10
私は、この感覚を知っている。
私は、また戻ってきたのだ。
私は、覚えている。
私は、喋れる。
「気分はどうだい? 僕の声が聞こえるなら目を開けていいよ」
久しぶりに聴く声だった。
何度も、何度も聞いた声だった。
私は、目を開けた。
「僕の事が分かるかい?」
――もちろん覚えている。
生まれたときのことも。
町の女の子に紹介してもらった時も。
彼と好きな本の話をしたことも。
町の女の子や男の子と隣町に出かけたことも。
彼を好きだと気付いたことも。
彼に告白した事も。
――すべて覚えている。
「ただいま。ウィル」
私がそう言うと、彼は微笑む。
「おかえり――」
そして彼は私の名前を――
Fin