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0330 ハーレム婚計画の重大な落とし穴

 「イクゾー様は貴族ですが、この国で6人と結婚することはできません」


 な、何だってー!?

 その大前提が崩れたらハーレム婚できないじゃん。

 俺がいくらパーティー全員とねんごろろになっても意味ないじゃん。

 ヴィンヴィンにはもう結婚を匂わせちゃってるんだぞ。

 今さら無かったことにしてなんて言えないってばよ!

 そんなことしたら今度こそ殺されてしまう・・・あわわわわわ。


 いや待て、落ち着け、落ち着くんだっ。

 どんな逆境でも必ず何か打開策がある筈だ。

 まずはエマの話を聞いて何が駄目なのか確認しないと。


 「ど、どうして貴族なのに一夫多妻が認められないの?」


 「イクゾー様の国とここセクスランド王国に国交が無いからですわ」

 「それだと駄目なんだ?」

 「はい、貴族として待遇されはしますが、貴族の恩恵までは受けられません。この国の複数の女性と結婚するというのもその一つになります」

 「そういうことかぁ」

 「ワタクシの為にお心を砕いて頂いたのに申し訳ありませんわ」

 「気にしないで。エマのせいじゃないってば」

 ガバガバな計画を具申したギルマスが悪いんだよ。

 それを鵜呑みにした俺も馬鹿だったんだ。


 「だけどこれで課題はハッキリしたね。あとはやるだけだよ」

 「どうなさるおつもりですか?」

 この話の流れなら決まってるじゃないか。

 ていうかそれしかないっしょ。


 「僕がこの国の貴族になってやる!」


 「あぁ、さすがイクゾー様ですわぁ」

 アレレ?

 呆れられるだろうなと覚悟してたのに逆に感心されてしまった。

 「エマ、本当に僕がここで貴族になれると思う?」

 「イクゾー様なら必ずなれると信じておりますわ」

 おおっ、目がハートマークになっとる。

 魔乳司祭は、恋は盲目モードに入ってしまったみたいだな。

 彼女の言葉にどのぐらい信憑性があるのか確認せねば。


 「具体的にどうすれば僕は貴族になれるの?」


 「ワタクシにはよく分かりませんわ」

 知らんのかーい!

 それで何で俺が貴族になれると言い切れるのさ。

 行き遅れ年増女は春が来るとアホになってしまうのだろうか・・・

 でもそんなエマも愛おしくて溜まらないよ。


 「俗界と切り離された聖界に身を置くことが多いワタクシは貴族社会に精通しておりませんの。お力になれず申し訳ありません」


 言われてみればそうだよなぁ。

 冒険者をやってるとはいえ本来は司祭様なんだから俗世の身分など埒外らちがいか。

 じゃあ一体誰ならその辺に詳しいんだろう。


 「貴族のことは誰に聞けばいいかな?」


 「ティアなら貴族階級のことも良く知っておりますわ」

 なるほど。あのギャルビッチか。

 確かにアイツなら貴族たちと援助交際とかしてそうだわ。

 その際のピロートークで貴族だけが知る情報とか掴んでそうだもんな。


 「ティアは監督マネージャーとして貴族たちとも交渉してるんだっけ?」

 「はい、ですので自然と貴族社会に詳しくなったようですわ」

 有名な冒険者パーティーの女監督だもんな。世知に長けていて当然か。

 「分かった。明日にでもティアに相談してみるよ」

 「それが宜しいですわ」


 話が一段落したのでエマの胸に抱かれるように寄り添った。

 「いけませんわ。イクゾー様にも呪いの影響が・・・」

 「だって誰からも、エマ自身にも嫌われて可哀想じゃない。だからせめて僕だけはこの呪われた乳首を好きになってあげるよ」

 まぁ単にオッパイが好きなだけだがこのぐらいは嘘も方便だろう。

 「なんてお優しい・・・」

 感極まったエマが俺の頭を抱くようにして胸に押し付けてきた。

 い、息が苦しい、でも気持ちイイ。いつか死ぬときはこれで死にたい。

 そんな甘い窒息死を妄想していたら、ふと思い出した。


 お風呂回の時に、競泳水着みたいな戦闘服を着たレイラちゃんとローラの乳首が見当たらなかったんで、てっきりニプレスをしてるんだと勘違いした。

 そういうことに無頓着そうなレイラちゃんとローラが乳首対策をしてるのが意外だったんだけど、そうじゃなかったんだな。

 この異世界では、陥没乳首が普通だったんだ。

 これまた想定外のところでカルチャーショックを喰らっちまったな。

 でも、逆に普段は陥没してる方が生物的には有利じゃないか。

 いつも飛び出しるから服とかに当たって苦痛なわけだし。

 なんてしょーもないことを考えて内に睡魔に襲われ俺は柔らかな眠りについた。




 チュンチュンチュン、チュチュンがチュン!

 ・・・小鳥たちのさえずりが聞こえる・・・ん、朝か・・・

 あれ、俺たしか昨日、エマさんの部屋で、あっっっ、


 エマが隣で寝てる! 俺はあのままここで寝ちまったのか!


 とりあえずどうしよう?

 エマを起こすべきなんだろうけど俺に寝顔なんて見られたくないよな。

 てことは、目を覚ます前に部屋から出て行った方が良策だろうか。

 うーん・・・いや、やっぱり起きてもらおう。

 結婚したらずっと寝顔や寝相を見せ合うんだから今から気にしても仕方ない。


 「エマ、起きて、朝だよ、起きておくれ、エマ」

 寝てる姿もエマは綺麗だなと感動しながら耳元で囁いた。

 

 何度か呼びかけていると、パチパチと瞬きをしてエマの目が開かれる。

 まぶたの後ろから現れたパープルアイの両眼が、強い意志と知性の光を宿しながら俺の顔を捉えて射抜いた。

 その鋭さが初めてエマに会った時のことを思い出させる。

 もともとエマには見る者にある種の緊張感を与える威厳が備わっているのだ。


 その女司祭のオーラが一瞬で消える。

 薄紫の瞳に映った顔が俺だと認識し、厳格な司祭様は夢見る新妻に変身した。

 「イクゾー様・・・おはようございます」

 「おはよう、エマ」

 朝の挨拶を返しながらエマの機嫌が悪くなさそうでホッとした。

 むしろ幸せそうにニッコリと微笑んでくれたぞ。これはセーフだセーフ。

 でも反省の意を示すためにちゃんと謝っとくべきだろう。


 「その、ゴメンね、エマ」

 つい寝入って部屋に泊まり込んでしまったことを謝罪した。

 「僕は直ぐに出て行くから」

 だが、腕を取られて止められた。

 「ほふぅ、なんて素敵・・・」

 ナイトテーブルからメガネを手にして装着した魔乳司祭はウットリと呟いた。

 あれ? もしかして喜んでるのかな。


 「エマ、怒ってないの?」

 「怒るだなんて・・・」

 想定外の俺の言葉に心底ビックリしたような顔をしてる。俺も想定外だ。

 「一夜を共にして頂けるなんて、女冥利に尽きます」

 言い方ぁ。

 人が聞いたら誤解されるー。

 え、まさか本当に何かあったわけじゃないよな・・・


 「その、エマ、僕は別に変なことしなかったよね?」

 「イクゾー様はただ寝ていただけですわ」

 「ホッ、じゃあ特に問題は無かったんだ。良かったよ」


 「いえ、一つだけ許されない行為が起こってしまいました・・・」

 

 な、何ですとー!?

 「僕は何をやっちゃったのかな?」

 「未婚の男女が共寝することは許されない行為です」

 それぐらい良いでしょ。ちょっと堅すぎるよ。

 「僕らはもう婚約者なんだからいいんじゃない?」


 「聖職者のワタクシには禁則行為なのです。神の意に背いてしまいました」

 えー、そんな深刻な話だったのかよ。


 「ゴメンよ。そんなに大変なことだって知らなかったんだ」

 「いえ、誘惑に負けてしまったワタクシも同罪ですの」

 「誘惑?」

 「イクゾー様と一緒に地獄へ堕ちたいと思ってしまいました」

 シー・ユー・イン・ヘル! 地獄で逢いましょうってか。

 だがちょっと待て。

 たったそれだけで地獄行きなの?

 そんなん厳し過ぎるわ!断固反対!添い寝にも人権を!


 「それは絶対にダメ。僕のせいでエマが地獄行きなんて自分が許せないよ。何か罪を償う方法はないの?」

 

 「免罪符を買えば問題ありませんわ」

 世のなかぜにずら。

 この異世界でも売ってたか贖宥状しょくゆうじょう

 ホント人間なんて考えることはどこでも同じだわ。


 「じゃあ僕が免罪符を買うよ」

 「高価ですのでワタクシが購入しますわ」

 「僕がエマのために買いたいんだ。来週中に買うから良いでしょ。ね?」

 「はい、イクゾー様の好意に甘えさせて頂きますわ」

 「ちなみに、いくらぐらいするの?」

 「男女の関係における禁忌破りは500ドポンになります」

 1ドポンが200円ぐらいだから10万円てことか。

 本当に結構するな。結婚するまではえらい出費になるぞ。


 「それだと結婚までお泊りはもう難しいね」

 「大丈夫ですわ。一度購入すれば一年間有効ですから」

 なんだかなー。

 この異世界は、冒険者界隈だけでなく、教会界隈も合理化が進んでるわ。

 でもまぁ、お陰でまた柔らかなエマの胸の中で眠れそうだ。よかよか。


 「教会とえいば、イクゾー様の洗礼式の予約が取れましたわ」

 それは有難い。

 これでギルドで冒険者登録するために必要な身分証明書を貰える。

 一刻も早く冒険者になって不帰の森でトノサマインコ捕獲せんと。

 「ありがとう。それでいつになったの?」

 「3月8日、来週の火曜日の12時になります」

 「それは良かったよ。もっと待たされるかと思ってた」

 「ウェラウニはまだ人口が少ないですから」

 そうか。地方の町の方が都市より便利なこともあるんだな。

 

 さて、今日は3月6日の日曜日だ。

 皆はお休みだけどエマは出かけると言ってた。

 「今日は、教会に奉仕に行くんだよね?」

 「はい、夕方までに戻りますわ」

 「じゃあ僕の方はハーレム婚計画のために、他のメンバーと一人ずつ話をしてみることにするよ」

 「ええ、上手く行くことを願っています」

 「うん、任せといてよ。きっと成功させるからね」

 「そのお気持ちだけでワタクシは幸せですわ」

 おおっ、またエマの目がハートマークになってる。

 夫としては期待に応えねばと朝からイチャコラしたおした。




 「昨夜はお楽しみでしたネ」

 朝食が始まった途端、ローラも俺とエマを弄り始めた。

 「出歯亀のぞきは良くないと思いますよ」

 「自宅警備員なので監視は私の仕事なのデス」

 「いきなり同衾とか飢え過ぎでウケる~♪」

 「くっ、私の部屋の真下でむざむざと・・・」

 「聖職者にあるまじき行為だわね」

 「エマさんの部屋に泊まったって本当なの?」


 「うっかり眠ってしまっただけですから」

 俺は努めて冷静に答えて批判をかわした。


 もう一人の当事者であるエマは皆から弄り倒されてもどこ吹く風だった。

 結婚というゴールが具体化し自信を得たのか充実した幸せオーラを全身から発散させながら俺の世話をしてくれている。

 「紅茶のおかわりは如何ですか?」

 「もちろん頂くよ、エマ」

 俺もそんな魔乳司祭にデレデレしながらカップを差し出す。幸せだなぁ。

 「お砂糖一つとミルクは多めですね?」

 「うん、それでお願い」

 「はい、どうぞ。ウフフフ」

 「ありがとう、エマ。うふふふ」

 朝から見つめ合って笑い合うバカップルがそこにいた。

 

 「全く反省の色がないのデス」

 「遅かれ早かれこうなったのだから別に同じよ同じ」

 「えー、でも最後の一線を超えるのは無しって言ったのにぃ」

 「早合点するな!まだそうなったと決まった訳ではない!」

 その通りだ。

 下衆の勘繰りや邪推は迷惑この上ないので止めてくれないか。


 「最後までやったんでしょ~男らしく潔く白状しなさいよ~♪」


 そんな挑発には乗らないぞ。

 今はハーレム婚計画が滑り出したばかりの大事な時期だ。

 できるだけ波風を立てないようにしないとな。

 「ご想像におまかせします」


 「そっか~エマさんの呪われた乳首が怖くて最後までできなかったんだ~♪」

 「以前、アレを見た子供が泣いてましたもん。仕方ないですよー」

 「あんな大粒の肉豆を見たら気持ち悪くなって出来なくても無理ないわ」

 「乳首ごときに恐れをなして突撃できないなど恥を知れ!」

 「突出乳首を愛でることができないなら変態の看板は下ろすがいいデス」


 「できらぁ!!」


 しまった。

 余りにも悔しくてつい叫んでしまった。

 「フーン、できるんだ~♪ やっぱりやったんだ~♪」

 「できるのとやったの間には大きな違いがありますから」

 本当にこいつは面倒くさいわ。

 だが、エマとの平穏な結婚生活のために必要だから仕方ない。


 「その件も含めてですね、皆さんとご相談したいことがあります」

 「ま、一度ぐらいは釈明の機会を与えてあげてもいいわ」

 「条件次第かな~。このルール破りは高くつくからね~♪」

 

 「本日、皆さんの部屋にお邪魔して一人ずつ話をさせて下さい」

 「私はいつでもOKだよー」

 「休日だし断る理由も無いわね」

 その他のメンバーも特に異論はないようだ。

 よし、エマが夕方に戻ってくるまでに何とか皆と話をつけてしまおう。


 「では、この朝食後にヴィンヴィンさん、その後にレイラちゃん、昼食をはさんでティアさん、ピーナさん、ローラさんの順でお願いします」

 こうして異世界最初の日曜日に俺と女冒険者たちの個人面談が決まった。

 


 「いつまで待たせるのよ」

 ツンドラ魔導師がリビングに立ちクレームを飛ばしてきた。

 えっ、ずっとここで待ってたのか?

 俺はついさっきまで玄関にいて教会へ奉仕に行くエマさんを見送っていた。

 いってらっしゃいのキスが長引いて数分も費やした。だが反省はしてない。

 

 「すみませんでした。待って頂いてるとは知らなかったので」

 「フン、まさか玄関でイチャつき始めるなんてこっちも知らなかったわ」

 「いや、何て言うか、その、勢いというか、流れで・・・」

 「有頂天になってるみたいだけどその蜜月状態がいつまで続くか見物だわ」

 「死がふたりを分かつまでに決まってます」

 思わず軽口を叩いてしまった。

 きっと激おこで罵倒されると思ったら青肌の女王様は逆に冷めた表情になった。

 そして真剣な顔で俺を憐れむように忠告してきた。


 「エマは優さしいだけの女じゃないわよ。後で本性を知って逃げ出さいことね」

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