第10章 雪音ちゃんと村娘達 112 〜 冒険者達、魔剣の黒い炎を発動させて亡者と戦ってみる!②〜
「いきなり我輩を強制召喚するとは、ぬぉおおおおお!?」
夕食のデザートに出る爆乳ツインテール吸血鬼ラスィヴィアの分のアイスクリームを貰うことと引き換えになんでも言うことを聞くと約束してしまった青いお目目をしたキジトラ柄の猫ちゃんザルガーニ ( 元はライオンと黒山羊の双頭を持ったキマイラであったが、ただ今、お仕置き中のため雪音ちゃんによって猫ちゃんの姿に変えられている! ) は、いきなり強制召喚されたと思ったら骸 骨空魚が自分の顔目掛けて飛んで来たので絶叫しながら鋭利な爪が生えた猫ちゃんパンチで骸 骨空魚の頭を地面に叩きつけて粉砕した!
もちろん、元キマイラのザルガーニにとって骸 骨空魚など取るに足りない存在ではあったが、突然目の前に現れたら慌てるのも無理ないことであった!
「はぁ、はぁ、ラ、ラスィヴィアぁあああああ!!」
「こちらですわぁ〜ん」
猫ちゃんザルガーニはラスィヴィアの声が聞こえた方に顔を向けると、なんとラスィヴィアが自分に手の平を向けラーヴァ・ボールを撃ち出して来た! 目をクワッと見開いて思わず叫んでしまう猫ちゃんザルガーニ!
「き、貴様ぁあああ、我輩を亡き者にしようとぉおおお!?」
「ザルガーニ、余所見してると危ないですわよ?」
ドガッ!
ラスィヴィアの放ったラーヴァ・ボールは深海魚ホウライエソの口に生えている牙のような無数の歯で猫ちゃんザルガーニのお尻に嚙みつこうとしていた骸 骨空魚の身体を吹っ飛ばした!
「おーーーーほっほっほっほ。1つ貸しですわね、ザルガーニ? ほら、また次のが飛んで来ましたわ。後片付け、よろしくなのですわぁ〜ん♪」
「な〜にが『1つ貸しですわね?』だ!! いきなりこのような所に我輩を召喚しおってぇえええええ!!!」
猫ちゃんザルガーニは頭に2本の角を生やして電撃を充填! 次々と自分に向かって襲い掛かって来る骸 骨空魚目掛けて極大の電撃を飛ばし撃墜していった!
「ザルガーニ、後ろで魔剣を振り回している人間を骸 骨空魚の群れから守りきるのが今回の命令なのですわぁ〜ん」
「ふん! コイツらを皆殺しにすれば良いのだな! そのようなこと我輩にとって造作もないことよ!!」
猫ちゃんザルガーニは明日のラスィヴィアの分のアイスクリームを自分の物にするため、骸 骨空魚の群れにお得意の電撃を放って駆逐していった! その攻撃にラスィヴィアへの怒りが込められているのは言うまでもないことだろう!
「ラスィヴィアさん、今のは流石に猫ちゃんが可哀想じゃないですかー?」
「イヤがらせ込みですので問題ないのですわぁ〜ん♪」
「問題ありありじゃないですかー。ケンカはダメなのですよー? それに私はラスィヴィアさんの活躍する所が見たかったんですけどー」
「うっ!? で、ですが、人間の前で ( 吸血鬼の ) 羽を生やして空を飛びながら骸 骨空魚を倒していくのはよろしくないかと思い」
ラスィヴィアはモジモジしながらラピに言い訳を始めた!
「あー、確かにそうかもしれませんねー。でも、猫ちゃんを召喚しちゃうのも、ちょっと微妙だったと思いますよー?」
「おいおい、あの胸のでけー姉ちゃん、今、転移魔石使ったよな!? 1ついくらすると思ってんだ!?」
「そんなことより召喚されたあの電撃を放つ猫だ! いや、角が生えてるし、やけにデカいから普通の猫じゃないな!? 新種の魔獣か!? しかも、人間の言葉を喋ったぞ!?」
「金髪のおチビちゃんだけじゃなくてラスィヴィアさんも凄腕テイマーだったとか、マジすっげー!!」
「貴様ぁああああ!! 我輩はラスィヴィアなんぞに飼い慣らされておらんからなぁああああ!? 報酬目当てで一時的に言うことを聞いてやってるだけだ!! 今度そのようなふざけたことを抜かしおったら、その首かっきってくれるわ!!!」
「ひっ、ひぃいいいい!? す、すんませんしたぁああああ!!!」
チャラ男は猫ちゃんザルガーニにギロリと睨まれ怒鳴られ漏らしそうになった!
◇◆◇
突如、ロリコンの目の前に青い光と共に少し身体の大きいキジトラ柄の猫が現れた!
「猫の手も借りたいとは思いましたけど、ホントに猫が出て来たってなんの役にも立つ訳ないじゃないですか!? もうやだー!!」
ロリコンは黒い炎を纏った魔剣ディーアを振り回して次々と空から襲い掛かって来る骸 骨空魚をバッタバッタと斬って光の塵へと変えて行きながら、仲間が誰も助けてくれないことが悲しくて泣いた!
けれど、目の前に転移して来たキジトラ柄の大きな猫が振り返り、後方にいるラスィヴィアさんと会話し出したことにロリコンは目を大きく見開き、頭から2本の角が生えたところを見て顎が外れ、その2本の角からバチバチと放たれた黄色い電撃が骸 骨空魚の骨を木っ端微塵にした様を見て嬉しくて泣いた!
「猫が出て来たってなんの役にも立つ訳ないとか言ってしまってごめんよぉおおお! 君は俺の命の恩人だよぉおおおお!! 幼女専門の孤児院を作ったら、君の銅像を作って毎日幼女達と一緒に君の銅像に感謝の祈りを捧げることを誓うことにするよぉおおおお!!!」
そんなことを叫びながらロリコンは一緒に戦ってくれる戦友がいることを心強く思い最後まで心折れずに戦うことができた!
そして、ラピとロリコンと猫ちゃんザルガーニ、時々気紛れのようにラーヴァ・ボールを放つラスィヴィアの活躍により骸 骨空魚の群れが一掃されると、ロリコンは猫ちゃんザルガーニに抱きつき泣きながら「ありがとう! ありがとう! 君のおかげで命拾いしたよぉおおお!!! うぉおおおおおん」と感謝の気持ちを伝えたのであった!
———— くっ、こやつ、妾のおかげで難事を切り抜けられたと言うのに妾への感謝の言葉がないとはどういうことなのじゃ!? なんと恩知らずな!! 妾にも感謝するのじゃ! いや、言葉ではなく妾の身体に魔力を注ぎ込むのじゃ! それで赦してやるのじゃ! おい、聞いておるのか!? えぇ〜い、妾の言葉が聞こえぬのか!? きぃ〜〜〜! 反応がないのじゃ! ————
魔剣ディーアの声はロリコンに届かなかった! 元々、魔剣ディーアの声は雪音ちゃんにしか届いていなかったのでロリコンに罪はなかったのであるが、魔剣ディーアは酷くご立腹であった!
◇◆◇
一方、ロリコンに抱きつかれて困惑している者がいた!
「おい、貴様ぁあ!? 感謝しているのは分かったから我輩の身体に鼻水を擦り付けるのは止めるのだぁ〜〜〜!!」
ロリコンを守るようにその前方で大空へと電撃を放って骸 骨空魚達を次々と撃破していった猫ちゃんザルガーニは、戦いが終わった後、守った人間から鼻水なすりつけ攻撃を受けていた! 振りほどいて逃げようと思っていたところに、ラピとラスィヴィアがやって来た!
「猫ちゃん、ご苦労様なのですよー♪ この後はどうしますかー? 私達と一緒について来ますかー? それともアヴァリードの町に帰りますかー?」
「ついて来ても私の出すアイスクリームは1つだけなのですわぁ〜ん」
「ふん、であるならば我輩はアヴァリードの町へ帰るのである! 猫大好き娘が我輩の毛繕いをしている途中であったからな!」
「そんなっ!? 猫様、もうお帰りになってしまわれるのですか!?」
猫ちゃんザルガーニの帰る宣言にロリコンは嘆いた!
「無論だ! 猫大好き娘の前からいきなり転移してしまったから我輩のことを探してるやもしれん!」
「あの人間の娘に随分とご執心ですわね、ザルガーニ?」
ラスィヴィアは手を口に当てながら「ぷぷぷ」と笑って猫ちゃんザルガーニをからかった!
「うるさいわ!! あの娘は我輩に自分の分のアイスクリームを寄越してくれるから無下にできないだけなのである!! それで、ここはどのあたりなのだ、ラピ様よ?」
「えーっとですねー、今地図を出しますからちょーっと待っててくださいねー?」
ラピはメニュー画面で地図を開いて現在地とアヴァリードの町の位置を確認した後、猫ちゃんザルガーニにアヴァリードの町がある方向を教えてあげた。 それを聞いた猫ちゃんザルガーニはラピに礼を言った後、これ以上鼻水を擦りつけられてたまるかと言わんばかりに身体を大きく揺らしてロリコンの抱擁を振りほどき、逃げるようにして走り去った!
「あ〜、猫様が帰ってしまわれました……」
ロリコンは遠ざかっていく猫ちゃんザルガーニに片手を伸ばしながら、とても残念そうに呟いた。
「猫ちゃーん、この辺は亡者がウヨウヨさまよっていますから気をつけて移動してくださいねー!」
「ラピ様、今日出くわした程度の亡者どもでしたら遭遇してもザルガーニが遅れを取ることはありませんから、心配する必要なんてありませんわぁ〜ん」
両手をメガホンのように口に近付けて猫ちゃんザルガーニに声を投げ掛けるラピに、ラスィヴィアは後ろから抱きつきながらブーたれた!
「ラスィヴィアさん、猫ちゃんと仲が悪いのは知っていますけどー、こんな夜中に強制召喚されて帰りは自力で走って帰らなければならない猫ちゃんに優しい言葉を掛けてあげるくらい良いじゃないですかー?」
「うっ、それは……。( ラピ様がザルガーニに優しい言葉を掛けるのが羨ましかっただけなのですわぁ〜ん )」しょんぼり。
「町に帰ったら猫ちゃんにちゃんとお礼を言わないとダメですからねー?」
「うぅ〜、分かりましたわぁ〜ん」
「はい、俺もお礼を言いに行きます! 魚をたくさん買ってお礼に行きます! ですから、雪音ちゃんがアヴァリードの町のどこに住んでいるのか俺に教えてください!」
ラピがラスィヴィアを窘めているとロリコンが会話に割り込んで来た! ロリコンは目をキラキラと光らせている!
「そこは猫ちゃんがどこに住んでいるのか教えてくださいと言うべきところではありませんかー?」
ラピのこめかみはピクピクと震えている!
「ザルガーニに会いたいのでしたら日中アヴァリードの町の入り口を出て橋を渡った先の野っ原を探せば簡単に見つかると思いますわぁ〜ん」
「ね、猫様の居場所を教えていただき、ありがとうございます! ( く〜〜、ひょっとしたら雪音ちゃんの住んでいる場所が聞けるかと思いましたが警戒されてしまいました。無念です…… )」
ロリコンはラスィヴィアによって猫ちゃんザルガーニの居場所を教えられてしまったため、それ以上何も言うことができなくなってしまい、肩をガックリと落とした!
そんなやりとりをした後、ラピ達は、熊さんの背中に乗って先にダンジョンに向かってしまった雪音ちゃん達の跡を追うのであった!




