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元刑事、異世界で答えに辿り着く  作者: 月乃音


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第1話 地下牢の少年

頭が重い……、身体が熱い?風邪か?

熱を確認しようと、腕を動かすと痛みが走る。


「っ……」


何だ?体があちこち痛む。

体を動かそうとしたら全身に痛みが走った。


「うっ……」


横になっているが、下が硬く背中や腰、尻が痛い。

何がどうなっている?

目を開けようとするが、瞼が重く開けられない。

俺は……、頭にモヤがかかる。

直前の記憶を思い出そうとした途端、頭に激痛が走る。


「っ……」


ズキズキするが思考を巡らす。

思い出せ……。

俺は何をしていた?


「ぐっ……」


更に頭に激痛が走る。


「いったい何がぁ……あ?」


思わず語尾が上がる

聞こえたのは自分の声より、高く掠れた弱々しい声。

なんだ?

喉に手をやろうとしたら、右腕に痛み走る。

ひどい怪我でもして声帯やられたのか?

事故にでもあったのか?


「クソ、何も思い出せねぇ……」


頭でも強く打って記憶が飛んでいるのか?


なら、ここは病院か?

いや、おかしい……音がしない、静か過ぎる。

人の気配もしない。

それに病院にしてはベッドが硬い。



落ち着け。

俺は深呼吸を繰り返す。

数回繰り返していると、鼻に付く覚えのある匂いがした。

この匂い。嫌な匂いが鼻につく。どこで嗅いだ?


「どこで……。クソ」


思い出せ、何度も嗅いだ匂いだ。

脳裏に浮かび、血の気が引く。


「血の匂い!」


俺は目を開け、身体の痛みを無視してガバっと上半身を起こす。


「っ……。たっく、イッテーな」


痛みに悪態をつく。

声に違和感があるが、無視して周りを確認する。

俺がいる場所は、薄暗く汚れ無機質な場所だった。


「どこだよ、ここ。鉄格子が扉になっただけの牢屋だな……。悪趣味な」


窓は天井近くにある、鉄格子がついた小窓が一つ。

唯一の出入り口は木の重厚そうな扉で、上の方に開閉式の小窓がある。



「鉄格子でガラスない窓って、今どきあるのか?それに……中を確認する小窓ねぇ。俺、なにかしたのか?」


重症のおっさんを閉じ込め、監視して何が楽しいのか……。


「それにしても……」


思わず呆れた声が出る。

俺が寝ていたのは、ベッドとは呼べない代物だった。

木箱が並べられ、その上に使い古せれて薄くなった、ボロボロのマットの残骸が敷かれている。

掛けられているのは薄く汚れた毛布1枚……。


「これ、毛布だよな?」


ペラペラで、使い古された雑巾のようだ。


「背中や腰が痛いわけだ……。木箱って、逆にすごいな。枕もない」


ため息を付きながら、一番気になった匂いの元を探る。

原因はすぐ見つかった。

床に血溜まりが出来ていて、まだ乾いてない。


「……結構な量だな」


顔を顰めながら呟く。


窓が小さく薄暗いため見えづらいが、よく見ると壁や天井にもシミがある。


「暗いな、今何時ぐらいだ?」


部屋を確認するが時計はない。

時計はないが……嫌なものが目に入った。

壁に付いた、手形の血痕……大きさからして子供か……。

大きさを確認しようと、痛みが走るが自分の手を持っていき、即引っ込める。

ゾワッと全身に悪寒が走り、冷や汗が額に滲む。


「……なんだ?何か……っ、くっ」


何か思い出しそうになった途端、酷い頭痛に襲われた。

痛みに耐え、呼吸を整えて息を吐く。


「……」


俺は恐る恐る手を見る。

痩せ細り骨の浮いた小さな手。


「俺の手……なのか?」


震える手で掛けられた毛布をめくる。

そこには、ボロボロのズボンから出ている、痩せ細り骨ばった足が見えた。

袖や上着をめくると、腕や体も同様にやせ細っていた。


「どう見てみても子供の体だよな。推定8歳から10歳ぐらいか?」


俺が子供?


「違和感しかない……」


自分のこと考えると頭痛がする。


「はぁ、思い出せないなら考えても無駄だな」


頭を掻こうと腕を動かすも、痛みが走る。


「あぁ、くそ」


思うように体が動かせず悪態を付く。


「まぁいい」


それより気になったのが、手当したのか体中に包帯が巻かれていた。

包帯は使い古された布だが、清潔ではあるようだ。

それ以外にも見える範囲だが、かなり前の傷もある。

こんな怪我をした覚えはない、ないが……。

これらの傷には見覚えがあった。


「……虐待か。虐待にしてはかなり酷いな」


どちらかというと、拷問に近い気がした。


ため息を飲み込む。

痛む体にムチを打ち、ベッドから起き上がり部屋にあるシミを調べる。

床や壁にあるシミ……やはり飛び散った血痕だ。

天井は確認できてないが、十中八九間違いないだろう。

床の血溜まり以外にも、真新しい乾ききってない血痕がある。

このシミの量は、一度や二度じゃなく複数回ひどい暴行が繰り返し、この部屋で行われた証拠だ。

だが、この部屋には俺一人。


「俺だけの血だったとしたら、生きているのはおかしい」


冷静に見ても、この血痕の飛び散り方だと、それなりの量の血を流しているはず。

体の傷跡だと、ここまでの血は出ないはず。


「それに……」


もう一度部屋を見回す。

常識では考えられない飛び散り方をしていた。

この部屋に閉じ込められ、複数人が暴行を受けたと考えるのが妥当だ。


「はぁ……」


狭い部屋を確認しただけで疲れ果てる。

精神的にこの現状はキツいな。

よろよろと歩きベッドに腰掛ける。

狭い部屋を少し歩き、座っているだけで体力を奪われていく。


少年の体を触り、細部も確認する。

肌はカサカサ、爪はひび割れてボロボロだ。

ほとんど食事が与えられて、いないのだろう。

救いだったのが手足にしびれがなく、骨や神経にも問題がなかったこと。

しかし、身体のいたる所に傷があり相当古い傷跡もある。

見えないが背中の皮膚が突っ張ることから、背中にも傷があるだろう。

一体いつから、こんな扱いを受けてきたのか。

虐待を受けた者を何度か見たが、これは酷すぎる。


「まて、虐待? 何度か見た?なぜ……、知っている?」


俺は足を抱え込み、ぎゅっと両手で身体を抱える。

今にも折れそうな痩せ細り小さな身体。


「それに……」


最初に目に入った、手形の血痕。

そっと、手のひらを合わせてみる。

ピッタリと大きさが一致する。


「おかしい……」


一致するのに、手に傷がない。

手形は一つではなく、いくつも跡がある。


「他の血が手についたのか?」


何故か“違う”と直感が言っている。

それに、この直感は間違っていないと確信できる。

理由はわからないが。


「一番不可解なのは……」


床の血溜まり、この量で生きているのは変だ。


「……あり得ない」


手形の血痕の大きさは全て同じ。複数人なら違う手形があって当然のはず。

子供だから拘束しないで、逃げて怯えるのを楽しんだのか?


「チッ……」


考えただけでも胸糞わりぃ。


「不可解なことが多い、違和感しかない」


ピースが合わなすぎる。

謎が多い現場だな……。


「現場……? っ、待った、やめやめ」


痛みで思考を止めたくないので、自分のことを考えるのを放棄する。


「あと、傷を手当するのも、あり得ないよなぁ」


自分の体に施された手当の後を見る。

丁寧に手当されているのが分かる。


「まぁ、今一番どうにかしないと危険なのは俺だな……。このまま、ここに居たら確実に待っているのは死だ。記憶がないのが痛い、何日意識が無かったのか、暴力の頻度は?見回りがあるのか、食事のタイミングは、少ないだろうが……」


敵だけか?手当した人間は味方か?


「暴力振るったやつに、手当した人間……誰も顔を覚えてない」


作戦が立てられない。


「この身体、まだ耐えられるか?」


自身の身体をもう一度見る。

厳しそうだ、だが抗うしかない。

死んでたまるか!


決意をしていると、遠くで物音がした。


「っ」


息を潜め、身体を横にして毛布を被り、息を潜める。

足音がこの部屋に近づいていた。





ここまでお読みいただきありがとうございます。

もし少しでも楽しんでいただけましたら、

評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです。


『第2話 メイドの少女、モニカ』も、よろしくお願いします。


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