第四楽章~雲のコラージュ~
音楽祭、最終日。
王立音楽ホールでは、メインステージが開催される。
初日のパレード、二日目のアンサンブルが好評だったこともあり、夏樹たちの演奏は大トリを務めることとなった。
「はい、ここまでにしましょう」
控室では、最後の調整が行われていた。
ミラーがみんなを見渡し、優しく微笑む。
「皆さん、悔いのないように。しっかりと思いをぶつけてください」
「はい!」
「あー、緊張します!」
アイシャが大きく息を吐いた。
だが、すぐに笑顔になる。
「でも、ワクワクしますね」
「そうだな」
夏樹は短く答えた。
満員の観客席。
ステージへ入場すると、割れんばかりの拍手が一行を迎えた。
全員がそろい、観客へ一礼する。
そして、着席。
ホールが静けさに包まれた。
ミラーが指揮棒を上げる。
ゆっくりと視線を巡らせ――合図を出した。
厚い雲を思わせるハーモニーが響く。
そこへ、フルートの風が吹き、雲を動かした。
夏樹は一息つき、あの日の空の続きを探すように唄う。
一度晴れた雲は、その思いに答えるように、再び空を覆った。
雲間から、若菜のトランペットが光を射した。
受け取った思いを、遠く――さらに遠くへ運んでいく。
やがて、空全体を重厚なハーモニーが包み込んだ。
少しの静寂を挟み、柔らかなアンサンブルが始まる。
移り変わる空は穏やかに。
そして時には、これから訪れる激しさを予感させるように。
その姿を変え続けていた。
幾度か場面が移り変わったあと、ライムが嵐の前の静けさを、情感豊かに紡ぎ出す。
吹き終えると、フルートのパートリーダーと視線を交わす。
向けられた温かな眼差しが、心地よかった。
曲は中盤へ差しかかる。
空が曇り始めるように、音は少しずつ厚みを増していった。
そしてついに、金管のユニゾンが激しくその到来を告げる。
木管楽器が雨と風を呼び、小春とトールのホルンが、雷の一撃を加えた。
低く、深く、重く鳴り響く低音。
鋭く、強く、激しく空を切り裂く金管。
木管の風と雨が混ざり合い――
やがて。
空いっぱいに広がったユニゾンが、
視界そのものを押し広げるように響いた。
風が吹く。
そのあとに、少しくすんだハーモニーが重なった。
そして、その余韻さえも――
空へと吸い込まれていった。




