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春人と一緒に、こちらへとやって来た2人のエルフ。
真祖・エルフだからなのか、髪の色や瞳の輝きと肌の色も段違いに綺麗で造形の美しさが際立っている。しかも、真祖・エルフは耳が細長いので、尖がっているようにも見える。
現代社会において、もっともポピュラーなエルフ像に近い。
アインスは高身長ですらりとした体形で、ドライは丸みのある凹凸がある体系である。亡くなっているツヴァイもドライと同じに見える。つまり、両手に花状態であったようだ。
もしかしたら、真祖・エルフは伊達ではなく、ここにエルフの国を作っていた可能性もあったのかもしれない。否、凶暴なエルフが居なくなった今、アインスとドライの2人で産めよ増やせよすれば、国を作れない事もないだろう。2人の生殖行為に対する考えは分からないが。
そんな薫の妄想を、春人の声がかき消した。
「兄貴、ちょっと頼めるか?」
珍しく眉を八の字に寄せた春人。薫は言葉の代わりに首肯して続きを促す。
「この死体……じゃなくて、ツヴァイの遺体を兄貴の空間収納でしばらく保管してくれ。兄貴のは時間が経過しねえんだったよな」
「うん、基本的には中の時間は止まっている。でも。保管してどうするんだ?」
薫に問われた春人は、アインスの方を見る。それに気付いたアインスは春人に頷くと、薫の前にやって来た。
近くで見ると、いっそうトウヘッドの長髪が実に美しい。顔の一つ一つのパーツも可笑しいくらいに整っている。耐性がなかったら魅了されていたかもしないが、現在の薫にとっては、綺麗だなくらいに思う程度である。
「ご助勢感謝いたします。私はアインスと申します。貴方がリーダーだとハルトから教わりました」
そういうと、アインスはにこりと笑んで右手を差し出してきた。握手を求めているようだ。
実に透明感のある耳に心地よい声で、流暢な日本語である。所作も滑らかで、どこか気品を感じる。さっきの話が事実ならば、生まれて2日でこのレベルはあり得ないだろと、薫は心の中でつっこむ。
薫はアインスの手を握り返して、男の手とは思えない柔らかさにちょっとだけ驚いたが、きちんと言葉をかける。
「春人の兄の如月薫だ。今回は僕がリーダーってだけだから、勘違いしないでね。それで、遺体を保管して欲しい理由は?」
薫はストレートに問う。
「私の仲間のドライには、精霊薬学というスキルがあります。そのレベルが上がれば、死者蘇生の秘薬を作れるかも知れません」
「へえー、死者蘇生とはすごいね。でも、確定ではなくて可能性なんだ」
「はい。しかし、その秘薬を作れたとして、ツヴァイの肉体が腐敗していれば秘薬の効果はありません。ですが、貴方なら死体を腐らせることなく保存できると、ハルトから聞きました」
「ふーん。言いたいことは理解したよ。それで、遺体の保管をすることで、僕に何かメリットはあるのかな?」
アインスは一瞬悲しそうな顔をしたが、元の顔に戻ると爆弾を投下した。
「ツヴァイが元に戻るまで、私を好きにしてくれて構いません」
「おいアインス、お前なに言ってんだよ」
「僕も男に興味はないからパスで」
「「キャーッ」」
後ろで春香と美玖が声を上げている。
「なっ。私は立派な女性だ。というか、エルフは全て女性しかいない」
は?
目の前のこいつが女性?
しかも、エルフは全て女性?
確かに髭の生えているエルフはいなかったと思う薫。
まな板率高すぎだろうと思う薫。
薫がちらりと春人を見ると、春人もとても驚いている。
「ごめん、ちょっと確認するからパンパンさせてね」
薫は、某龍玉コミックでみた女性の識別法で、アインスの股座をパンパンと叩いた。
「あっ、ああぁ……」
なぜか艶っぽい声を出すアインス。両手で顔を覆い隠してしまっている。
「薫くんっ、サイッテー」
なぜか春香にビンタをされた薫。だが、それだけでは済まなかった。武彦と美玖から拳骨を落とされ、春人から尻を蹴られた。全て痛くないはずだが、両親の拳骨は痛かったので、取り敢えず反省することにした薫。
アインスは、まだ顔を紅潮させてモジモジしていた。
「良い声だった。じゃなくて、これらが効力を発揮したらモンスターだから、願いは聞けない。これらは、モンスターにしか効果を及ぼせないけど、嵌めた者の言いなりになる魔道具なんだ。試してみる?」
薫は、[従魔の鈴]と[隷属の戒め]を取り出して、アインスへ見せて説明する。
「私たちがモンスターではないと証明されたら」
不安そうな声音で問いかけるアインス。ドライはアインスをじっと見ている。
「モンスターじゃないなら討伐はしないし、友人になれるかもね」
薫、断言はせずに曖昧な表現をして、言質を取られるのを避ける。意外と小狡い。
しかし、春人は納得いかない様である。
「せっかく助けたのに、ふざけんな! 兄貴だろうと、アインスたちを討伐なんてさせねーぞ」
「あと1体しか従魔を所持出来ないのにか?」
「くそっ」
「父さんたちは何かある?」
「父さんは特にないな。ここへついて来る条件を飲んだ時から、薫の判断に任せている」
「母さんも父さんと同じ意見よ」
「私も薫の判断に任せます」
薫は、先ほど全員から暴力を受けたことを忘れてはいないが、口に出すことは止めた。間違った時には、また叱られるのだろうと思う薫である。
両親たちの言葉を聞いた春人は、両拳を握りしめ力なく項垂れた。
自分たちを気遣う春人に勇気を得たのかは不明だが、アインスは薫の手にある[従魔の鈴]を指し示した。
アインスは、瞳を閉じて微かに体を震わせている。そんなアインスへ近づいた薫は、チョーカータイプの[従魔の鈴]を、アインスの首に嵌めようとしたが、嵌らなかった。
「うん、モンスターじゃないみたいだね。アインスたちは、この世界で初めてのエルフという人種だね。あっ、真祖・エルフだったね」
「よかったな、アインス。ドライもな」
「ああ、ありがとうハルト」
春人はアインスに抱擁し、次いでドライにも抱擁をした。アインスとドライの顔もどこかほっとしている。
「さてと。取り敢えずは、場所を変えてから改めて話をしようか」
春人とアインスとドライはきょとんとしていた。




