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迷宮9)フェアリア

『みんな、もう出て来ても大丈夫ですよ~』


 わたしは、レンガをぐぐーっと動かして温室を開ける。

 その瞬間、わたしは首を傾げた。


『って、みんな、なにをしていたの?』

「暇だったから、スライムさん当てごっこしてた」


 温室の中で、コビットさんが灯したお星様の光の中。

 スライムさんがいっぱいに分裂して、ぷにぷにっとしてるんだけど!

 すっごく小さくて可愛くて、わたしも混ざりたかった。


『ぷにぷに♪』

『こびこび☆』

『そうだったんだー。コビットさんは三回当てれたのね。ルーくんは二回?』

「スライムさんはほんとみんなそっくりなんだ。本体がどれだかマジわかんね」

『わたしも挑戦してみてもいい?』

『ぷにぷにっ♪』

『うんうん、ちゃんと目を閉じておくよー』


 わたしは、スライムさんから意識をそらす。

 最初のスライムさんを当てればいいんだよね?

 ちょっとどきどき。


『『『ぷにぷーにっ♪』』』

『もういいの? わっ、さっきよりいっぱいだぁ!』


 スライムさん、さっきまで手の平サイズだったのに、一口サイズになっちゃってる。

 分裂するとどんどん小さくなるのかな?

 

『こびこびっ』

「難しいだろー? これ、みんなある意味本物だしな」

『そうだねぇ。みんな本当にスライムさんだものね』


 わたしはむむーっと意識を凝らす。

 右端のスライムさんは絶対違う気がする。

 真ん中のスライムさんは、ちょっと怪しい、かなぁ?

 ルーくんの膝の上のスライムさんは?

 三匹いるけれど、その中の一匹とかどうだろう。

 コビットさんとも仲良しだから、コビットさんの頭の上で『ぷにっ♪』って鳴いてるスライムさんも疑わしい……。


『本物、ちゃんといるのかな?』

「それは当たり前。一匹一匹よーく見ると、顔が違うんだ」

『えっ、みんな同じ子に見えるよぅ』

「それは迷宮さんのみかたが良くないね」

『ちゃんと見てるんだけどな』

「ほら、このスライムさんとこっちのスライムさん、目のくりくり感が違うでしょう」


 ルーくんが、膝の上にいた三匹のスライムさんのうち、二匹を左右に持って言う。

 

 うーん、二匹とも、とっても可愛いんだけど。

 瞳のくりくり感?

 ……………。


『あー、わかったぁ! ルーくんの右手のスライムさんは、ちょっと眠たげだぁ!』

「正解。少し垂れ目なんだよ。左手のスライムさんのほうが、きりっとしてるの」

『うんうん、言われてみるとほんとにそうだねぇ。ルーくん良くみてるなぁ』

「さっきまで沢山遊んでたからね。大分見分けれるようになったよ」

『練習あるのみ、だね』


 わたしは沢山のスライムさんたちの瞳を、じーっと見つめる。

 白いお花の上に座っているスライムさんの瞳はみんなより一回り小さいね?

 ルーくんの足元にいる二匹は、切れ長の子と、ぼんやりした子だし、コビットさんの肩にいる子は、瞬きが多いような。


『大変だ!』

『『『ぷにに、ぷにっ?』』』

『こび?』

「迷宮さん、どうしたの?」

『わたし、最初のスライムさんの瞳がわからない!』

「えぇええええ?」


 驚きだ。

 毎日見ているのに、わたし、スライムさんのつぶらな瞳がわからないっ。

 ちょっと垂れ目気味だったっけ?

 それとも、きりり、だっけ?

 どのスライムさんも可愛くて、スライムさんらしいスライムなんだけど。


「しょうがないな、ヒントをあげようよ」


 ルーくんがスライムさんにそう提案する。

 うんうん、そうしてもらえると嬉しいな。


『ぷににー……』

『ぷにぷに、ぷに?』


 スライムさん達が、ちょっと温室の隅に集まって、こそこそ相談し始める。

 大丈夫よ?

 わたし、こっそり聞いちゃったりしないからね。


『ぷにに、ぷにっ!』


 スライムさんが、ぽこぽこっと数匹くっついて、コビットさんと同じぐらいの大きさになった。

 そして数もぐっと減って、五匹に。


『ぷーにぷに♪』

『うんうん、そうね。五分の一なら、わかるかも』

「スライムさん大サービスだな」

『ルーくんはもうわかったの?』

「もちろん」

『こびこびっ☆』

『二人ともすごいな。わたしも頑張らないと』


 今度こそと、じーっと五匹のスライムさんを見つめる。

 うーん……。

 よし。


『スライムさん、真ん中のきみに決めたっ!』

「正解!」

『こびこびー☆』


 大正解、やったね♪


 スライムさん、満足そうにぷににっと震えて、一つに戻った。

 うん、スライムさんの瞳は、つぶらでキリリ、だわ。


 あ、大事な事を忘れる所でした。


『ねぇ、ルーくん。フェアリアさんって、知ってるかな?』

「フェアリア? カジンの妹だろ。彼女が一緒に来てたのか?」

『あー、やっぱり、妹さんなのね。カジンって子が、話してたの。その子の為に薬草が欲しかったみたい』

「えっ……」


 ルーくん、真剣な顔で黙り込んでしまった。

 しばらくして、ルーくんが言いづらそうに口を開いた。


「フェアリアはさ、昔からちょっと身体が弱いんだよね。僕の妹と仲良かったんだけど、最近は見かけないなって……」

『うんうん』

「すごく、いい子で。身体が弱いこといつも気にしてて、でも、家の手伝いとか、一生懸命やっててさ」

『可愛いこなんだ?』

「わっ、そ、そうじゃないよ。いや、すっごく可愛いけど!」


 ルーくん、いいながら顔が真っ赤だ。

 うんうん、ルーくんはフェアリアさん、ううん、年齢的にフェアリアちゃんかな。その子が好きなのね?

 

「迷宮さん、何か誤解してるでしょ。フェアリアとはそうゆうのじゃないんだからな!」

『うんうん、わかってますよ~?』

「……絶対、判ってない」


 あああ、ルーくん、そっぽ向かないで?


「フェアリアはノーチェが好きなんだ。僕は違うよ」


 あー……。ノーチェくん、もてそうよね。

 でもルーくんも格好いいと思うんだけどなぁ。

 今は女の子みたいな顔立ちだけど、それってつまり、整ってるってことだし。

 後数年もしたら、間違いなく美青年だよ。


「迷宮さん。フェアリアの具合って、そんなに悪そうだった?」

『うーん。二人が話しているのを聞いただけだけど、あんまりいい感じじゃなかったな……』

「わかった。僕ちょっと、彼女のお見舞いにいってくる!」


 ルーくん、ぱっと立ち上がって走っていった。

 でもすぐに戻ってきたけれど。

 だって、出口と反対方向に走っちゃったからね。

 わたしはぐぐーっとレンガを動かしてルーくんを誘導してあげた。

 ルーくんの大事なお友達なら、無事だといいなぁ。


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