さんじゅうに
「愛と美の女神の加護の試練は、愛されることだ。」
なんて素晴らしい。私はステラを愛している。そして、彼女も…………。
「人を愛することではない。人に愛されることだ。違いが分かるか?」
「素晴らしいことです、やはり、未来の王妃はステラを置いて他におりません。」
力一杯に言うと父上が額を押さえて俯いていた。
「相手の意思に関係なく、心を支配しようとする、女神の加護とは恐ろしいものだ。分かっているのか?愛していたはずの相手を煩わしいと思ってしまうことなんだぞ!」
ライモンの言葉に首を傾げる。
「皆、ステラを大切にしていただけだ。それにそれぞれの婚約者とは、所詮政略、愛など存在しない。思い思われ、愛し、愛される存在こそが、」
目の前に一つの魔石が転がった。
「なんだ?」
「お前の取り巻きだったザク伯爵家のユリウス覚えているか?」
取り巻きとは失礼なっ!彼は将来有望な我が側近だぞ!
「そのユリウスの婚約者が誰だったか覚えているか?」
「元、だろう?ミネルバ伯爵家のオフィーリア嬢だったか?ステラから、とにかく性根の曲がった女で、ステラをブランジェと一緒になって苛めていた、許せない女だ。あいたっ!何をする!」
「失礼。オフィーリアは、我がラーゼフォン公爵家の親戚筋の娘でしてね。」
ライモンの側近であるルーファスが角砂糖を私の額にぶつけてきたのだ。不敬だぞ!
「幼馴染みとして共に歩んできたユリウスとは、本当に仲のよい間柄で、あなた様の言う政略ではありましたが、此方が歯が痒くなるほどの確かな恋情を育んでいたのですよ。ステラ嬢がユリウスを気に入るまでは。」
「逆だ!ユリウスがステラを気に入ったのだ。オフィーリア嬢とは違う子心優しいステラに。」
「たしかに、中身はともかく外面の良かったステラ嬢に籠絡されたユリウスは、オフィーリア嬢を蔑ろにし、勉学も疎かになるようになった。ユリウスは、ミネルバ伯爵家に入り婿する予定だったからな、成績が落ちることはミネルバ伯爵家にとっても憂慮される、ステラ嬢にうつつを抜かすユリウスの評判は当然ミネルバ伯爵家にも寄せられ、ザク伯爵家としてもユリウスに再三苦言を呈していた。ところが、ユリウスは、こともあろうにステラ嬢の虚言を信じオフィーリアに婚約破棄を告げた。」
「待ってくれ!オフィーリア嬢が怪しげな男達を雇ってステラを襲わせたのは事実だ!」
「虚言だ、クソが!その証拠がその魔石に入ってる。全てはステラ嬢の自作自演だ。お前、ブランジェ嬢の時みたいに大勢の観衆の中でもオフィーリア嬢への冤罪劇を繰り広げたんだって?」
「嘘だ、そんな………。」




