ろく の に
9/8加筆訂正。
母からの『愛しのビエラ……。』そんな書き出しで始まる手紙には、『女神堕ち』と言う言葉を聞いたのは、母方の祖母からだったこと、ビエラが“自身の魔力の源”について気付いていなかったことに驚いたこと、いずれ子をなしていけば、魔力が安定すること、ビエラ自身が自己の食欲について余り悩んでなかったこともあり、本人には伝えず、家族、使用人総出で協力してビエラを育てたことが書いてあった。
「まぁ、私は悩んでましたわ!お母様ったら、」
「そうなのか?」
「そうですとも!人に気付かれずに食べ物を忍ばせ、食す術に悩まない日はありませんでした!」
力説する妻に苦笑する。
やはり、ビエラは少し変わっていて、そんなところも魅力の一つだなとフィンネルは考えた。
「どうかなさいまして?」
「いや。読み進もう。」
夫妻の視線が再び手紙に向けられた。
「……あら、お母様も?」
手紙には、ビエラだけでなく、彼女の母方の家系の女性の殆どが多産であり、魔力コントロールのために何かしらの制約をかされていたことが書いてあった。
因みに、ビエラの母は、1日の半分以上を運動しながら過ごすと言うものだったらしい。
「だから、お母様はダンスがお上手なのね。」
物心つくまでは兄弟と共に敷地内を走り回り、物心がつくと淑女の嗜みとしてダンスをひたすら行っていたと言う。
“疲れ知らずの体力バカ”と兄弟には言われていたと書かれてあった。
動かない日は、魔力が暴走し家財をよく破壊していたそうだ。じっとしておかなければならない授業は大変だったと言う。外に行けない雨の日などは最悪で屋敷中を走り回り、娘の教育がなってないと曾祖父は怒り、離縁の一歩手前までいったそうだ。その頃になって漸くビエラにとっての曾祖母が一族の女の中にある特殊な性質、魔力コントロールについて話がされた。話を聞いたビエラの父は母のために室内にいながら走ることの出来る魔道具を発明してくれたり、兄弟も巻き込んでダンスの相手をしてくれたりしたと書かれていた。
「やっぱり遺伝?」
「遺伝ですが、母は大祖母様から、原因は『女神堕ち』と言う特異な力であると説明を受けていますわ。んー、どうやら、今と昔では『女神堕ち』に対する認識が違うようですが、母もよく分かってないみたいです。」
一般的に伝わっている『女神堕ち』ではなく、本来の『女神堕ち』の力。
幼いブランジェの眠りの手掛かりはどう考えても『女神堕ち』にあるらしい。ビエラや義母の話では、子を成すまでその代償行為ともとれる習慣は継続されていた。となると、今はともかく、これから成長するブランジェに一日の殆どを寝たまま過ごさせる訳にはいかない。公爵令嬢としての一般教養やマナーは学ばせなければ将来、ブランジェが泣くことになる。
「子供を孕んだら魔力が安定するなど!まだ赤子の娘に想像できるかっ!」
父フィンネルは叫ぶ。
どうすれば、ブランジェの魔力を安定させつつ一人前の淑女として育てたら良いのか。
夫婦は頭を再び悩ませることになった。




