第9章 ちびドラゴン 016 〜 雪音ちゃん、ドラゴンも下僕にする!②〜
「興味ないよ?」
「グルルルゥ。変わった奴だ」
「あなたこそ、それだけの力があれば世界の覇者になれるでしょ? どうしてダンジョンにこもってるの?」
「我には神に託された使命がある。それを放棄することは我にはできぬし、放棄しようとも思わん」
「なら、私が世界の覇者になろうと思ってあなたにお願いしても、世界の覇者になることなんてできないじゃない!」
「神に与えられた使命が何よりも優先されるのだから仕方あるまい。グルグルグルゥ」
「じゃあ、なんでわざわざ聞いたのよ!」
「世界が手に入ると思ったのに世界を手に入れることができないと分かってガッカリする者の顔が見たかっただけだ。別に良いではないか? 雪音は世界の覇者を望んでいないのだろう? グルグルグルゥ」
「はぁー、あなた、良い性格してるのね。じゃあ下僕の話も無効ってこと?」
「グルルゥ。安心しろ。神に与えられた使命に反しない限りは有効だ」
「そう。まっ、さっきも言った通り、たまにあなたの血を飲ませてくれれば、あなたは今まで通りの生活をしてくれて構わないわ」
「グルルゥ。欲のない吸血鬼よのう?」
「ところで気になったことがあるんだけど、災厄の魔物って人間と魔族が戦争になったらダンジョンから出て来て暴れ回って甚大な被害を出しちゃう存在って話を聞いたんだけど、それって無辜の民も殺しちゃう訳でしょ? それについて、あなたはどう思っているの?」
「我にとって人間や魔族は蟻のように潰しても、あとからあとから湧いて出て来る存在だ。特にどうと思うことはない。我がダンジョンから出て普通に歩くだけで無数の生き物が我の足で踏み潰されるのだ。いちいち気にすると思うか? グルルルルゥ」
あー、人間が自転車や車に乗って走ってると小さい虫とかを知らず知らずの内にプチッと潰しちゃうような感じなのかな?
「でも、普通に行動してうっかり潰しちゃうのと、死者が出るのが分かって暴れるのとじゃ話が違うじゃない?」
「グルルゥ。我が暴れるのは神に与えられた使命。文句は神に言うのだな。あー、待て。1つ思い出した。戦争で死んだ無辜の民は来世で優遇される。ゆえに気にせず暴れろと言われた覚えがある」
「えぇーーー」
あの神様、やることが大雑把過ぎるよぉ……。
「我ら災厄の魔物と呼ばれる神の審判の代行者の中には嬉々として暴れる者もいるがな。グルルルゥ」
「あなたはどうなの?」
「我か? 我は思いっきり身体を動かし、気の向くままに炎を吐くぐらいだな。人間も魔族もヤワな奴ばかりで歯ごたえがないからつまらん。グルルルルゥ」
ドラゴンさんが気の向くままに炎を吐くだけで被害甚大だよネー。まー、人間と魔族が争わなければ良いだけの話なんだけどさぁ……。
「災厄の魔物同士で戦ってみたいと思っているのだが、それは神によって禁じられている。つまらない世界だと思っていたが今日、面白い存在に会えた! 雪音、たまにで良いから我と戦ってくれ! お前となら戦っても神に文句は言われまい! グルグルグルゥ!」
「えっ!?」
私がびっくりしてスカーレットちゃんを抱き締める腕が緩むと、スカーレットちゃんはもぞもぞと動いて私の腕から逃げていった!
何言ってるの、このドラゴンさん。目をキラキラさせて怖いこと言うの止めて欲しい……。うぅ〜、どうしてこうなったのかなぁ……。
「プラーミャ、あなた、痛いのイヤなんでしょ? 私も痛いのイヤなんだけど?」
「グルッ? さっきの痛みを消す魔法を使えば良いではないか?」
「うーん、痛みがないと自分がどれぐらい酷い傷を負ったか分からなくなっちゃうんだよ? 翼にどんどん穴をあけられてもそれが分からなくて、空を飛ぶ速度が落ちて来るとか地面に落下し始めるまで翼の状態に気付けなくても良いの?」
「グルルルゥ。それは困る」
「それに私さっきプラーミャの手に水の魔法で穴をあけたでしょ? 私が水の魔法を使えば、あなたの身体を穴だらけにできることが分かっちゃったんだけど、それでもやるの?」
「あの魔法は反則だ! あれは禁止でお願いする! ガルルルルゥ!」
「イ・ヤ・よ! どうしてあなたより弱い私がハンデを負わないといけないのよ!? おかしいでしょ!?」
「キュー! キュッキュウ! キュッキュウ! キュッキュウ!」もー! つまんない、つまんない、つまんなーい!
スカーレットちゃんが私達の話に飽きちゃったのか癇癪起こしてプラーミャの頭に炎のブレスを浴びせている! ドラゴンの癇癪こわっ!!
「グルアッ!? こら、スカーレット、止めなさい!? 熱いでしょ!」
あー、炎を吐くドラゴンでも、同じドラゴンの炎は熱いって感じるんだ。ちょっとびっくりだね?
「そう言えば、あなた達ってどこに住んでるの?」
「ここから北西に行くと最難関の1つと呼ばれているダンジョン・メメントモリがある。そこの最下層だ。グルルルゥ」
「キューウ! キューウ!」つまんなーい! つまんなーい!
スカーレットちゃんはドラゴンさんの頭の上で人型モードになって寝っ転がって手足をジタバタさせている! とっても可愛い♪
「最下層から簡単に外に出られるものなの?」
「グルルゥ。最下層に地下湖があって、それが大海と繋がっているのだ。そこを通ればいつでも地上に出られる。あー、もう、スカーレット! ママの頭の上で暴れないでちょうだい!」
ブルン、ブルン、ブルンッ!
「キュッ!?」わあっ!?
ドラゴンさんが頭を大きく揺らしたのでスカーレットちゃんはドラゴンさんの頭から落っこちていった!
落っこちてくスカーレットちゃんの身体が光ってドラゴン形態に戻り、翼をパタパタさせて上がって来た。プラーミャの頭の前でスカーレットちゃんが抗議してる。やっぱり可愛い♪
「キュー! キュー!」ママ、ひどーい! なんでおっことすのー!
「ママは今、お話ししてるのです。もう少しお行儀よくなさい!」
こっちが素の話し方なのかな? なんで話し方変えてるんだろ? さっきまでのは対人間&魔族用の話し方なのかな? まっ、どうでも良いんだけどね?
「じゃあ、私、そろそろ帰るね? みんなも心配してると思うし。兵士達はあとで私が懲らしめておくから、あの町の人間を町で殺そうとするのはもう止めてね?」
「グルルルルゥ。回復魔法を使えるようにもしてもらったのだ。約定は守る。ただ、人間と魔族が戦争を始めた場合は神に与えられた使命が優先される。その時邪魔をするなら、今度は手加減なしで戦わせてもらうぞ? グルグルグルゥ!」
プラーミャ、すっごく嬉しそうに言わないでよ! 私は手加減なしのあなたと戦うのなんて真っ平ごめんだわ! ってゆーか、今度はって何よ!? あれで手加減してたの!?
「私が戦争が起きないようにするからプラーミャの出る幕はないわ!!」
「なっ!? 我は雪音とまた戦いたいのだ! そのような無体なことを言うでない! 力を持て余している我の気持ちが分からんのか! ガルルルルルゥ!」
「水の魔法で身体中に穴開けるわよ?」
「ぐぬぬぬぬ。なら、今度ダンジョン・メメントモリに来るのだ! 最難関のダンジョンと言われるだけあって、それなりの武器や防具が入った宝箱があるのだ! 雪音にとって悪い話ではあるまい! 最下層の我と戦い、我に参ったと言わせたら神具を与えようぞ!」
えぇー、私、戦闘狂じゃないし、無理して神具とか別にいらないんだけど……。
「キュ〜ウ? キュ〜ウ?」お姉ちゃん、あそびに来てくれないのー?
スカーレットちゃんが金色の目をうるうるさせながら聞いて来る。うぅ、スカーレットちゃんにこんな目で見つめられたら断れないよぉ!
「はぁ〜、分かったよ。気が向いたら遊びに行くよ」
「キュ〜♪ キュッキュウ♪」わーい♪ やくそくなのー♪
「な、なるべく早く来るのだぞ! 絶対だぞ! 来なかったら、また焼きに来るからな! スカーレット、お家に帰りますよ!」
「キュウ♪ キュッキュッキュウ〜♪」はーい♪ お姉ちゃん、またね〜♪
プラーミャとスカーレットは海の彼方へとあっという間に飛んでいってしまった。
「はぁー。とっても疲れたよぉ〜。私もみんなの所にかーえろっと」




