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世界にモンスターが出現し始めてから18日目。
本日3つ目のダンジョンコアの討伐を果たした春人たち一行は、[寛ぎの温泉宿・海]で休憩をとっていた。今までは、[安らぎのコテージ]内での休憩であったが、全員がレベル20となり初級到達者の称号を無事に獲得したお祝いに、1ランク上の豪勢な魔道具を使うことに決めた春人であった。
[安らぎのコテージ]は、食事は用意する必要があるものの、大変使い勝手が良い魔道具だと信じて疑わなかった6人。新人族であれば、SPさえあれば食料や料理なんかすぐに売買システムで購入可能だから、全く問題ではないからだ。
春人からの情報で、迷宮核の宝箱から低確率で出現すると聞かされて以来、いつか手に入れたいと思っていたのだ。これがあれば、不審者に室内外を荒らされる心配もなくなり、家族も安心して暮らせる場所が確保できるのだから。
だがしかし、これまで[安らぎのコテージ]で大満足していた6人は、[寛ぎの温泉宿・海]というものを知ってしまった。
とても綺麗で立派な建物は、建物内も当然立派であり室内の改装もできる上に、食事も選び放題頼み放題で無料。豪華でとても広い温泉施設があり、海辺には露天風呂もあって釣りや潮干狩りまで出来るのだ。
あれほど手に入れたいと思っていた[安らぎのコテージ]が、急に色褪せてしまったように思えた6人であった。否、6人の心には[安らぎのコテージ]への興味はすでに失せ、[寛ぎの温泉宿・海]への憧れが大半を占める事となった。
春人から[寛ぎの温泉宿]シリーズが3種類あるという情報と、迷宮核の宝箱(小+)から確率入手できることを聞き出した6人は、いつか手に入れると心に誓った。
海ではしゃいで、美味い食事と温泉で十分に英気を養った6人を連れて、再びダンジョンコアの討伐を再開した春人。残り3つのダンジョンコアの討伐を手早く済ませると、[安らぎのコテージ]へと移動した。[寛ぎの温泉宿・海]を期待していた6人は、ちょっとぴり残念な気持ちになるのであった。
今日は育成の最終日であるため、これから48個の迷宮核の宝箱(小)を全て開けていくのだ。
春人は、空間収納から48個全てを取り出し目の前に並べた。
「よーし、触れば勝手に開くからさっさと全部開けろ。欲しい物が被った場合は、ジャンケンな」
最初に宝箱に触れたのは、しおりであった。目の前にあったという事もあるが、春人が急げと言っているから気に入られたいしおりとしては、春人の言う通りに行動した結果であった。
宝箱が開き、中から神秘的な光が立ち昇った。もしも、効果的なBGMがあったならば、きっと感動したに違いない。しばらくすると光は消えてしまい、小瓶が入ったパックが残っていた。それは、[救急セット(中)]であった。内容は、HPMP回復ポーション(中)・飲める傷薬(中)・万病薬(中)が1本ずつ入った、ポーションの詰め合わせであった。
「おっ、単品じゃねえから小当たりだな。やるじゃねえかブクマ」
春人に褒められたしおりは、照れながらも次の宝箱を触る。宝箱の演出に気を取られていた5人も、春人の言葉で我に返ると宝箱へと触れていった。