第5章 パジルーンという村での出来事 014 〜ラピは雪音ちゃんの眷属になりたい①〜
ラピが布教に満足した後、クゥーがタイミングよく目を覚ましたので、私達はみんなでラピの家に帰り、寝床に就いた。
ただ、クゥーだけは起きたばっかりだったので、1人寂しく部屋をうろうろしたり、私やラピの顔をぺろぺろしたり、前足で体をポンポン叩いたりしてたらしい。朝起きたら、クゥーが「くぅ〜ん、くぅ〜ん」と鳴きながらすり寄って甘えてきた。
私が 村長の罠に嵌められてクゥーを1人の状態にしてしまったという後ろめたさがあったから、罪滅ぼしに一生懸命もふもふしてあげた。そうしたらクゥーも上機嫌になってくれた。ごめんね、クゥー。次からは気をつけるからね!
そうそう、氷漬けになった人達は、村長と私を着替えさせて祭壇まで運んだ村の女達を除いて、首からお股とお尻の部分まではこっそり解除してあげた。
みんなとても喜んでたけど、そこから先は本当に反省しないと氷は溶けていかないので、性根の腐った奴は天国から地獄に落とされるような絶望を味わうことになるだろう。これで助かる! って思ったのにそれ以降、なかなか氷が溶けないことに気づいたら、アイツら一体どんな顔するのかな〜?
「ふっふっふー♪」
雪音ちゃんは甘くないのだよ? 殺せコールとか根に持ってるんだから!
「雪音ちゃん、すっごく悪だくみしているような顔をしているのですけどー」
あと、村長と私を運んだ村の女達は首まで凍ったままである。お股とお尻の部分だけは解除してあげたけどね。雪音ちゃんに感謝するといい。はっはっはー。そして反省するまで絶望するがいい!
「はーーっはっはっはっはーー!!」
「雪音ちゃん、いきなり笑い出すのやめて欲しいですー。あと、大天使様らしからぬ邪悪な笑みを浮かべるのもおやめくださいませー」
ちなみに、地面と足元の氷がくっついていないことに気づいた村人達が、お互いに協力し合って氷の彫像もどきの人達を彼ら彼女らの家に運んで行ったよ。ご苦労様なことだよね?
「はー、まともな村人がいっぱいいる村とか町に行きたいな〜」
「そうですねー。そんな村や町があったら行きたいですねー。一体どこにあるのですかねー」
「ラピ、いきなり心が挫けそうになること言わないで欲しい」
「冗談ですよー、雪音ちゃん。やっと、ご自分の世界から帰って来てくれましたねー。先程から反応してくれないので悲しかったのですー。とりあえずこの村からなら、ガッセルドの村を経由してアヴァリードの町を目指すのがよろしいかと」
「なんでアヴァリードが良いの?」
「ここから1番近い町だからですー。と言ってもガッセルドの村までが、まず少し遠いですねー。この村って割と辺境の地ですからー」
「なるほどね。雪狼達の住処が人間の住む町の近くにあるはずないもんね〜。ここには白い大蛇なんかもいたし。町がここから遠くても仕方ない話か。はー」
私の転生スタート地点って、恵まれてなさ過ぎだよー。しくしく。
「雪音ちゃん、雪音ちゃん。雪狼達の住処を知っているのですかー?」
「んとねー、クゥー、おいで〜!」
「がぅ♪」と言ってクゥーがやって来た。クゥーをもふりながらラピに言う。
「クゥーは実はわんちゃんではありません!」
「がぅ♪」そうだよって感じでクゥーが鳴く。
「えっと、話の流れからいくと、クゥーちゃんって雪狼さんなのですかー?」
「がぅ♪」
「そうだよ〜♪」
「だから、すっごい氷の魔法が使えたのですねー♪ あの時の魔法は本当にびっくりしたのですよー? クゥーちゃんは雪狼さんだったのですねー♪」
ラピもクゥーをもふるのに参加した。「くぅ〜ん♪ くぅ〜ん♪」とクゥーは2人に撫でられて、とても気持ち良さそうにしている。
「私がこの村に来る前に2つの廃村があってね、それよりも もっと前の場所でクゥーと出会ったんだよ。そこは湖の側の林の中で、体の大きい茶色い狼達にクゥーがいじめられててね」
「くぅーん」
よしよしとクゥーの頭をなでつつ、
「そこでクゥーを助けたことがきっかけで、クゥーと一緒に旅をすることになったんだ」
「廃村の1つは私の故郷ですねー。そうすると私の故郷から向こうに村があって、そこよりも向こうにある湖と言えば、ブラウラーゴナ湖ですかねー? あんな所に雪狼さん達がいたのですねー」
「ブラウラーゴナ湖かどうかは分からないけど、湖の側に住んでるんじゃないかな? 多分。あっ、でも他の人に言っちゃダメだからね!」
「がぅがぅ!」そうだよ、そうだよって感じでクゥーも鳴いている。
「もちろん言う訳ないじゃないですかー。私は雪音ちゃんの下僕なのですよー。雪音ちゃんが困るようなことはしないのでーす!」
「現在進行形で私はラピの下僕発言に悩んでおります」
「えー、様づけで呼んでないから良いじゃないですかー?」
「下僕もやめてね?」
「じゃあ、私を雪音ちゃんの眷属にしてください。じゃないと私、足手まといになっちゃいますー。ぷんぷん」
あれもダメこれもダメと却下されたラピが自分でぷんぷん言って怒ってます。どうしよう? でも、頬を膨らませて怒ってるラピはなんか可愛いね〜。つい頭をなでなでしちゃったよ。
「もー、雪音ちゃん!」
あっ、閃いた!
「わかった、わかった。ごめんって!」
「じゃあ、私も雪音ちゃんの眷属にしてもらえるのですね!」
「あっ、ごめん。それは違います!」
「ゆ・き・ね・ちゃーん?」
うっわ、ラピの顔が般若のようになっちゃったよーーー!? あわゎ。
「眷属にはしないけど、ラピが魔法を使えるようにはできるから、落ち着いて! ねっ? そんな怖い顔しないでよ。ラピは笑ってる顔が可愛いよ?」
「えっ、そんな、雪音様〜♪」
顔を赤く染め、いやんいやんするラピ。様づけされたけど怖いから、ここは我慢しておこう。




