第5章 パジルーンという村での出来事 013 〜おいたした人には罰を与えましょう!④〜
ラピが私に近づき小声で、
「雪音ちゃん、雪音ちゃん、天使の翼を出して欲しいですー」
「出してどうするの?」
「空に飛び上がって、己の罪を認め、悔い改めよー! みたいなことを言って、凍らされている人達の上を飛び回って欲しいですー。そのあと氷を解除してお空のかなたへ飛んでいって欲しいのですー。後は私がうまくやっておきますからー。あっ、クゥーちゃんは後で私が連れ帰るから大丈夫ですよー。それで雪音ちゃんはこっそり私の家に向かって隠れていてください」
私はため息をついて、
「ラピ、私を神様の使いに仕立てあげようって思ってないかな?」
「はいー♪ それが一番丸く収まる方法だと思いますー」
とラピはすっごい笑顔で私に微笑んでいる。策士がいる。ここに策士がいるよーー!
「わ、分かったよ。ラピに後のことはお任せするね? 私は怒りを爆発させて、ひとまずはスッキリしたから」
「はい、任されましたー♪」
とラピは にこにこしている。超いい笑顔である。この子、雪音教とか立ち上げたりしないよね? 大丈夫だよね?
そんなことを気にしつつ、私はラピに言われた通り、魔法で真っ白な天使の翼を背中に生やす! そして、翼を大きく羽ばたかせ上空へと舞い上がる! ちなみに、魔法で翼から光がキラキラとこぼれ落ちるエフェクトを発生させておいた。これで天使様の演出もバッチリのはず!
ガヤガヤ。翼が生えたわよ、あの娘! ガヤガヤ。あ、あれは天使、なのか!? なんと神々しい! ガヤガヤ。神じゃぁあ、我々は神様の怒りに触れてしまったのじゃあーー! この村はもう終わりじゃーーー! ガヤガヤ。
「聞くのだ、村人達よ! 生け贄を要求した そなたらの守り神は我が倒した! しかーし、そなたらの村のために死んでいった村想いの娘達の悲壮な想いを無駄にしたくなかったゆえ、我は白い大蛇を生かしておいたー。そして白い大蛇に今後、生け贄を要求することなく、この村を守るよう申し付けておいた!」
ガヤガヤ。ど、どう言うことだ? ガヤガヤ。つまり、守り神様は今まで通り村を守ってくれるってことでしょ? ガヤガヤ。私達は助かるの? ガヤガヤ。あぁ〜天使様〜! ありがたや〜ありがたや〜。ガヤガヤ。
もう生け贄として村の娘を差し出さなくて良くなるのね。う、うぅ〜。キーニャ、あなたは来年、舞を踊らなくて良くなったのよ。あー天使様どうもありが、ありがとうございます! ガヤガヤ。
凍ってる人間はどうなるんだ? さっき、あの天使は生け贄として大蛇に差し出すようなことを言っていたぞ! みんな騙されるな! ガヤガヤ。それは天使様の罰じゃ、諦めなせぇ。ガヤガヤ。
私達に黙って旅人を生け贄として差し出してたんでしょ? 自業自得だわ! そもそも、あの旅人って天使様だったんでしょ? 凍らされたのは天罰よ! ガヤガヤ。
ほぇ〜、ラピの作戦は効果覿面だね〜。さすが私の軍師さま。いや違うって! さてと、あとは、己の罪を認めよとか悔い改めよとか言ってから、凍るのを解除すれば良いんだよね。でも、殺せコールされたしなー。私が一般人だったら大蛇に丸のみされた時点で人生終了してたしー。簡単に解除するのは、なんか腹立つ……。うん、きーめたっと!
私は天使の翼からキラキラした光を鱗粉みたいにまき散らしながら村人の上空をまんべんなく飛んだ。そして氷の彫像へと変わりつつある村人達の頭上も飛んでいく。
天使の翼からこぼれ落ちた光の鱗粉を浴びた上半身の氷だけが溶けていく。
ちなみに村長は首から上の部分だけ氷を解除してあげた。
凍らされていた者達から、氷が少し溶けたことによる喜びの声が上がる。しかし、それとは対照的に別の所から悲鳴が上がる。
ガヤガヤ。な、なんでだ。なんで足元から急に凍っていくんだ!? ガヤガヤ。嘘ッ!? 私の足も凍り始めて…どうしてなの!? ガヤガヤ。天使様のお怒りじゃぁあ! ガヤガヤ。
「あぁ、今、足元が急に凍り出した者は、我や過去この村を訪問した旅人を生け贄として白い大蛇に差し出すことに加担した者であろうな。我の翼からこぼれ落ちる光はお前達の罪を見通す! 今回の対象は我と過去この村を訪問した旅人を謀った者に限定した。己の犯した罪を周りの村人に伝えるのだ。己の犯した罪を後悔し心の底から反省するのだ。さすれば、その氷は溶けてなくなるであろう! それが出来なければ、いつまでも氷に閉ざされたままとなるであろう。そうそう、氷に閉ざされているからと言って凍傷などになることはないので、安心するがいい。それでは、さらばだ!」
そう言って私は光の鱗粉を撒き散らしながら空高く舞い上がっていった。地上から見えなくなるぐらいの高さまで。
ラピは後は任せてとか言ってたけど、気になるから透明化の魔法を使って近づいてみよう。危険がないとも言い切れないし。透明化できるかな〜? 戦闘で使わなければ神様もきっと許してくれるよね! レッツ、チャレンジ♪
「インヴィジブル!」
と唱えてから人気のない所で地面に降りる。天使の翼をしまい、村長の家に向かって移動する。途中、自分の家へと帰っていく村人の何人かとすれ違ったけど気づかれることはなかった。うん、透明化成功だね。私は移動スピードを早めて村長の家へと急いだ。
ラピが村人達になにか言ってるようだ。側に行って どんな話をしているのか聞いてみよう!
「ですから、大天使 雪音様はー、その大いなる慈悲でもってー、」
ラピ、ちょっと待って! あなた何とち狂ったこと言ってるの!? なんで大をつけた! ただの天使でいいじゃん!
くっ、やっぱり、あの子に任せるべきじゃなかったんだ。ラピは雪音教を流行らせようと画策してたに違いない!うっかりあの子の口車に乗せられて天使の翼出しちゃったけど、これはマズイのではないでしょーか……。
「そして、我が村の守り神様である白い大蛇ワイトスネイカ様は、大天使 雪音様の眷属となって、この村をー」
あー、うん。ワイトを下僕にしたことも暴露しちゃうんですね。あの子、私がいない間に何を村人達に吹き込んだの!? あっ、あのお婆ちゃん、膝をついてラピの両手を握りしめて、なんかめっちゃ感動して泣いてるじゃん!?
「そして、ここにおはす白いお犬様は、クゥーちゃん様でございますー。クゥーちゃん様はー」
ラピ! クゥーちゃん様って、おかしくない!? クゥー様かクゥーちゃんで良いじゃん!
私はラピの後方で体育座りをして、ラピの布教を放心した状態で聞いていた。
時折、村長の「ここから出すのじゃーー」とか、「儂を誰じゃと思っておるんじゃーー」といった叫び声が聞こえてきた。
あの調子じゃ、村長は氷の柩から一向に出られないような気がするよ。反省の色がまったく見られない。村長に限らず出られなさそうな村人は、とりあえず、お股とお尻付近の氷だけ解除しといてあげればいっかな? あーでも、それだと真面目に反省しだした人に不公平だよネー。めんどくさいから全員のお股とお尻付近の氷を解除かな? うん、これなら不公平感は出ないよね♪ 粗相しちゃったら家族か誰かがきっとなんとかしてくれるよ!
ちなみに、村長以外の叫び声も、もちろん聞こえた。その中の1つに「私はただ村長に言われて、あの子を生け贄の巫女が着る衣裳に着替えさせて祭壇まで数人の女と一緒に運んだだけなんです! たったそれだけのことをしただけなのに、この仕打ちはあんまりでございます!」という叫び声があった。
やー、あの人何言ってるの? って感じだよネー。村長を止めよーよ! 殺人幇助じゃないですか!? まー、私に関して言えば、魔物のお腹の中から自力で抜け出したから殺人幇助未遂? なんだけどさ? 覚悟を決めた人が自分で生け贄になるのと、本人の意思を無視して生け贄にするのは全くの別物なんだよ? そこら辺、村長とかあの女の人とか分かってないよね。そもそも生け贄の考え自体が論外なんだけどさ。あの人まだ叫んでるよ。反省の色がないよねー。ハー。
それにしても、異世界初の村人がいる村がこんなだったなんて酷い話だよ。雪音ちゃん、泣いちゃうよ?
他の村とか町は大丈夫だよね? こんなじゃないよね?
あっ、村長の家が焼け落ちた! 村長を見てみると、焼け落ちた自分の家を見て茫然自失してる。反省しないエロじじーには良い薬だよね!
それにしても、ラピはあの布教いつまで続けるつもりなのかな〜? 雪音ちゃん、もう帰って寝たいんだけど……。
「だからですねー。大天使 雪音様のお力はですねー、それはそれは素晴らしいものでしてー
.
この作品を読んで面白いとか、もっと続きが読みたいと思って頂けたなら、『ブックマークに追加』や『ポイント評価』をして頂けると、物語を続けていく元気の源になります!
『ポイント評価』は、目次から最新話のページにリンクで飛んだ先の、後書きの下の方の『ポイント評価』の項目からできるみたいです。お時間がある方でやっても良いよという方がいらっしゃいましたら、ログインして評価を頂ければと思います。
また『ブックマークに追加』や『ポイント評価』をしてくださった皆さん、どうもありがとうございます!!




