お湯を使おう
ゼラフィティスが帰った後、街に出てみると案の定騒ぎになっていて状況の説明をした後、マサルは温泉・調理・生活等の用途別に源泉を街中に引いていく。
人々は至るところから湯気が漏れている光景に少しの不安とこれから築かれる新しい生活に胸を熱くする。
「絶対に源泉に直接手足を突っ込まない様に!熱いから火傷するからな!………こらこら、蒸気も危ないから気をつけて!」
マサルが安全に使用出来る様に調整をしている間にも初めて温泉を見た人々は興味津々に溜まったお湯を覗きこんだり、湯気に手を入れてみたりしている。
「おにいちゃん!大変なの!お魚さんがお湯の中で迷子なの!」
何処からか駆けてきた兎人族のメイの言葉に首を傾げながら手を引かれ連れていかれた場所でマサルは目を見張った。
「あそこでお魚さんが迷子なの!助けてあげて!」
そこは調理用に一度源泉を溜めていた水槽で、ほぼ源泉の高い温度を保ったままで90℃前後はあろうかという場所。
「何で魚が泳いでいるんだ?っていうか何処から入った…?」
「おにいちゃん、お魚さん迷子なの!」
「ちょっと待ってくれメイ…多分このお魚さんはお湯の中で生活しているお魚さんなんだと思う。ある意味迷子は迷子で間違いないだろうけど…。」
「お魚さん大丈夫なの?」
「ちょっと調べてみるからお魚はそのままにしといてあげてね。」
水槽のお湯の中には10cmくらいの細長い魚が3匹くらい泳いでおり、状況から見ても地下の水脈から紛れ込んだのは間違いないのだがこれ程の高温の水の中で生きられる魚がいる事に驚きが隠せない。
「取り敢えず、ここは皆が落ちたりしない様に蓋をするよ〜」
そうマサルがいうと周りの子供たちから不満そうな声が漏れる。
「大丈夫だよ。ここが格子になってるから中のお魚さんはちゃんと見えるからね〜それにあんまりお湯が冷えるとお魚さんが寒い寒いって言っちゃうよ?」
そう言いながら蓋を閉めていく。
「これからも迷子のお魚さんが来るかも知れないからお兄ちゃん行くからね。」
そう言って源泉が出ている穴のところに行くと菅を調整をして一度神殿の裏に急遽増設した水槽に一度溜まった源泉が街中に別れていく様に改良を加えていく。この際、生き物や異物が送られない様にフィルターを設置するのも忘れない。
「取り敢えずは、あの魚が食べれるかどうか調べてみるか?…いや、そもそも何を食べて生きているんだ?」
まさかの事態に仕事が増えそうな予感にひしひしとしてきた。
「これからは薪が少なくて済むわね!」
というのが街の全体的な声で好評な事には安心するが、これからの調整や安全対策の事を思うと胃が痛くなるのだった。




