にじゅうきゅう
礼拝堂で自分の愛について叫んだ。
愛しいステラを迎えるために神の近くで宣言すれば、さすがのラーゼフォン公爵家と言えども無視は出来ないと思った。
でも、向けられたのは冷ややかな視線とアッサリ婚約破棄と国外追放を受け入れる元婚約者の去って行く背中だった。
「デイビス殿下……もうすぐ、陛下も参られましょう。婚約破棄の件は喜んでお受けいたしますから、お座り下さいませ、神の御前ですよ。」
背筋がヒヤッとなるようなラーゼフォン公爵夫人の声に我に返り“喜んでだと?”疑問が頭に浮かんだが袖を引く存在、ステラの座る席がないと気付いた。
思ったが最後、口から出てきた言葉は元婚約者の席をステラに譲れと言うものだった。
王族が総出する際の礼拝堂では座る位置が決まっている。分かっていたことなのに言葉が次々と出てきて止まらない。
騒がしさに気付いたのは、父上よりも先行して入ってきた近衛騎士だ。
その後ろにいる父上の姿も確認出来た。後ろの方の物達は、前の方の騒ぎに立ち上がり何事かと覗き込んでいたが、父上達の登場でを頭を垂れ始めていた。
威厳のある父上の姿。本来なら一番の愛情を得ている母上が隣にいるはずなのに、父上の隣には誰も居らず、その後ろに王太子ライモン、第一王妃、第二王妃、第三王子リウキが続く。
「何事か、」
気付くと全ての貴族が立ち上がり頭を垂れている。
私とステラ、そして信じられる将来の側近のみ動けずにいた。
「着席せよ、神の御前だ。」
父上の言葉で漸く時が動き始め、側近達が散っていく。戸惑っている愛しいステラを私の隣にと考えて父上に願い出ようとした。
「何だ、その娘は……。」
眉間にシワを寄せステラを見る父上に違和感を覚えた。
「はい、父上!私の新しい婚約者、ステラ・ダンバ、」
言葉の途中で父上が手を上げた。
顔色が優れない父上が心配になった。
「デイビス、その娘を下がらせよ。」
「父上!彼女は!」
「よい、何も言うな。命令だ、別室へ下がれ。」
父上の側近であるテセウス・グラヴィオンが、前に出て有無を言わさず私とステラを別室へと連れていった。
別室へ到着すると直ぐにダンバイン男爵が現れた。
「お父様!」
駆け寄る娘の頬を打つ父親に思わず立ち上がる。
「ステラを叱らないでくれ!これは私の望みだ!」
しかし、近寄ることはテセウスによって叶わなかった。
「此度の騒動に陛下はお心を痛めておいでだ。男爵、ご令嬢の教育を今一つ見直されよ。」
男爵はステラを引き摺るように連れていった。
「、どうして、どうしてだ!私は自身の正義に則り!」
テセウスは悲しみに満ちた顔で私を見た。
「殿下、暫く言動を封じ、城の別室にて謹慎していただきます。」
テセウスの言葉で私は意識を失った。




