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果てからのパヴァーム -Play of color bridge-  作者: 六花梨花
1.モールラガードでの一夜
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1.モールラガードでの一夜 08

 それは本降りの雨音に紛れ、三人が泊まる宿へやって来た。

 この宿の食堂の営業は深夜に終わる。長っ尻をするつもりなら、上にある宿泊用部屋を借りて続きをするか、別の酒場へ行くように促される。

 その一団は営業時間が過ぎても席から動かず、泊まる素振りもなかったので、男の店員達に囲まれていた。

 店員達が何を言っても微動だにしない。

 いよいよ、首根っこを掴まれ追い出されそうになったその時。一団の一人が凄んだ。

「女のガキをつれた、戦士風の男と女の部屋はどこだ?」

 そう言ったのは、少女のことでフォルと一戦交えそうになったがあたふたと逃走した、ならず者のリーダーだった。

 今、宿泊客にそれが該当するのはフォルとネフだけ。

 尋ねられた店員が、やれやれと溜息をつく。

「あいつらはやめとけ。お前らが掃除屋の世話になるだけだぞ」

「あいつら……特に女の方の仇名はただの噂かもしんねぇじゃねぇか。それを俺達が証明してやるよ。今日は一匹もガキが浚えなかったんだよ。俺達にもノルマがあってな。お仕事大変なんだぜ? さあ、あいつらの部屋がどこか教えろ。でないと、お前らが掃除屋の世話になるぜ?」

 男は剣の切っ先を店員に向けて嗤った。

「……ほんっとに知らねえぞ。三階の南。左一番奥の部屋だ」

「あんがとさん。あいつらの為に掃除屋を呼んだ方がいいぜ。おう、行くぞ!」

 ならず者達は喜び勇んで階段を上っていった。

 それを一番若い店員がおろおろと見つめる。

「い、いいんですか、先輩……」

「ああ、お前は知らないのか。フォル達なら大丈夫だって。それより掃除屋呼んどけ。どのみち必要になるから」

「は、はい……」


 ○ ○ ○


 ならず者達は、意気揚々と三人のいる部屋へと進む。

 最近、この街の住人達は、子供を一人で外に出すことがなくなった。戸締まりも以前より強固にするようになった。

 裏通りや下水に住んでいる孤児達も用心深くなり、簡単に誘拐されないよう、大人の死角を計算して住み処を作るようになっていた。

 戸締まりが強固ではない宿は簡単に押し込める。

 さっきは女に纏わる噂に怯え、逃げてしまったが、それ以上に金が大事になった。あの少女は、今、彼らが思いつく限りの手っ取り早い金づるだった。

 女に纏わる噂が嘘であったり、姿を模した贋者であったりする可能性もある。

 そうであれば、同行している男を皆で殺し、極上の女を嬲ってから殺せる。股間までがたぎる金づるに男達は昂揚していた。

 三階についた。

 細い廊下の左右にある部屋は無視し、一番左奥の部屋の前へと足を忍ばせる。

 ドアのすぐ前で、先頭にいる男が全員に目配せをする。皆、頷き、気配を殺し得物を手にした。目をぎらつかせ。

 細長いドアの取っ手に手をかける。

 鍵はかかっていない。

 不用心だなと男は嗤う。

 まずは、男を殺す。

 そして女を拘束。

 子供はしんがりにいる煉組術師に渡して、俺達は女でお楽しみ。

 皆で酒を飲みながらたてた段取りを頭の中で反芻して――男はドアを開けた。

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