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第9章 ちびドラゴン 002 〜 雪音ちゃんとちびドラゴン 〜

 私は町に向かった兵士達が振り返ってロウのおっちゃん達を目撃することのないように魔法で光学迷彩のおっきな壁を展開しておいた。これで、こっち側から向こうはよく見えるけど、向こうからこっちは見えないはず。それから、おっちゃん達に声を掛ける。


「良いの? この子(ちびドラゴン)いるから、一緒に居たらバレちゃうよ?」

「私は雪音様の下僕(げぼく)ですからー、行き先がどこであろうと、どこまでもついて行くのですー♪」

「がぅがぅ♪」ぼくも、ぼくも〜♪

「なら、他の領地に行けば良い。そうすれば、アヴァリード領の兵士達に(おそ)われる心配はないからな」


「私はこの後、領主の屋敷に行って、他に捕まってる子がいないか確認しに行きたいんだけど?」

「なら、それは俺がやる。雪音は、そのちっこいドラゴンを連れてガッセルドの村に戻ってろ。あそこなら、そのドラゴンを連れて行っても問題ないだろう? お前はあの村の女神様なんだからな?」

「そうですよー、雪音ちゃん。ひとまず、ロウバストさんに任せて一旦引きましょうよー」


「なんで私が一旦引かないといけないのよ? 気持ちは嬉しいんだけど、行くって決めたから私は行くよ? とりあえず、山賊の親玉は(つぶ)しておかないと!」

「山賊の親玉って、おま……。ハァー」


 おっちゃんは顔に手を当てている。ラピは、あー、やっぱりって顔をしながら、


「えー、それは、ほら、怒った雪音ちゃんが領主の屋敷にいる人達をみーんな氷漬けにしちゃうような気がしますからー、とりあえず、ロウバストさんに情報を手に入れて来てもらってから行動を起こしても良いんじゃないかなーって」

「却下よ! 私は今すぐ町へ行きたいの! 荷竜車も早く見たいし!」

「だが、そのちっこいドラゴンを連れて行ったら目立つだろうが? さっきの変装が無意味なものになるぞ?」


「じゃあ、これならバレないでしょ? 透明化(インヴィジブル)!」


 そう言って私は、ちびドラゴンを透明化した。


 ちびドラゴンと(たわむ)れていたクゥーがびっくりしている。自分が透明になってるなんて知らないちびドラゴンは、先程と変わらずクゥーの上をくるくる回ってキューキュー鳴いていた。クゥーは、ちびドラゴンが見えないのに鳴き声だけ聞こえるので困惑し、私の側にやって来て「クゥーン、クゥーン」と元気をなくした声で鳴き出した。私が指をパチンと鳴らしてちびドラゴンの透明化を解除したので、ちびドラゴンの姿が再びみんなの目に映るようになった。


 ってゆーか、クゥー。エコーロケーションとサーマルヴィジョンを合わせた魔法使えば、ちびドラゴンがどこにいるか分かったのに。教えた魔法の存在忘れてるよね?


 クゥーは、ちびドラゴンの姿が見えたので、その真下へ行き「がぅがぅ♪」と吠えている。あっ、クゥーが氷を足場にして空へと駆け出した! ちびドラゴンとクゥーがお空で楽しそうに(たわむ)れている。なんか可愛いね♪


「なんか(なご)みますねー♪ ほのぼのした気持ちになるのですー」


 ちびドラゴンの透明化を見て口をあんぐりと開けていたおっちゃんが我を取り戻して私に尋ねる。


「おい、雪音! どうして、さっきその魔法を使ってドラゴンを助けに行かなかったんだ!? それを使っていれば、姿を見られることなく簡単に助けられただろう!?」

「そうですよ、雪音ちゃん!」


 おっちゃん達の言うことはもっともだ。私も他の人の立場だったら、そう思う。でも、


透明化(インヴィジブル)の魔法は戦闘中には使えないの。制約があってね」

「いや、使ってりゃー、戦闘せずに済んだじゃねえかってことなんだが?」


「他にも理由はあるわ! 私がアイツらをコテンパンにしたかったからよ! むりやり奴隷とかペットにするのは気に入らないの!!」


「はぁああ!?」

「雪音ちゃんは感情で動いちゃいますからねー」


 おっちゃんは(あき)れた声を出した後、ついラピとクゥーを見てしまう。


「ちょっと、おっちゃん、そこで、なんでラピとクゥーを見るのよ!? ラピは自分で勝手に下僕(げぼく)って言ってるけど、私はそんなこと頼んだ覚えはないよ! クゥーだって無理やりペットにしてないし!」


「雪音様、ひどいですー。私はあなた様の忠実な下僕(げぼく)なのですよー? うふふー♪」


 この子、絶対にわざとやって楽しんでるよね? はー。ラピの発言は放っておくとして、クゥーは、まあクールビューティーからしてみれば奪われた形になっちゃってるような気がするから、今度、強くなったクゥーを連れて顔を見せに行って安心させてあげないとダメかな〜?って考えてたら、ちびドラゴンが私の頭の上に乗っかって来た。


「こーらっ! お前はどうして私の頭の上に止まるのかな〜?」


 私は両手を頭の上に持っていき、ちびドラゴンを捕まえて、ちびの顔を私の顔の前に持ってくる。あっ、よく見たらこの子、首輪がついてるね。首輪の中央には赤くて丸い綺麗(きれい)な宝石が()まってる。


「キュ〜ウ? キュッ!」

「きゃっ!?」


 ちびドラゴンの身体がいきなり赤く光り出したので、私はびっくりして手を離したら、目の前に私より背が小さく鮮やかな赤い髪で綺麗(きれい)な金色の瞳の幼女がいた。うん、可愛い♪ じゃなくて、なんで(はだか)なの? 首にはさっきちびドラゴンがつけてた首輪が()められてるけど……。


「キュ〜? キュ♪」


 と言って、(はだか)の幼女が私に抱きついて来た! うはっ♪ じゃなくて! 私は赤い髪の(はだか)の幼女をひっぺがし、魔法で(はだか)の幼女に可愛らしい服を作ってあげる。それから、私はしゃがんで女の子と目の高さを合わせ質問をした。


「あなたはあの赤いちびドラゴンなんだよね? お名前はなんてゆーのかな?」

「スカーエット!」


「スカーエット?」


 女の子は首を横にぶんぶん振る。なんかクゥーっぽいね、この子。


「スカーレットー!」

「あぁ! スカーレットちゃんね! レがまだちゃんと言えなかったんだね」


「キュ!」

「スカーレットちゃんは、なんで捕まっちゃったの?」


「キュ〜? キュ♪」


 と言って私に抱きつくスカーレットちゃん。私は困ってラピとおっちゃんを見る。


「あらあら。雪音ちゃん、とっても可愛い子に(なつ)かれましたねー。うらやましいのですー。うふふー♪」

「ドラゴンの人化か……。すげえもの見ちまったぜ」


 クゥーは目を丸くし口をだらんと開けてびっくりしている。あっ、頭をぶるぶる振って、こっちに近づいて来た。


「がぅがぅ! がぅがぅ!」


 なになに? 僕も人化したい?


「えー、クゥーって男の子でしょ? 人化しちゃったらお風呂一緒に入れなくなるけど、それでも良いの?」

「がぅ!? く、くぅーん」


 と鳴いたクゥーはしょんぼりして、おっちゃんの方へとトボトボ歩いていった。


「えー、お風呂ぐらい一緒に入ってあげても良いじゃないですかー? 私はクゥーちゃんが人化した姿も見てみたいですよー。さぞ、可愛らしいお姿になるのではないかとー。えへ、えへへー♡」

「ラピ、そのだらしない顔やめて」


「でも、雪音ちゃんも興味ありますよねー? クゥーちゃんは可愛らしい男の子になると思いませんかー? それにあっちの方も可愛いかったりするんじゃないですかねー? うふっ♪」

「ななな、何を言ってるの!? そそ、そんなこと考えてないわよ!」


「えー、私達にない部分が気になっちゃったから、クゥーちゃんの人化を避けたのではないのですかー? お風呂に一緒に入ると見えちゃいますものねー? うふふふふ♪」

「ち、ちがうんもん! 人化したクゥーが興奮して飛びついて来て、あちこちぺろぺろされたら困っちゃうからだもん!!」


「やっぱり雪音ちゃんはエッチなことを考えていたんですねー♪ 雪音ちゃんはよくエッチなことはダメとか言っていますけどー、結構むっつりさんですよねー? でーもー、可愛い男の子にお胸の敏感(びんかん)な所とかー、お股のお豆さんとかをぺろぺろされちゃったりしたら恥ずかしさと嬉しさでー、きっと昇天しちゃいますよねー♪ あーん♡」

 

 ラピがそんなことを言いながら両手を頬に添えて身体をくねくねさせる姿を見た私はプチッとキレちゃいました!


「ラ〜ピ〜? 貴女(あなた)、氷漬けにされたいのかな〜? されたいんだよね〜?」


 私はパチンと指を鳴らし、ラピを足元から氷漬けにしてあげた。


「えっ? ま、待って下さいよー! って、もう発動しちゃってるじゃないですかー!? 雪音ちゃんがお風呂の話題を出したから、私はそれに乗っかっただけなのにーー!」


 ラピはあっという間に頭まで氷漬けになった。


 それを見たスカーレットちゃんがぴょんぴょんジャンプして喜んでたかと思ったら、スカーレットちゃんの身体がまたもや赤く光ってちびドラゴンの姿へと戻り、氷漬けになったラピの上空を旋回して「キュー♪ キュー♪」と楽しそうに鳴いていた。


 そんな様子を少し離れた所から見ていたクゥーとロウのおっちゃんが、(あき)れた顔でこちらを見ていたのは言うまでもないことだろう。


「で、町に入ったらどうするんだ? 領主の屋敷へ直行するのか?」

「そうしたいところなんだけど、でも、まず最初に山賊のゴスを衛兵に引き渡すよ。それで領主がどんな人か聞いてみるかな? あと、衛兵のゴスに対する対応の仕方で領主へのお仕置きのレベルを変えようかなって思ってるよ」


「お仕置きのレベルを変える? どういうことだ?」

「がぅ?」

「キュ〜ウ?」

「奴隷商人フィルスの話が出た時に衛兵が奴隷商人を(かば)うようなことを言い出したら、奴隷商人と領主って(つな)がってるような気がするんだよネー」


「どうしてそう思うんだ?」

「山賊のボスの記憶を魔法で読み取った時、山賊のボスは何度も何度も奴隷商人フィルスと取り引きしてたんだよネー。そんな奴隷商人がアヴァリードの町で商売を続けてるとしたら、それっておかしくない?」


「あー、つまり、領主が奴隷商人フィルスの行為を容認していると言いたいのか?」

「その可能性もあるんじゃないかなぁって。もちろん、奴隷商人フィルスが衛兵や領主にバレないように上手くやってる可能性や、領主とは関係なく衛兵と奴隷商人がグルなのかもしれないけどね」


「その判断はどうやって、ああ、記憶を魔法で読み取るのか」

「そういうこと。町に行けば全て分かるから、領主がドラゴン(さら)い以外の悪事に手を染めてたら、きっついお仕置きをしてあげないとね?」


「あー、ちなみに、どんなお仕置きが待っているんだ?」

「それは悪事の内容によるかなぁ?」


『うぅー、雪音ちゃーん、そろそろ出してくださいよー。ふぇーん』


 ラピがテレパシーの魔法で話しかけて来た。


『反省したのかな?』

『はいなのですー』


 私は指をパチンと鳴らしてラピの氷漬けを解除してあげた。


「うぅ、ひどい目にあったのですー」


 さて、町へ行くんだから、山賊のゴスを封印の本から出さないとね? 私は天上界の倉庫から封印の本を取り出し、本を開いて氷漬けになった山賊のゴスが載ってるページを開く。そして、


「山賊のゴスの封印解除!」


 そう唱えると氷漬けの山賊のゴスが封印の本から飛び出して地面に着地した。そして、山賊のゴスの氷漬けを解除し、魔法でゴスの手に(くさり)付きの手枷(てかせ)を作って、(くさり)の先をおっちゃんに渡した。おっちゃんが(くさり)を受け取りながら、


「雪音の魔法は本当にとんでもないな。人間を本に閉じ込めるとかありえないだろ?」


 と(あき)れた感じで言ってくる。流石(さすが)に私の魔法に慣れて来たみたいだね?


「ありえないことをするのが魔法なんだよ?」


 おっちゃんに微笑みながら私はそんなことを言っておいた。いや、だって魔法の存在自体が私にとってはありえない存在だったんだから、火の玉出したり雷落とせたりするんだから、人を本に閉じ込める魔法があっても不思議じゃないよね? 物語だと鏡とか水晶、ひょうたんとか電子ジャーに閉じ込める方法がある訳だし?


「雪音ちゃん、山賊のゴスが動かないですよー? ひょっとして、もうお亡くなりになってるんじゃ?」

「まだ意識の凍結を解除してないだけだよ。えぃ♪」


 私は指をパチンと鳴らして山賊のゴスの意識の凍結を解除した。


「こ、ここは!? 俺はさっき飯を食い終わって、それから……」

「ゴス」


「は、はいぃいい!!」


 私の呼び掛けに山賊のゴスがすぐさま直立して姿勢を正した!


「これから、アヴァリードの町へ行って、あなたを衛兵に引き渡すわ! 衛兵に聞かれたことは正直に話すのよ? あなた達山賊が今まで村から(さら)って来た女性達を奴隷商人フィルスに売り渡したこともきちんと伝えるのよ?」

「へ、へい! もちろんでございます! (しゃべ)髑髏(どくろ)なんかになりたくないんで!!!」


 山賊のゴスはガクガクぶるぶる(ふる)えている!


「おい、(しゃべ)髑髏(どくろ)って何だ?」

「さ、さあ、恐怖で頭がおかしくなっちゃったんじゃないかなぁ〜。ひゅーひゅー」


 私はおっちゃんの視線から顔を()らし口笛を吹いた。


「雪音ちゃん……」

「がぉー」

「それより、町に行くなら、ちびドラゴンにはさっきの人化の魔法を使ってもらった方が良いんじゃないか?」

「それもそうだね。スカーレットちゃーん、降りて来て〜!」

「キュ〜?」


 ちびドラゴンのスカーレットちゃんが降りて来て私の頭の上にちょこんと乗っかった。


「むぅー」

「そこがお気に入りみたいだな」

「とっても可愛いのですー♪」

「がぅがぅ! がぅがぅ!」ぼくも乗りたーい!


 私は頭の上のスカーレットちゃんを捕まえて下に降ろし、お願いをした。


「スカーレットちゃん、ドラゴンの姿で町に入ると、また人間が捕まえようとしてくるだろうから、私達についてくるなら、さっきみたいに人間の姿になってくれるかな?」

「キュ!」と鳴いてスカーレットちゃんがドラゴン形態から人間へとチェンジしてくれた!


「ありがとね♪」って言いながら、私はスカーレットちゃんの頭を()()でしてあげると「キュ〜♪」と嬉しそうに鳴いて私に抱きついて来る。あぁ〜、なんて可愛い子なんだろう♪ 顔がにやけちゃうよぉ〜 (*´∇`*) はぅ〜ん♪


「むむむ、可愛いんですけど、ミアちゃん級の強敵が現れてしまったのですー」

「がぅがぅ」

「おい、スカーレットがまた服を着てないから、魔法でなんとかしてくれ」


「あっ、そうだね。えぃ♪ これでオッケーだね? じゃあ、町へ向けて出発するよ〜!」

「キュー♪」

「がぅがぅ♪」

「はいなのですー♪」

「町が壊れないと良いんだが……」


「おっちゃん、なんか言った?」

「あー、壊すんなら領主の屋敷だけにしてくれよ?」


「それは……、善処するよ!」


 私はさっき展開した光学迷彩の壁を解除して、アヴァリードの町へと向かって歩き出した。


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