第八十三話 魔王様、宣伝する
とりあえず、みのりちゃんとぐるっと一周してきた鴨川5号ダンジョン……もとい、鴨川ゴーゴーダンジョンは完全に遊園地でした。
広さはそれほどないけれど、定番のアトラクションは一通りあるみたい。
メリーゴーランドにティーカップ。
ゴーカートに、お化け屋敷。
どうやって動かしているのはわからないけど、ジェットコースターっぽいものもあったし。
やっぱりこれは、有栖川家御用達の「浅草花やしき」と良い勝負かもしれない!
「お客様」
と、入口まで戻ってきたまおたちに、ドラクロアさんが声をかけてきた。
「お楽しみいただけていますでしょうか?」
「す、すみません、実はまだ何も乗ってないんですよね。とりあえず一通り見て回ろうってことになって」
「左様でございますか。なにかご不明点があれば、なんなりとわたくしにお申し付けくださいませ」
「ありがとうございます。というか、改めて凄いダンジョンですよね。鴨川のダンジョンはこういうのが当たり前なんですか?」
まおが尋ねると、ドラクロアさんは首を横に振った。
「いえ、レジャーランド型のダンジョンは、わたしが知る限りここだけでございます。推測するに、日本中を探しても存在しないかと」
「確かに聞いたことがないでござるよね……」
うむむ、と首をかしげるみのりちゃん。
つまり、このゴーゴーダンジョンが特別ってことか。
でも、どうしてここだけ?
「失礼ですが、お客様方はどちらから?」
「え? 小生たちでござるか? 都内でござるが?」
「……左様ですか」
少しだけ渋い顔をするドラクロアさん。
「あちらのダンジョンには連日多くのスカベンジャー様が訪れていると聞きます。実に羨ましい限りです」
「羨ましいんですか?」
思わずキョトンとしてしまった。
ダンジョンに住むモンスちゃんにとってスカベンジャーさんたちは敵だし、むしろ来ないほうが良いんじゃ?
「不思議に思われるでしょうが、わたくし達モンスターとスカベンジャー様は共存している間柄。持ちつ持たれつの関係です。スカベンジャー様が訪れなくなったダンジョンは廃れ、朽ちていく運命にあります」
「そ、そうなんですね……」
ドラクロアさんが言うには、スカベンジャーさんが来なくなるとモンスちゃんが活力をなくし、最悪、消えてしまうのだとか。
超初耳すぎる。
だけど、戦う相手がいなくなる……つまり、仕事がなくなったら活力が失われるっていうのは、なんとなく理解できるかも。
だって、まおのおじいちゃんがパンツ履き忘れるようになったのも、定年退職してからみたいだし。
「以前はここにも多くのスカベンジャー様たちがいらっしゃいました。ですが年を追うごとに数が減っていき……今ではこの有り様です。待機エリアの惨状はご覧になられましたでしょうか?」
「え〜と、はい。なんとなく……」
誰一人いない待機エリアはちょっと寂しかったな。
今はあずき姉がひとりで宴会してるけど、それも寂しい。
「訪れるスカベンジャー様たちの数が減り、このままでは廃宮になると危惧したわたくしは迷宮建築士様に相談し、アトラクション型ダンジョンにリフォームしてもらいました。ですが、それでも以前のにぎわいは戻らず……」
「迷宮建築士?」
初めて聞く名前。
「ダンジョンの設計や工事監理を行っている、資格保持者のことですよ」
「……へぇ〜」
普通の建築士さんとは違う……のかな?
その迷宮建築士の資格を持ってるモンスちゃんが、ダンジョンを作ってるってことなんだろう。
よくわかんないけど、モンスちゃんの世界にも色々あるんだな~。
ドラクロアさん曰く、その迷宮建築士さんにダンジョンをリフォームしてもらったけどスカベンジャーさんは戻って来ず、そんな状況に愛想を尽かしたモンスちゃんも「人気のあるダンジョンに移籍します」と、いなくなりつつあるみたい。
それは由々しき事態だな。
こんな楽しい雰囲気のダンジョンなのに、重大な問題を抱えていたなんて。
しばし、重い空気が立ち込める。
それに気づいたドラクロアさんが、ペコリと頭を下げた。
「……これは申し訳ありません。楽しい気分に水を差すようなお話を」
「い、いえいえ。結構重大な問題でござるからね……」
みのりちゃんも、ちょっと神妙な面持ち。
まおは「う〜ん」と首を捻って考える。
モンスちゃんが困ってるなら、どうにかしてあげたいところ。
まおにできることと言ったら、ダンジョン配信……だよね?
……あ、そうだ! 配信でゴーゴーダンジョンを紹介したら、結構バズるんじゃないかな!?
だってほら、ここは世にも珍しい遊園地型ダンジョンだし。
撮れ高、メチャクチャ高そうだし!
「よし! まおが配信でお手伝いしますよ!」
「……えっ?」
キョトンとした顔をするドラクロアさん。
「配信、ですか?」
「そう! まおのダンTVチャンネル登録者って、結構多いんですよね! だからそこでゴーゴーダンジョンの宣伝をしたらいいかなって」
「ダンTVというのは、スカベンジャー様たちが良く利用していらっしゃるダンジョン・ティーヴィーのことでしょうか?」
「そうでござるよ」
みのりちゃんがこくりと頷く。
「何を隠そう、ここにいらっしゃるまお殿はダンTVのチャンネル登録者が200万人を超える、超超人気配信者なのでござるっ!」
「に、に、200万人っ!?」
ドラクロアさんが、素っ頓狂な声をあげる。
「登録者数200万人に、そのお名前……もしやお客様は、巷で噂になっている魔王まお様……でございますか?」
「ええ、不本意ながら」
本当に不本意すぎるけど、そのとおりでございます。
「なんと。まさかあの魔王様がいらっしゃるとは……」
目をぱちくりとさせるドラクロアさん。
しばし思案し、深々と頭を下げる。
「これぞ正に神の恵み。ぜひお願いいたします魔王様。どうか、ゴーゴーダンジョンをお救いくださいませ」
「おっけー! まるっとまおに任せて!」
良い結果が出ると思うし、泥舟に乗った気分でいていいからね!
──って、息巻くのはいいけど、どんなふうに紹介してあげよう?
普通にアトラクションを紹介するだけじゃ面白くないよね。
ゴーゴーダンジョンは最高に楽しいぜって所を見せてあげなきゃ。
できればゴーゴーダンジョンを知り尽くした「プロ」に案内をお願いしたいところだけど──。
「あ、良いこと思いついた! ドラクロアさん、まおたちと一緒にゴーゴーダンジョンをまわりましょう!」
「……え? わたくしが、ですか?」
ドラクロアさんが不思議そうな顔をする。
「ドラクロアさんはゴーゴーダンジョンの支配人だし、一緒にまわってゴーゴーダンジョンの魅力を紹介してください!」
「……おお、それは良いアイデアでござるな!」
みのりちゃんがぱちんと手を叩く。
「ドラクロア殿って良いキャラしてるし、人気出そうでござる」
それな!
執事っぽい雰囲気だし、女の子に人気出そう。
まおにはピンとこないけど。
「わかりました。わたくしとしてはあまり目立ちたくはないのですが、ゴーゴーダンジョンのため、尽力いたします」
「よし! それじゃあ、行こう!」
てなわけで、早速3人一緒にゴーゴーダンジョンをまわることに。
もちろん、配信用のドローンちゃんを用意してね!!
いざ、ゴーゴーダンジョンのPR開始っ!
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