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バグスキルで成り上がる追放勇者  作者: 菊之花将軍


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3話「新たな装い」

お待たせしました!



 俺とフィアは荷物運搬の依頼に記された村に着いた。


 その村は作物の売買を主に生業としているらしく、村だけでなく村の外にまで畑が広がっていた。



「凄いな~」


「この規模の畑を村の人だけで管理してるだなんて驚きです!」



 確かエデアって言う人から指定の作物を受け取ればいいんだったか。


 まずはそのエデアって人を探そう。



「手分けしてエデアさんを探すか。これだけ広いと1人で探すには骨が折れそうだ」


「そうですね!ひとまず、見つけたら作物を持って村の中心で合流しましょう!」


「んじゃそれで。この際競争しようぜ。先に見つけた方が何でも言うこと聞いてもらえるってのはどうだ?」


「いいんですか~?私鼻が利くので先に見つけちゃいますよ?」


「俺の目利きには勝てないさ」


「ではその勝負受けて立ちましょう!」



 かくしてエデア探し競争が始まった。


 フィアはその俊敏な身体能力を活かして颯爽といなくなってしまった。



「挑む相手間違えたかも…」



 俺も負けてはいられないと気を取り直し、村の中へと駆けこんだ。


 結果。



「私の勝ち、です!」



 足下には作物の入った大きめの箱。


 その前で得意げに両手を腰に当てて勝ち誇るフィアに俺は絶望した。



「くっ…完敗だ!」



 勝ち目こそなかった気もするけど、村中駆けずり回ってようやく見つけた頃にはとっくにお連れの人が持っていきましたよって負けを宣告された時は口から魂が抜けていくかと思ったよ。


 しかも驚くことにその作物が入った箱はとても1人では持てそうになく、力でも劣っていることを突きつけられてしまった。


 ゴブリン俺じゃなくても倒せたんじゃ…?って言ってしまうのは野暮だろう。



「後はこれをレンドリカ城下町に運ぶだけとして…負けたのは認めるさ。それで、聞いてもらいたいお願いとやらは何だ?」


「えへへ、何でもいいんですよね…?」


「男に二言はない!」


「それじゃあ…」



 「えいっ!」と可愛らしい掛け声と共に俺の胸にフィアが飛び込んできた。



「うぇっ!?ふ、フィア!?」


「あったかくていい匂い…人のぬくもりぃ…うへへぇ…!」


「あ、あのぉ!人が見てるんですけど!?」



 通りすがりの村人達の微笑ましそうなこと。


 公然の前で女の子に抱き着かれるなんて、夢のようで羞恥プレイでしかない。


 ふぇぇ。恥ずかしいよぅ。


 しかし、みすぼらしい格好とは裏腹に女の子特有の香りが心地良い。


 女の子はええなあ。異世界も悪くないなあ。



「ハッ!?」



 これじゃまるで俺が変態みたいじゃないか。


 フィアを抱き締めようとワキワキしていた手を引っ込め、慌てて距離を取る。



「い、いくら人肌に飢えてるからって言っても俺達は昨日今日の仲だぞ!あまり軽率に誤解されるような真似はやめろ!?」


「何でもって言ったじゃないですか!」


「言ったけどさ!言ったけど流石にやばいって!」



 男の尊厳が誇りを主張してしまう。


 あの押し当てられた柔らかいものにはそれだけの破壊力があった。危険過ぎる。



「ほら、依頼の物も手に入ったことだし早めに街に戻ろう!」



 半ば無理矢理流れを変えようとする俺を不服そうな目で見ながら頬を膨らませるフィアは渋々頷いてくれた。


 箱を持ち上げてみるが中々の重たさで前が見えないのも相まって困っていたところ、フィアが軽々と俺から奪い取ったため任せることにした。


 筋力値壊れてるんじゃない?


 街までの下りはまあ割愛ってことで。特に何もなく雑談しながら街へ戻って来た。



「本当にありがとうございます!先日腰を痛めちゃって取りに行こうにも行けなくて困っていたんです!」


「力になれたなら光栄です。お大事に」



 作物を依頼主に届け、依頼書にサインを貰うと今度は酒場に向かう。


 討伐系の依頼は討伐対象の証になる物を渡すのが基本らしい。ちゃっかりとゴブリンの耳を回収してくれていたフィアに感謝しつつも、外からでも伝わる喧騒の止まない酒場へと足を踏み入れた。


 エルさんと目が合うと向こうから手を振ってくれた。



「こんにちは。依頼終わったので報告に来ました」


「無事のようで良かったです。日が暮れてもお帰りになられなかったので心配してました」


「疲れちゃって森で一休みしてました。えっと、これで依頼達成ですかね?」



 話しながらテーブルに薬草のカゴとゴブリンの耳と依頼主のサインの入った依頼書を置くと、エルさんは手早く確認し、依頼達成の刻印を押してくれた。



「こちらが報酬です」



 小さな巾着が膨れるほどの報酬がテーブルに置かれる。


 それを手に取って中身を確認すると、この世界の通貨であろう金貨や銀貨が入っていた。



「簡単な依頼だったのにこんなに良いんですか?」


「簡単な依頼だったとしても依頼主にとっては大事な依頼です。ましてや外での依頼は危険が伴うので、レンドリカ協会の計らいもあり報酬額も高めに出る仕組みとなっています」


「理にはかなってますね。何はともあれ助かります」


「この調子でどんどん依頼をこなしていってください。それがこのレンドリカに住む人々の”助け”になるので。勿論、危険な任務にはより一層慎重に挑むよう口うるさく言っておきます。あなたがどこから来たにせよ、レンドリカに身を置く1人の人間。その命が損なわれるのはレンドリカ協会としても、私としても悲しいので」



 思わず胸が熱くなった。これが人助けに対する一番の報酬と言うわけだ。


 無能だからと追放された身としてはエルさんの言葉はとてもありがたい。



「その言葉、ありがたく受け取っておきます」


「いえ。充実した生活を送れるよう、わたくし共も精一杯援助させていただきますので、ここレンドリカでの生活を健やかにお過ごしください」



 最初から最後までポーカーフェイスと言うか、表情に変化のない人だったけど悪い人ではなさそうだ。


 俺はエルさんと別れると一目散に酒場を出る。扉のすぐ横の壁でもたれかかって待っていたフィアが俺に気付いた。



「ごめんなさい、1人で行かせてしまって…」


「いいって。あんまり騒がしいの得意じゃないんだろ?」


「はい…。獣人は耳が良すぎるのであまり人が多いと色んな声が頭に入って酔っちゃうんです…」


「獣人も大変だな。無理せずこれからも外で待ってていいからな」


「お気遣いありがとうございます!」



 さて、これからどうしようか。まずは宿を探して…。



「…取り敢えず、服を買いに行くか?」



 不意にフィアの装いが目に入り、そう言えば服を買おうと考えていたんだと思い出す。


 俺の言葉にフィアは目を輝かせて首を激しく縦に振った。



「決まったな。それじゃ人伝いに服屋を探してみるか」



 道すがら人に尋ね、それほど高くもなくそこそこ長く使える服を買える店を探すこと数十分。衣服屋トネリエと書かれた看板のある建物の前に辿り着いた。



「中々良さそうな店だな」


「早く入りましょう!」


「そう急かすなよ。別に逃げやしないって」



 フィアに腕を引っ張られて入店する。店内には様々な種別の衣装が揃っていて、そのどれもがオススメされるだけある意匠の施されたものばかりだ。



「いらっしゃいませ!服をお探しでしょうか?」


「そうなんです。俺とこの子に合いそうな服を探してて。出来るだけ安く済むと助かります」


「まあ!これは腕がなりますね!ではまずはこちらの可愛らしい獣人さんからコーディネートさせていただきましょうか!」


「頼みます」



 両肩を掴まれ、そのまま拉致されたフィアは店の奥の試着室に詰め込まれ凄まじい熱量でお着換え人形さんにされてしまった。


 俺は苦笑しつつ、フィアの服が決まるまでの間に店内を見て回ることにした。


 前評判でも聞いていた軽装の防具まで売られているだけでなく、どこか元の世界を彷彿とさせるデザインの服まで見受けられる。


 値札に2000ドルカと記されていて、そこで初めて俺はこの世界の通貨の名を知った。


 金貨や銀貨1枚1枚の価値がどれだけのものなのか分からないから高いのか安いのか判断付かないな。



「お待たせしました!」



 店員の声で振り返ると、そこには新たな装いに身を包んだフィアが少し恥ずかしそうに立っていた。


 腰部分から背中にかけて大胆に開いた黒いタイツのようなインナーの上から羽織られた白基調のジャケット風の上着。同じく白の短パンに絶対領域を引き立てるニーソ。そして動きやすそうなブーツ。


 俺は無言で店員にサムズアップを送った。



「ど、どうですかね…?」


「最高だ。店員さん、良い仕事です」


「このトネリ、伊達にレンドリカ一の衣服屋を名乗っていません!さあお次はお兄さんですよ!」


「えっちょっと待ってまだ心の準備が」



 問答無用で試着室送りにされた。


 そこから次から次へと着替えさせられること十数分。ついに俺のコーディネートが終わった。



「これは…中々動きやすいな」


「素敵です、ユキヒロさん!」



 まるでお揃いだと言わんばかりの黒インナー。その上から胸当てと白いコート。機動性を重視された造りの黒いズボンに今まで履いた中で一番上等だと確信出来る黒の靴。


 着替えてる最中に教えてもらった話によると、過去に召喚された勇者からの知見で俺達がいた世界の衣服の特徴を代々取り入れているらしく、店内を見て回っていた時に感じた馴染みのある感じはそれが原因だった。



魔縫具(まほうぐ)による強化である程度の攻撃なら傷付く心配はないので安心してください!」


「そんなのもあるんですね」


「先代賢者様の協力のお陰で完成した道具らしいです!これで重くて動きにくい鎧を着る必要がなくなってオシャレと丈夫さを両立出来ているんです!」


「勇者様様ってわけですね」


「です!あ、お会計の方はおふたりの今着ている物と着替え分も含めてセット価格で4000ドルカです!」


「あんまりドルカの基準が分かってないんですけど、これでいけますか?」



 巾着袋から金貨を4枚取り出して渡すと、トネリさんは目をギョッとさせて返してきた。



「これじゃ40000ドルカですよ!この銀貨4枚で4000ドルカです!」


「では銅貨は1枚で100ドルカってことですか?」


「そうですよ!お兄さん、もしかしてとんでもない田舎から来られました?」


「まあ、そんなとこです」



 異世界なんて世界を跨げば田舎みたいなもんだろう。


 俺は少し遠い目をしつつ適当に流した。



「お買い上げありがとうございました!またのお越しを~!」



 トネリさんが手を振って俺達を見送る。


 服も買ったことだし、宿でも探して一度休憩するか?



「それにしてもお腹空いたな」


「そうですね。私、久し振りにシチューが食べたいです!」


「じゃあ宿借りて荷物置いたらご飯だな」


「やったー!」



 出来ればシャワーを浴びれたら最高だなんて考えながら、俺は前を跳ねるように歩くフィアの後を追う。


 明日はまた依頼を探しつつ《瞬間転移》を完全に扱えるように練習しよう。ものに出来たらきっとこの先楽になるはずだ。


 僅かな希望に縋ってでも俺は生きなければいけない。またあの世界に帰る為に。


 その意思表明に応えてか、ずっと止むことのない耳鳴りがひと際強く鳴り響く。


 思わず頭を抑えて、ふらついた拍子に壁に寄り掛かる。少しして目を開けると、いつの間にかフィアが心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。



「大丈夫ですか…?どこか体調が悪かったり…」


「いや、大丈夫だよ。もう収まってきたから…心配掛けてごめん」


「それならいいんですけど…もし辛かったら遠慮せず休んでくださいね?」


「ありがとう、フィア」



 フィアの優しさが胸に染みる。なんていい子なんだ。


 俺は耳鳴りが多少落ち着いたのを確認すると、気を取り直して歩き出す。


 フィアも隣に小走りで並ぶと、歩幅を合わせて歩く。こうやって気を使えるのがフィアの良いところだ。


 まだ付き合いこそ短いが、この昨日今日の旅路でフィアの優しさに沢山触れた。自分だって辛い過去を背負っていると言うのに、他人にどこまでも優しくなれる強い子だ。


 俺もフィアに何かを返せたらいいな。


 隣のフィアに視線をやると、偶然目が合い、彼女は微笑んだ。

海老とブロッコリーの組み合わせに勝るものを教えて。

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