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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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北方大神殿……④

 オレ達は会談が終わると長居は無用とばかりに、そそくさと退出しようとしたけど、ルータミナに呼び止められる。 


「お急ぎな身なのはわかっておりますが、何卒なにとぞお時間をいただけないでしょうか? 実は……」


 ルータミナが呼び止めた理由を聞くと、アエルがオレに会いたがっているのだそうだ。神殿側としては賓客であるアエルのご機嫌をとれるなら、どんな手札も切りたいところなのだろう。

 確かに、満足にお別れの挨拶もできずに別れてしまったので、オレとしてはもう一度会っておきたいところだったけれど、クレイが反対の意を示した。


「申し訳ありません、神殿長。アエル様にお会いしたいのやまやまなのですが、神殿で思いのほか時間を取られてしまいました。次の予定がありますので、失礼をお許し願いたいのです。なに、アリスリーゼにはしばらく滞在します。アエル様に再びお会いする機会は、いくらでもありますよ」


 やんわりと、けれどきっぱりとクレイが断りの言葉を告げたので、ルータミナは残念そうにするだけで、それ以上は無理強いしてこなかった。


「ルータミナ。ホントにまたすぐ来るから、アエルには心配しないで待っていてと伝えてくれる?」


 オレが再訪を確約するとルータミナの顔が綻ぶ。


「必ずですよ。お待ちしているのは、アエル様だけではありませんので……」


「ああ、わかってる。約束するよ、ルータミナ」


 ずいぶん、年上の女性ひとのはずだけど、何だか可愛く感じた。




 ルータミナと別れ、神殿の出口に向う廊下でオレは小さな声でクレイに聞いた。


「なあ、クレイ。どうして、そんなに急いでるんだ? 別にアエルに会ったって、そう時間もとられないだろうに」


「時間は問題じゃない」


 クレイはオレの方を向かずに渋面で答える。


「このまま神殿(ここ)にいると、アエル達と同様になし崩し的に取り込まれる恐れがあるからだ」


「え、そうなの?」


「ルータミナはともかく、五正会の連中は少なくともオレ達の有効活用を考えている筈さ」


「クレイの言う通りだと思いますね。それにレイモンド統治官の影響力も意外に大きいようです。神殿を彼への対抗策とする考えは難しいと言えるでしょう」


 すぐにヒューもクレイの意見に賛同する。


「そういうことだ。敢えて選択肢を狭めるような真似をする必要はないだろう?」


「まあ、そうかもね」


 アエルに会えなかったのは少し残念だったけど、二人が言うことも、もっともだったので今回は諦めることにする。


 そして、オレ達が神殿から外へ出ると、嬉しいことに会いたかった人物がそこで待っていた。




「ソフィア!」


「リデル様」


 神殿の外で出迎えてくれたのは、先行してアリスリーゼに入っていたソフィアだった。


 オレは嬉しさのあまり駆け出してソフィアに抱きついた。ソフィアもしっかりと受け止めてくれて、互いにひしっと抱き合う。


 うん、やっぱりソフィアって柔らかくて良い匂いがする。


 思わず抱きついてしまったけど、男の時だったら犯罪だけど、女の子同士なら問題ないよね。

 現にクレイやヒューはおろか、通りすがりの人々も微笑ましそうにオレ達を見ているから、きっと大丈夫だと思う。


「ごめんね、遅くなって。ずいぶん、待ったでしょ?」


「いえ、リデル様のことですから、きっと何か理由がおありなんだと思っていました。ただ、危ないことに関わってはいないか、少し心配はしてましたが……」


 ソフィアの『リデル様のすることに間違いない』的な発想ってどこに根拠があるのだろう?

 あまりに疑っていないので、時々疑問に思うことがある。

 オレ自身が自分に信用がおけないって感じてるのに……。


「ホントごめん。オレの我がままで寄り道してしまったんだ。クレイとヒューは悪くないんで、怒らないでやってくれる?」


「まあ、怒るだなんて。リデル様のためなら、何年でもお待ちしますので、ご安心ください」


 何年……って、ソフィア。忠誠心じゃなくて、愛がだんだん重くなってきてないか?


「そ、それより、どうしてここに?」


「はい、リデル様の到着がすぐにわかるようにアリスリーゼの入市門と大神殿、市庁舎に人を張り付けておりました。大神殿に向ったとの一報を聞き、取る物もとりあえずやってきた次第です」


「そうなんだ。迎えに来てくれて、ありがとね。助かったよ」


 ん、待てよ。


 オレ達が神殿に入ったことを耳にして出口で待っていたのはわかるけど、それじゃいつ出て来るかはわからないんじゃないのか?

 たまたま、折り合いがつかなくて、すぐに退出したけど、もし長逗留になったとしたら……。


 まさか、出て来るまでずっとここで待ってたりしないよね。

 にこにこと優しく微笑むソフィアの笑顔の向こうにノルティの黒い影が見えたのは秘密だ。


「クレイ様、宿泊先をご用意していますが、ご案内しますか? それともすぐに市庁舎へ出向きますか?」


「いや、まずは旅の疲れを落とそう。レイモンドと対面するのは、明日以降にしようと思ってる」


「畏まりました。それでは宿までご案内いたしますので、どうぞこちらへ」


 オレ達は神殿の厩舎に預けていた馬を受け取ると、ソフィアの案内で宿屋へと向った。


とりあえず、次回(水曜日)の更新はお休みします。

本当に申し訳ありません。

次回以降も流動的です。

4月から身の回りで、いろいろ変化がありまして、長期でお休みするかもしれません。

楽しみにしてる方には(いなかったら、どうしよう(>_<))、ご迷惑おかけしますが、ご理解願います。

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