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09:スキル鑑定が大活躍!そんで肉まで手にしちゃったウハウハなオッサン

読んでいただき、ありがとうございます!


前回に連載投稿していたお話が申し訳のしようもない終わり方をしておりますので、本当に、読んでいただいて感謝しかありません。

月並みですが、がんばります。


あと、ブックマークしてくださったお2方。それに評価をして下さった方には、ありがたく思っています。嬉しかったですm(__)m

僕は森の奥へと再び足を向けた。


もちろん、僕ひとりじゃない。

か弱い僕を守るために、オールやチッチといったコボルトの若者たちが付いてくれている。

要するに、僕を迎えに来てくれた彼等彼女等だ。


若くて五体満足なコボルトの全員といっていい。


他はお婆巫女みたいな老人や怪我人ばかりだ。


それこそ、そんな弱ったコボルトを守るために人数を割いたほうが良いと進言したのだけど。


「御使い様こそが我等のしるべ


こわい顔で言われて、引き下がるをえなかった。


さて。

体感で5分ほど歩いたところで、僕は鑑定をONにした。


食べるものがあればいいな、あってくださいお願いします。


そんな感じで半ばミカ頼みで発動した鑑定だけど。


結果を言えば、食料はそこらじゅうにあった。


たとえばキノコ。


キノコといえば毒があるのと見分けるのが難しいけど、僕なら鑑定でわけなく判別することができる。


「これ、食べられるよ」


僕は如何にも毒々しい原色をしたキノコをチッチに差し出した。


「御使い様。お言葉ですが、これを食べた仲間はもだえ苦しんで死にました」


チッチが仲間の惨状を思い出したのか、眉を顰める。


「ああ、それは済まないことを思い出させてしまった。でも、本当にこれは食べても平気なんだよ。ただし火を通しちゃ駄目なんだ」


言って、僕はみんなを安心させるためにキノコをかじった。


頼むよ、鑑定さん!


咀嚼する。


明らかに毒キノコっぽい見た目のキノコは……甘かった。お菓子みたいに甘い。


お腹が減っていたこともあって、僕は一心不乱にキノコを食べつくしてしまった。


そこで、ようやくにコボルト達が僕に注目していることを思いだす。


僕はニッコリと笑ってみせた。


「ね、平気でしょ?」


「確かに。死んだ仲間は、食べた途端に苦しんでいましたから…」


チッチは僕が食べたものと同じキノコを手にした。


この毒キノコもどきはパッと見渡しただけでも其処彼処にニョキニョキ生えているのだ。


鑑定には、雑草並みの繁殖力とある。つまり、年がら年中、食べることができるということだ。


毒キノコもどきをチッチはめつすがめつ観ていたけれど、意を決したようにかじりついた。


オールや、他のみんなが固唾をのむようにして見守る。


もぐもぐ。食べるチッチは毒を飲むような表情だったけれど。

もぐもぐ。噛むうちに甘味が口の中に広がったのだろう。

もぐもぐ。終いにはニンマリとした顔で片頬をおさえながら。

ごっくん。と飲み込んで幸せそうに息を吐いた。


「…おいしい」


それを聞いた途端に、コボルト達が我先にと毒キノコもどきを採取して口にする。


「これは!」


「甘い!」


「うんまい!」


何時もはしかめっ面をしているオールですら口角を持ち上げて食べている。


続けて2本3本と食べようとしているコボルトに僕は言った。


「おいおい、キノコだけで腹いっぱいにならないでくれよ」


なんせキノコは栄養がない。


けれど、僕の言葉はコボルト達からしたら信じられない内容だったみたいだ。


「ほ、他にも食べられるものがあるのですか!」


僕のそばにいたブルドッグ(11歳・♀)が驚いたように訊いてくる。


「あるとも」


僕は、その場で屈みこんで木の根元の枯れ葉を払いのけた。


黄みがかった芋虫がうじゃうじゃと群れていた。


気持ち悪い。


けど、そんな気持ちを我慢して、僕は芋虫の一匹をつまみ上げると、頭部と思われる黒い部分をもいで、口に放り込んだ。


意を決して噛む!


と。


案外に……美味しいじゃないか!


とろみの濃いカボチャのポタージュみたいな味だ。

これは栄養がありそうだ。


と考えた途端に鑑定さんが教えてくれる。栄養満点だと。


僕は見守るコボルト達に親指を立てた握り拳を向けた。


「いけるよ、これ。食べてみなよ」


その言葉を待っていたとばかりにコボルトが集まって虫に手を伸ばす。


コボルトは虫を食べることに抵抗がないみたいだ。


言葉もなくポタージュ芋虫を食べている。


それほど美味しいのだろう。


それからも僕らは森の探索をつづけた。


渋味が強すぎて食べられないと思われていた木の実は水に1日ほどつけておくとアクが抜けて食べられるようになる。

大木の表面を覆っているコケは、何故だか塩の代わりになる。

他にもキノコを数種類、虫を数十種類。木の実だって干したり蒸したり潰したりしたら食べられるものが幾つも新しく見つかった。


そして極めつけは。


ゴフォブホ!


僕たちが和気藹々としているところに、突撃してきた獣がいた。


そいつは羊の頭と猪の胴体をもった生き物だった。


お腹がいっぱいになっていたことで、コボルト達は油断していたのだろう。


誰一人、オールでさえ接近に気づけなかった。


羊猪がシベリアンハスキー君(15歳・♂)に頭から突撃をかます。


現実世界でも猪に体当たりをされたら人間は大怪我を追った。

それはコッチの世界でも同じだろう。

しかもコボルトは小柄で、食べるものも食べてない彼等は肉付きが薄い。


体当たりをされたのなら、吹き飛んで、ただではすまない。


医者もいないのだ。

内臓どころか、骨が折れてさえ、命取りになる。


でも、結果を言えば悲惨なことにはならなかった。


ヒラリ、と闘牛士ばりにシベリアンハスキー君が羊猪の猛突をかわしたのだ。


「すごい!」


とチッチが驚いている。他のみんなも驚いている。というか、ヒラリとかわしたシベリアンハスキー君がいちばん驚いている。


けど、鑑定をしていた僕にはわかった。


--------------------


アンノウン

種族:ゴジバ(羊猪)

性別:♂

年齢:5


レベル:   8

HP : 210

MP :   0


こうげき:80

ぼうぎょ:70


ちから  : 120

すばやさ : 100

きようさ :  10

かしこさ :  30

せいしん :  30

こううん :  90 

かっこよさ:  60


スキル:猛突


--------------------


すばやさが100なのだ。


猛突というスキルに加えて不意打ちだったことを加味しても、数値は200ぐらいだろう。


コボルトに避けられる数値じゃない。


そう、ラズゥと死闘を演じてレベルが上がる前の彼等だったのなら、一撃で殺されていたに違いない。


でも、彼等は飛躍的に強くなった。

それこそ『すばやさ』はコボルトにとっての身体的な特徴なのか爆発的に能力があがっている。


いちばんレベルの低いチッチでさえ『すばやさ』は260。しかも今はお腹が膨れてBADステータスを引き起こしている『空腹』がなくなっている。


シベリアンハスキー君なら咄嗟で反応して避けられただろう。というか、実際に避けたし。


とはいえ、用心は重ねたほうが良いに決まっている。


僕は、ゴジバの右脚を見定めてイメージした。巡る血液が凍り、肉が凍り、皮膚が凍る、イメージ。氷結の魔法だ。


「凍れ」


手の平を向けて唱える。


「ぶひぃぇぇええ!」


ゴジバが吠えた。いいや、泣いた。


魔法が成功して、羊猪の右脚が氷結しているのだ。


僕は、何が起きたのか分からずに動揺しているコボルト達に向けて声を張り上げた。


「仕留めろ! お前らなら出来る! 臆すな、掛かれ!」


一斉にコボルトが動いた。


確かにコボルトの攻撃力は低い。

けれど攻撃が通らないほどに差があるわけでもない。

木の枝や石を手にして、攻撃力を高め、果敢にコボルトは攻めた。


闘い始めて、どれほどもなく。


コボルト達は見事に羊猪のゴジバを仕留めた。


肉を手に入れたのだ!


「やったぁ!」


と快哉を叫ぶかと思いきや。


倒したゴジバを中心にしてコボルト達は泣き崩れた。


「あいつには今まで、何人も仲間が殺されたんです…」


僕のお守りではべっていたチッチが涙を流しながら教えてくれる。


かたきが討てたんだな」


「はい…。これもみんな、御使い様のおかげです」


そんなことを話しているとオールが遣って来て、僕の前でぬかづいた。


「浮かれて危険を察知できませんでした。お許しください」


真面目だなぁ、と思わざるを得ない。

まぁ、それがオールの好いところなんだけど。


僕はどうにかこうにかオールに頭をあげさせた。決め手は「血抜きをしないでいいのか?」という問いだ。


獲物をとったからには、血抜きをするのは当然。

新鮮なうちに血を抜いておかないと、肉は臭くなる。


コボルト達にとってのゴジバは仲間を食い殺した仇であると同時に、久方ぶりの肉なのだ。


美味しく食べたいに決まっている。


ということで、オールを中心としたコボルト達はナイフのような道具こそないものの鋭利な爪を駆使してゴジバを引き裂いて血抜きを始めた。

流石に手慣れていて、お腹を引き裂いて内臓をうまいこと取り出している。


正直グロイ。


けれど、昨日今日の目まぐるしさで心が麻痺しているのか、グロイという感想があるだけで、気分が悪くなるということは無かった。


「本来は川に漬けて、血抜きを徹底するんですけど…」


そう言うチッチの口許からヨダレが『ちゅる~』と落ちた。

大慌てでヨダレを腕で拭くけど、拭くそばから垂れている。


他のコボルト達も同じ。

とてつもなく嬉しそうにしていて、尻尾がブンブンと振られている。


言っちゃえば犬だからなぁ。虫やらキノコやら木の実やらよりも、やっぱり肉なんだろう。


「じゃあ、みんなのところに戻ろうか」


だいたいの処理が終わったらしいのを見計らって僕が言うと、コボルト達は意気揚々と来た道のりを戻り始めた。


羊猪のゴジバはでかい。元の世界でも猪は成体で80~150キロはあると言われている。しかるに、ゴジバは200キロ以上はあるだろう。内臓を落としても、確実に100キロ以上ある。0.1トンだ。

因みにこういった情報は鑑定が教えてくれた。鑑定さまさま、だ。


そんな巨大な獲物を、コボルト達は10人がかりでえっせほいせと担いでいる。


残りのコボルトは緊張感たっぷりの表情で周囲を警戒している。


今、獣に襲われたら、せっかくのゴジバを横取りされかねないのだ。

それはもう、極限まで耳と鼻をはたらかせて警戒している。


そういえば、と僕は自分のスキルのことを今更ながらに思い出した。


アイテムボックス。


もしかしたら…ゴジバを収納できるんじゃないだろうか?


物は試しと、僕はゴジバを担いでいる連中に近づいた。


「御使い様?」


みんなが足を止めて、不思議そうに僕に注目する。


僕はゴジバの死体に手を添えた。


「収納」


呟くと、思ったとおりにゴジバは消え去った。代わりに空中に浮かんでいるフォルダーアイコンの名称が『ゴジバ(解体済み)×1』になる。


「え? え?」


何が起きたのか分かっていないオールやチッチが、僕とゴジバがあった空間を代わる代わる見ている。

嬉しそうにゴジバを担いでいた連中は、獲物がなくなってしまったせいで驚きながらも、シュンとして尻尾を垂らしてしまっている。


その様子が余りにも哀れで、僕は急いで説明をした。


「ゴジバは僕の中にある。みんなの所に戻ったら、元通りに出すから、安心しておくれ」


「魔法ですか?」


「似たようなもんだね」


それで納得してくれたようだ。

さすが、御使い様だ! とコボルト達は再び歩みを始めた。


ゴジバという重しが無くなったことで、スピードは速い。

僕という足手まといがいなければ、それこそ駆け足をしていたに違いない。


遠目に集落が見えてくる。


「ワオーン!」


と感極まったみたいにチッチが吠えた。


集落にのこっていたコボルト達がノソノソとこっちを振り向く。


早く帰ってしまったせいで、収穫がなかったと思われたのかも知れない。


「「オオーーン!」」


オールが、僕に付き添ってくれたコボルト達が歓喜に吠える。


その気持ちが伝わったのだろう。


集落のコボルト達も嬉し気に声を合わせて吠えた。


生きる活力に満ちた声だった。

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