2人乗り車輌
「何だかミ●四駆みたいだな…。」
マサルがそう呟くのも無理は無い。アデリナを乗せる事を考えると三輪よりは四輪かなと考え、骨組みや仕組みを簡易にして軽量化していくと子供の頃に遊んだ乾電池で動く自動車を模した玩具に似てくる。
「日本人ってのは本当に徹底してたんだな…それとも俺の発想が足りないのか?まぁ、良いか…取り敢えずは形にしないとな…。」
車体はF1の様に低く平たく作られ、軽量化と必要な強度を考えられ肉抜きされている。動力こそマサルの人力のペダルの力を伝え、ギアを介して車軸を動かす。単純だからこそ故障などのリスクを減らす事が出来る。
「ギアボックスはカバーをつけて埃や泥土から守れる様にしたし、車軸にはベアリングを付けて力のロスも減らした…サスペンションも効果があるかは分からんが付けたし、後はボディか…。」
今は骨組みだけで石などが跳ねると直接人に当たる可能性がある。
「ここはお得意の布を張って、硬度が必要な所には蟻の甲殻を使うか…。」
タイヤの泥除けなどのカバーを付けたり、ボディに蟻の甲殻を張り付けたりすると…。
「ますますミ●四駆だな。綺麗に磨かれた虫の甲殻がプラスチックにしか見えない…。」
そこに駆けてくる影が2つ…。
「兄ちゃん何それ!?カッコいい!」
「おにいちゃん、しゅごいの!」
ジータとメイだ。この2人は何だかんだ言って大人に混じって自分の出来る事を見つけ働いていて更にマサルとの交友も深い為にこういう風に作業場にもよく入り込んでくる。
「どうしたんだ今日は?」
「アデリナおねえちゃんがしゅごく怒ってるの…。」
「クックさんたちがかわいそうだから誰か止めてあげてってハイトさんが…。」
やっぱり鬼軍曹アデリナの熱烈指導は行われている様だ。
「クックたちもアデリナも少し見守ってあげてくれるか?あれはね両方にとても必要なお仕事だから厳しくやっているだけなんだよ。」
「大丈夫なの?」
「あぁ、大丈夫だ。」
不安そうな2人の頭を撫でてやる。
「どうだ?これから試運転するけど2人とも乗ってみるか?」
そう言って助手席のドアをあける。助手席は広めにとってあるので子供2人なら何とか乗れるスペースがある。
「「乗るぅ!!」」
元気よく競う様に乗り込むジータとメイにシートベルトをしっかりかけてから作業場の出入り口を開けてマサルも運転席に乗り込む。
「じゃあ、行ってみようか…。」
この車の一番の欠点は実は発進する瞬間にある。ギアが重すぎてスタートするのがとてつもなく大変なのだ。
「最初は坂を下って勢いをつけて発進するから少しビックリするかも知れないが、しっかり掴まっていれば大丈夫だからな。じゃあ、行くぞっ!」
そう言って手を伸ばして車輪止めを外すレバーを引く。すると一瞬、ガコンとジェットコースターの下りの様な加速をしてから街へと飛び出した。
「いやっほぉ〜い!」
元気にはしゃぐマサルと歯を噛み締めて初めての加速度に耐える兄妹。馬車の様な速度でぐるぐると同じ所を回り、簡単に動きを確かめた後に街の門から外へとくりだす。慌てて飛び退く門番勤務のキバの驚く顔に3人はお互いの顔を見合って笑いあう。
「久々のドライブって感じだな…自分の足でペダルをこいでいるけど、間違いなくこれは車だ…ちょっと過剰な技術も盛り込んだけど、そもそも量産出来ないし大丈夫かな。2人はどうだ?」
「「最高〜っ!」」
頬に当たる風に気持ち良さそうに微笑む兄妹に気分を良くしたマサルは日が傾き夕方まで2人を連れ回して皆に怒られるのであった。
サイドカー付きの自転車?を考えていましたが思い切って車っぽい物の製造に踏み切りました。
黒い蟻の甲殻が鈍く光る車体…どんな画を思い浮かべたでしょう?




