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第50話
靴を履き、一歩部屋を出ると、まるで春から夏へ向かっているかのような心地よい風を感じた。
梅雨直前の、湿度も少なく、かといって夏のような直射日光もない、一番過ごしやすい時期だ。
「レイ、この季節はずっとこのままの予定なのか?」
「いいえ。今回の実験の時だけです。1週間程度なので過ごしやすいほうがいいという、実験主催者からの指示です」
「そうか」
もっとも俺だって日本の湿度増し増し、温度劇高のような中を移動なんてしたくはないから、これぐらいがちょうどいいかもしれない。
思いながらも団地の廊下へ出ると、右や左を見る。
同じような玄関がいくつか並んでいるが、一つだけくぼんだ所があった。
「あのドアがないところに行けばいいんだな」
「はい。今回の待ち合わせは数百メートル離れたところになります。そこまでは徒歩になります」
レイに教えてもらいながらも、くぼんでいるところにあるエレベーターを使って、1階へと向かった。
ここで初めてこの階が4階だということを知った。




