもんです」


そっか。そういや勝負を仕掛けられたとき、ウキウキるんるんなキラッキラした目で「其方そなた強い魔力を持っているな。我と勝負しろ」と言われたのを思い出す。

あれも元は強いやつを探すためにわざわざ魔界から出てきたのだとすると、喧嘩っ早いのだととても納得した。


魔界でも度々魔王は強いやつを見つけては挑んで配下に加えていたという。

けれども魔王の座を私に明け渡してからはめっきりそういうこともなくなり、今じゃ老後よろしく隠居生活。


「こんなことならクロードに魔界の管理全部やらせれば良かったかな」

「それは困ります。私には現魔王である貴女様をお守りするという大事な使命がありますゆえ」

「えだって私先代魔王より強いんだよ?実質最強なんだよ?誰が狙うの」

「魔王である以前に貴女様は人間界においての王女殿下でございましょう。魔王と知らずその御身を狙う不届者も多いはず。まさかご自身で対処なされるおつもりで?」

「うーん、それを言われると」


確かに今の私は魔物に好かれるだけの幼い姫君。はたから見れば魔物さえいなければ格好の餌か。

うーん、うーん。


「でもさ、こう頻繁に魔界から緊急連絡来るのも困るんだよ。ねえ私言ったよね?争いは禁止しますって。なのに、なんで次から次へと破るやつが出るの?」

「人間界にも法律というものがありますが、全員が守っていますか?」

「うぐ。」

「まあそういうことです」


こやつ、反論が早くなってきた。


「…なんか釈然としない」

「魔界も人間界も、その性質に何ら違いはないというだけです」


クロードは、どうにかして私を魔界に連れて行きたいらしい。

けど私は人間界で暮らしたい。さてどうしたものか。


うんうん悩みながら、次の目的地に着いたところで打開策を見つけた。

ビョルビヤ山脈に生息する魔物、ゴーレムである。その山脈には鉱石を始め様々な素材が採取出来る、物理的素材の山。

ゴーレムは分類上岩の人形と言われているので、人形からヒントを得た。


「私の分身を作ればいいんだ」

「何です???」


なんだ、簡単じゃないか。


「魔王様??」

「私の分身に魔界を統治させれば問題解決じゃない?」

「いやそんなこと…。待て、可能なのか…?魔力が本人と同様、もしくは同等なら偽物だとバレる心配もない…?」


あれ、クロードまで考え込んじゃった。でもまあいいや、可能性があるのなら、賭けてみる価値は十分ある。


私は早速山に降りて、最も魔力を帯びた石を見つけ今度はグリフォンに乗り持ち帰った。

こういう素材の石は、加工の仕方で服にも武器にもなる万能型。元の魔力が多ければ多いほど加工の幅は広がり、術者の魔力次第では何にでも化ける代物しろもの。つまり、可能性の塊ということだ。


途中その魔力に反応してか、フェニックスが炎を吹きかけた。消そうとしてるんじゃなく、加工しようとして、疼いている感じ。

おやめ。これはおもちゃじゃないよ。


王城に帰還し、メイド達が「お帰りなさいませ」と出迎える。


「ただいま〜!」

「シイユ様。お怪我はございませんか?」

「ないよー!楽しかった!」

「それはようございました。さあさ、小腹が空いた頃でしょう。おやつのご用意が出来ておりますよ」

「おやつ!?食べるー!」


石は一旦クロードに預け、私は優雅なおやつタイムに。

魔族相手とメイド達とで人格が違う?黙らっしゃい、処世術です。


グリフォンとフェニックスにもお別れを言って、颯爽と二匹は空へ。うーん、やっぱりカッコいいな。



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