0140 魔導師ヴィンヴィン物語
「私の名前は、ヴィンヴィン。呼ぶときは、さんを付けなさいよこのエロ助!」
ヴィンヴィン!
何というか上手く言えないけど、とにかく変わった名前だ。
それからエロ助ってのはどういうことかな?
エロいのはむしろお前の名前のほうだと思うぞ。
「ヴィンヴィンさん、なぜ僕をエロ助呼ばわりされるのでしょうか?」
「そうですわ! 謂れの無い侮辱はお婿殿に失礼ですわよ」
「エロ助ってどういう意味なんですか?」
「お婿様は変態だったということデスよ」
外野の横槍など意に介さずヴィンヴィンは俺を追求し始める。
「フン、私が気付いてないとでも思ってたのかしら?」
むむ、一体何を言おうとしてるんだこいつは。ま、まさか・・・
「チラチラと人の脚を見てるんじゃないわよ!」
バレてましたか。
いやだってそのスリット反則だもん。
腰のほうまで切れ目が入ってたらそりゃパンチラ狙うに決まってるでしょ。
ていうか、チラじゃなくて常時見えてますもん。横の部分が。
そんなん着るほうが卑怯だわ。ていうか、
嫌なら見せるな!
「綺麗だったのでついつい目が行ってしまいました」
「なっ・・・」
俺が誤魔化すと思ってたヴィーは、逆に認めたことで二の句が出なかったようだ。
「ヴィー良かったですネ。頑張って着飾った甲斐があったのデスよ」
「着飾ってるのはアンタでしょ!」
確かにローラのお姫様ドレスは突っ込みたくなるよな。初めてヴィーと共感したわ。
「コホン、もうその辺にしてヴィーは続きをお願いしますわ」
エマさんは浮気をゲロった俺をちょっと睨みながら進行を促した。ゴメンよ。パンチラハンターは男が持って生まれた属性なんだ。抗えないんだよ。
「もう面倒だからまとめて言うわよ。パーティでは魔導師を、家では主に魔力補充をしてるわ。以上よ。何か訊きたいことがあるかしら?」
分かっちゃいたがヴィーは全然やる気なしだな。
だが、逃げれば追いたくなるのが人情ってもんだろ。
「これはお見合いですから、年齢とスリーサイズは基本だと思います」
「パクられたのデス」
「ヴィーはお尻も腰も足も細いから良いよねー」
「因果応報ですわ」
しばらく黙っていたヴィーはどうやら俺の挑戦を真っ向から受けることにしたようだ。
「14歳、86・54・75」
淡々と数字を並べてそれが何なのと俺をねめつけている。
キュッと唇を引き結び眉根を寄せてキリッと睨みつけてくるその顔が、とてつもなく、どうしようもなく美しかった。
顔だけじゃない。身体の造形美も素晴らしいんだこれが。
レイラちゃんが言った通り、お尻の小さな女の子だ。
そのお尻から続くウエストのくびれがまた凄い。内臓どこ系だ。
手足も細くて長いだけでなく例えようもなく優雅だ。
それでいて乳だけは大きいがスタイルに違和感が出ないという神バランスだった。
さらにヴィーの体にはもう一つ、見る者を驚愕させる大きな特徴があった。
その肌だ。なんと肌が青白いのだ。
まるでガミラス星人のように青い。
いや、あれよりはもっと白が強い感じだ。
ともかく、このスレンダーボディに青白い肌だと病的な印象を受けそうなものだが、ヴィンヴィンにはむしろ生気の強さが感じられる。それもあくまで上品に。
レイラちゃんは躍動感のある動的な華麗さだが、ヴィンヴィンは美術館に飾ってある芸術作品のような静的な美麗さと言えるだろう。
その美貌が俺を捕らえて惑わせる。
これまでさんざん憎まれ口を叩かれ続けてきたが、どうしてもヴィンヴィンを憎み切れないし拒絶できない。
油断したらこの高慢な美少女に隷従したくなる誘惑にさえ駆られる。
それほどの引力を彼女は持っていた。
エマさんとのハッピーエンドを目指す俺にとって非常に危険な存在なのだ。
だからこそ、もっと彼女自身のことを知らなければならない。
彼女がこの婿取りに対し何を考えて何をしようとしているのかも。
という訳で様子見はもういい。直球勝負だ。
「ヴィンヴィンさん、この国では貴方の様な青い肌の人も多いのですか?」
「肌が青いのは北西の島国イースラントの民だけだわ。この国にいるのは私も含めて数人でしょうね」
そう言って二の腕の中程まで黒のアームドレスで覆われた手でグラスを掴みブランデーを口にする。
ふと気づいたが、これって青い肌を極力隠すための装いなのかな。
実際に上半身で肌が露出している部分は、顔とアームドレスから肩口までの狭い間だけだ。
つまり、自分の青い肌にコンプレックスか何かがあるのかもしれん。
そこが恐らく攻略の重要ポイントだ。記憶しておこう。
「なぜ故郷を離れてこの国へ来たのですか?」
「答えたくないわ」
そう言われると是が非でも知りたくなるじゃないか。
「僕には知られたくない事情があるということですね」
だが隠しくても無駄だぞ。
だってこの家には空気なんて読まない天然ミートちゃんがいるからな。
俺はローラと目を合わせると自分の皿の肉に視線を落としてからまたローラを見た。
それだけでローラは悟ったようだ。
「ヴィーは男漁りのためにこの国へ来たのデスよ」
「男漁りじゃないわ! 婿探しよ!」
チョロい。
ローラの挑発であっさりゲロりやがった。
しかし、何故わざわざこの国へ?
故郷で普通に婿を探せばいいじゃないか。
俺の疑問を敏感に察知した賢いエマさんが口を開いた。
「ヴィーの故郷イースラントは原因不明の災厄に襲われているのです」
ほぅ、エマさんが災厄とまで言うのだから大変なことだろうな。
「数十年ほど前から、男性が生まれなくなってしまったのですわ」
えっ!?
またとんでもない夢の島があったもんだ。
ドキッ、女だらけのパラダイスアイランド。ポロリもあるよ。
地球ならこんな感じで特番が組まれただろうな。
まぁ、実際にその島で生まれたヴィンヴィンにしてみれば災難でしかないか。
「それは大変ですね、」しかし、俺には解せない。この点はハッキリさせなくては。
「でも、ヴィンヴィンさんなら幾らでも婿になりたがる男がいるのでは?」
これだけの美貌を持っていながら何故こんな回りくどい婿取りレースに参加するのか。
それこそ、条件の良い男たちをより取り見取りだろうに。
俺は素で分からないという表情でヴィンヴィンの美しいを顔を見つめた。
やっぱり綺麗だよなぁ。
青白い肌を基調に唇には薄いピンクの口紅が彩を加え、両目には吸い込まれそうな漆黒の瞳が輝いている。それらを肌よりも青味の強いパステルブルーの長髪が額縁のように取り巻き美顔を飾っていた。
「フン、皮肉もそこまでいけば笑えるわね」
あらら、どうやらヴィンヴィンはこの国では男にモテないみたいだな。
普通に考えたら、やはりあの青い肌が敬遠される理由だと思われる。
心の傷をえぐるかもしれんが、ここは確認せざるを得ない。
「もしかしたら、この国では青い肌は好まれないのでしょうか?」
ヴィンヴィンにというより、この場の全員へ問いかけるように訊いてみた。
しかし、誰も答えようとしてくれない。
ヴィンヴィンは堂々と胸をそらして正面を見据えたままだ。
レイラちゃんは悲しそうな顔で目を伏せている。
ローラは俺からもらった肉を頬張るのに忙しい。
いつも嫌な役回りを受けてもらって申し訳ないけど、ここはエマさんお願いします。
「・・・ハイ、どうしても悪魔やゾンビを想像してしまうようです」
俺の懇願する視線を受けてエマさんが言いにくそうに答えてくれた。
しかし、悪魔にゾンビと来たかぁ。
そういえば地球でもゾンビは青っていうイメージだったわ。
地球よりも科学的には遅れているこの世界だと信仰や迷信が強く蔓延してそうだから、いくら超美少女のヴィンヴィンでも拒否反応が自然と出てしまうのかもな。
ホント勿体ない話だわ。
スレンダーより豊満ボディを好むこの俺ですらその魅力にクラクラしてるというのに、肌が青いというだけで外道扱いして忌み嫌うなんてな。
これはもう俺が一肌脱がすしかないだろ!
エマさんを正妻にして、ヴィンヴィンを愛人にすればいいんだよ。
ローラの愛人がOKなんだから別に構わないはずだ。
きっとこのツンドラ女をデレさせるまでが天使のシナリオの醍醐味だよな。
俺はそんな妄想をしながら無意識にヴィンヴィンの美貌を舐め回すように見続けていた。
「何を見てるのかしら?」
ハッ、しまった。またやっちまったか。
ヴィンヴィンが汚いものを見るよな目で俺を蔑んでいらっしゃる。
その顔がまた美し過ぎてゾクゾクしてしまう。あー罵倒されたい。
「エマに決めてるくせにどうして他の女にまで興味を持つのよ?」
仰る通りです。
俺のエマ愛は周知の事実だから他の嫁候補にしてみれば出来レースみたいで面白いわけがないよな。この点についてはヴィンヴィンの言うことは正論だ。
ただ、俺にも俺の言い分はある。
「僕は皆さん全員のことを可能な限り知り尽くすつもりです。そのうえでエマさんを選びたい。そういう思いです。それにそれがエマさんの意思でもありますから」
「くっ・・・」
今度はヴィーが唇を噛む番だった。
これまで散々エマさんに同じ思いをさせた報いということで甘受してくれ。
「フン、気に食わない女の相手までするなんて馬鹿な話だわ」
「誤解してるみたいなので言っておきますけど、僕はヴィンヴィンさんのこと決して嫌いではないですよ。むしろ女性としてとても魅力を感じています」
「な・・・く、口では何とでも言えるわ。私は年増女みたいに簡単に騙されないわよ」
「僕はヴィンヴィンさんと仲良くなりたいだけです」
「お生憎様、私は口だけの男なんて嫌いなのよ!」バンッ
失礼させてもらうわと言い、口を拭いたナプキンをテーブルに叩きつけ席を立ったヴィンヴィンは、いつもより若干足早にリビングへと去っていった。
「アレー様、本当に申し訳ありません。ヴィーには私から言っておきますので気を悪くならないで下さいませ」
「僕は全然気にしていませんよ。エマさんこそ気を遣いすぎて心労を溜め込まないように注意してくださいね」
そう言いながらエマさんの左手を取って両手で包み込む。
あぁ、スベスベして柔らかくて温かくて気持ちいいわー。スリスリモミモミ
「ヴィーは男慣れしてないだけなのデス。初めて口説かれて戸惑ってるだけですネ」
いや俺は別に口説いてたわけじゃないだろ。
「あ、それ分かります! 私もアレー様に口説かれてポーッてなりました」
うーん、この合法ロリさんも思い込みが激しいなぁ。
「・・・お盛んですこと」
あぁ、エマさんが左手を抜き去ってプイっと顔をそむけてしまわれた。
ふふふ、でもその拗ねた顔もとっても魅力的ですよ。早くペロペロしたい。
「アレー様、ワタクシたちは後片付けを始めますのでリビングでお待ちください」
まだちょっと不機嫌そうなエマさんの指示に素直に従う。
ヴィーはリビングにいなかった。自分の部屋に戻ったのだろう。
5分ぐらいソファーに座ってぼうっとしていたらダイニングのドアが開いた。
エマさんだ!
エマさんがお茶を淹れて持ってきてくれた。
それだけでもう心ウキウキワクワクなんだ。
エマさんはテーブルにティーセットを置くと俺の右隣りに座る。
ティーポットから紅茶を注いで、どうぞとティーカップを俺の前においてくれる。
そして自分のティーカップにも注いで紅茶に口をつけた。
砂糖は無いようだ。高価だから頻繁に使えないのか、ストレートで飲むのが普通なのか俺には分からない。訊けば済む話だけど今はもっとウフフな話がしたいじゃないか。
エマさんはさっき拗ねたことを後悔しているのか何もいわずに俺の出方を待っている。
よし、もう機嫌は直ったみたいだからどんどん攻めるぞー。
俺はずいっと座った体を右へ移動しエマさんとの距離をゼロにした。
一瞬硬くなったエマさんの体からフッと力が抜けて少しだけ俺によりかかる。
やった! ここまでは成功だ。さらに攻めよう。
「スリーサイズ、まだ胸しか教えてもらってないですよね?」
「え・・・もぉ、本当にエロ助さんですわ」
そう俺を戒める声に甘い響きがこもっていた。
「エロ助で構いませんからどうか教えてください。でないと気になって眠れません」
「もちろんお教えしますわ。ワタクシはもうアレー様に何も隠さないと決めましたから」
「嬉しいです」
「胸以外ですと、ウエストが60cmでお尻は86cmですわ」
スリーサイズ・コンプリート達成!
エマさんて乳だけが突出しているだけで他は普通にスタイル良いんだよなぁ。
腕だって割かしほっそりとしてるし。
それを確認するかのようにエマさんの左腕に右腕を回して腕を組んだ。
俺が右腕に力を込めると、エマさんもそれに応えるよう左腕に力を込めた。
あぁ、心が通じ合ってるのを感じる。
何だろうなぁこの高揚感は。
まるで心に羽が生えて空を飛んでるような気分だ。これがリア充ウイングか。
そんなフワフワ浮遊感とブランデーの酔いが混ぜ合わさってハイになった俺は、修道服のミニスカから伸びているエマさんの太ももを見て、つい調子に乗ってしまった。
「今日の下着は何色ですか?」ハァハァ
言って直ぐにやっちまったと後悔したがもう戻れないあの頃には。
だけどエマさんは何でも教えてくれるって言ったもんな。ワンチャンある。来い!
「ワインレッドですわ・・・」フゥ~
エマさんは俺の耳元に顔を寄せてそう囁き甘い吐息を吹きかける。
うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!
ヤバイヤバイヤバイ、この囁き攻撃は破壊力スゴイわ。
一発で俺の股間にクリティカルヒットした。
そんなわけで俺は一時撤退しないといけないんだ。
「エ、エマさん、トイレを貸してもらえないでしょうか?」
「こちらですわ」
俺の下半身事情を知ってか知らずか、エマさんは悠然と先に立ち歩いて行く。
俺は前かがみになりながら未来の嫁の後に続いた。
ダイニングとは反対になるリビング右手のドアを抜けると廊下の右側にいくつかのドアがあった。
先を歩くエマさんはその二つ目のドアの前で止まった。
「ここですわ。ワタクシはここで待っておりますので何か分からないことがあればお呼びになって下さい」
「ありがとうございます」とお礼を言って中へ入る。
やはりモッコリがバレてたのかなぁ。
何かあったら呼んで欲しいなんてまるで誘ってるみたいじゃないか。ムフ
いや、さすがにそれは妄想が過ぎるな。
とりあえず小便がしたいのは事実なので用を済ませてしまおう。
男性用の小便器はないようだ。
便座が六つほどそれぞれ仕切られた場所に設置されている。
その内の一つにズボンを下ろして座った。
カサカサカサ
ハッ、何かいる!!
まさかGか・・・この世界にも奴らがいるっていうのかよぉ。
もし本当にGが出てきたら悲鳴あげる自信があるわ。
いやマジで勘弁してくれ・・・
ササササササ
ひぃっ!
やっぱりいる。
でも下じゃない。上の方から聞こえてきた。
便座に腰を下ろしたまま恐る恐る上を見ると緑色の物体が目に映った。
何だアレ?
Gじゃない、もっと大きいし、ウネウネと動いてる。
ぶっちゃけキモイ。駄目だ逃げよう。
ボタッ!
ヒャー、落ちてきた、俺の目の前に落ちてきたぁぁああああああ!
これアレだ。
モンスターだ。
ドラクエとかで最初に出てくる奴だっ。
もう恥ずかしがってる場合じゃねぇ。悲鳴をあげないと。助けを呼ばないと。
戦闘力ゼロの俺は下手したら死ぬ。
げぇ、動いた! こっちに向かってくるぅぅぅぅぅ!
「ギャース! モモモ、モンスターが出たぁ! エマさん助けてーーー!!」




