さん の に
そもそも魔法省とは、魔法や魔力について研究し世のため人のために動く機関である。魔法のことなら貴賤を問わず受付け、『断らない』と言うある意味ブラックな仕事環境を“ウリ”にしている部署である。つまり、公爵家の依頼に応えるのは当たり前のことだと考えていたので、彼らの対応にあきれ返ったのだ。
「何かと張り合ってきますものね、あの方。特にあなたが宰相になられてから。」
夫人は扇で顔を隠しながら夫を見る。
フィンネルは何か言いたげに口を開けては閉じて夫人から視線を反らした。
クライスが彼を目の敵にし始めたのは、ビエラとの婚姻がそもそもの原因である。ビエラの実家だあるグランベルム侯爵家にボトムズ公爵家からの打診は何回かあったようだが、選ばれたのはラーゼフォン公爵家の嫡男だった。後に宰相となるフィンネルを先物買いしたのではと婚約発表後に噂されたほどだ。
「そう言えば、あの方の愛妾、女のお子さまをお産みになったのですって。ブランジェと同い年の。……で、今陛下には、ブランジェより2つ年上の王子がいますわね?」
公爵は鼻で嗤った。
「王族に嫁がせるつもりか、……言っておくが、俺は可愛いブランジェを王族なんぞに嫁がせないからな。」
「はい、はい。誰が相手でも嫌がりそうだけど。……にしても、『女神堕ち』ですか……。適当な答えをあっさりと言ってくださったわねぇ。」
魔力の強い、高い者達の通称。
公爵はブランジェがそうだと言われてもピンとこない。魔力の強い者など公爵の周りにはゴロゴロいるからだ。
自身とて『女神堕ち』と言われてもいい程の魔力を持っている。そもそもどの程度ならそう呼ばれるのかなどの規定もない。公爵一家は誰も皆魔力が強く、公爵の息子達も将来は、其々に能力を活かした職に就くことになるだろう。
因みに、魔力の強い者同士には子供が産まれにくいとされているにも関わらず子宝に恵まれている公爵夫妻は国の奇跡とも言われている。
今更『女神堕ち』と言われてもブランジェの眠りに対する答えとは考えられなかった。




