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雪子・4、 聡・4 

【雪子・4】


 私の知らないところで、聡君が、こんなに私のことを心配してくれていたなんて、本当に、うれしかった。

 家を出てから、しばらくの間、本当に不安だらけだった。両親もすでにいなくなり、兄夫婦も自分達のことで、精一杯だった。誰にも助けてもらえないと思ったら、寂しくて、哀しくて、死んでしまいたいくらいだった。でも、子供達のことを思えば、そんなことは絶対出来なかった。

 

 仕事が見つかって、職場の人や、友達が、何かと親身になってくれて、そのお陰で、今日までやって来られた。私は、ほんとにみんなに助けてもらったと思っている。そのことは、いつも感謝していたけど、ここにも、私の知らないところでも、私に手を差し伸べようとしてくれていた人がいた。そう思うと、なんだか、胸が熱くなった。


 〈もし、聡君と結婚していたら、きっと幸せになれたろうな。こんな純粋な人と結婚した奥さんは、すごく幸せだろうなぁ〉

そんなこと、ちょっとだけ思った。


「途中だけど、ごめんなさい。」そう言って、カラオケボックスを出たのは、十時前だった。二次会はまだ盛り上がっていた。

しずえとは、「出来るだけ早く、また会おうね。」と約束した。


 聡君が、入り口まで見送りに出てきた。

 周りを見渡して、

 「友達は、どこにいるの?夜遅いから、友達が来るまで、待ってようか?」と言った。

聡くんは、友達のことを、たぶん、〈女友達〉だと思っている。


 「ありがとう。でも、大丈夫。駅前の方で待ち合わせだから。心配しないでいいよ。」

 「そうか、じゃあ・・・なあ、ゆきっぺ、何か困ったことあったら、連絡しろよ。

  俺、ゆきっぺのためなら、何でもする気でいるから。」

聡くんが真っ赤になりながら、そう言ってくれた。気持ちはすごくうれしかったけど、

〈奥さんが聞いたら、怒るよなぁ〉って思った。


 「じゃあ、行くね。聡君、ほんとに、いろいろ、ありがとう。元気でね。」


 駅へ向かいながら、一度振り返ると、聡君はまだ見送ってくれていた。小さく手を振って、あとは振り返らずに歩いた。



【聡・4】


 ゆきっぺは、一度振り返って、手を振った。そして、そのまま、真っ直ぐ駅の方に向かって、歩いて行った。

 ゆきっぺの元気そうな姿を見て、本当に安心した。実は、もっと落ち込んで、疲れているんじゃないかと、心配していたけど、そんなことは全くなかった。


 〈ゆきっぺ、彼と一緒に来たんだろ?今度は幸せになれよ。その役目が、僕でなくて残念だけど。〉


 僕には、ゆきっぺの感謝の言葉だけが、心地良く残った。




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