39.危険な遊び
さて、従者が二人増えたところで、忘れていたことがある。
そう。新しく従者に加入したケルヴィンとアルファ。この二人は私が魔王だと知らない。
クロードとユイだけだったときはなんだかんだで周囲に上手く誤魔化せていたけども、一番引き込んじゃマズイ人物を二人も招き入れてしまった。
シイユ、万事休す!!
…と思ったら。
「我らのことはお気になさらず。シイユ様はいつも通りにお過ごしください」
「いつも通りにって…」
「魔法で何か遊ばれますか? よろしければご一緒に」
このケルヴィンとアルファ。ことあるごとに私にこうやって普段の生活を送らせようと誘導してくる。
「…その、あまり世間体的によろしくない遊びばかりしておりまして…」
渋々、ほんの少し。メイドにも話したことがない日常を暴露する。
引かれるか。さすがに危ないと叱られるか。
メイド達には散々「危ないことはしちゃ駄目です!」と言われている。
ドッキドキで反応を待っていると斜め上な返答が二人からきた。
「まあ、王族は良く言えば過保護、悪く言えば身動きが出来ない立場ですからね」
「ですがそれだとストレスも溜まるでしょう。どうでしょう。その遊びに我らも加えてはいただけませんか」
意外や意外、乗り気な二人に私はちょっとだけ手の内を晒す。
これだけ私に従属してくれる二人なら、大丈夫かも。
「じゃあ…少しだけ。…私、本当は皆様が思っているよりも魔法が使えます。魔物に愛されるだけではない、ということです」
『…で、なぜここなんだ』
『普段やってる遊びって言ったらここしか思い付かなくて』
グリとフェニに乗って、アルバトロスのいる迷宮へとやってきた。
「…見事なグリフォンとフェニックスですね」
「この二頭を手懐けられるとは…」
手始めにいつものペットを紹介した。二人とも反応は上々。ただ乗っただけだとフェニックスの炎で二人とも炭と化すので、防護魔法をかけた上でフェニに「二人は味方。敵じゃない」と言い聞かせておく。
この防護魔法も結構高度なものを使っていて、ケルヴィンは驚いていたがアルファは「さすがシイユ様です」と普通に受け入れていた。
ちなみにユイには久々に私の影武者として部屋に居残ってもらった。王女不在時の準備は万端である。
「……これから迷宮に行こうと思います。お二人には、クロードとともに私に同行してもらい、迷宮攻略をしていただきます」
迷宮、と聞いて真っ先に口を開いたのはケルヴィン。
「迷宮に? 迷宮は本来、組合に登録していないと入れないはずでは…」
「組合に見つかってない迷宮なんです(嘘)。私は一応王女なので登録するのも手続きがめんど…、色々厄介で」
「…ほう。そういうものですか」
「シイユ様がそう仰るのであればそうなんだろ」
「ここは未登録の迷宮なので、ある意味出入り自由なんです。えっと、そこでケルヴィンも強くなれるかなって」
「素晴らしいご配慮です」
「クロード殿とユイ殿も、ご経験が?」
「私は同行しただけです。ユイには必要がありませんので」
ユイは私の分身体だからね!
未登録の迷宮。とどのつまり、私専用の迷宮。
以前アルバトロス専用に造った迷宮をちょっと改造した。
レベルはかなり下げてある。それでも並の冒険者なら即死確定な内容だ。
「面白そうですね。勇者の腕がなります」
「足手まといにならなければいいですが…」
やる気十分なアルファと反対に少々弱気なケルヴィン。
てか、王女が迷宮に行くって言ってるのにそんな簡単に受け入れていいのか。
あとさっきからずっとアルファがフォローしてくれるんだけど何で?? まるで第二のクロードみたい。
「危なくなれば私も手を貸します。まずは、死なない程度に頑張りましょう」
「シイユ様のお手を煩わせるまでもありません。ケルヴィンへのトドメは僕が務めますよ」
「おい待て。何で殺す前提なんだ。死なないようにって話だろ」




