その2
水助がカエルじいやの後へついて行くと、周りの景色がまた変わりました。そこは、水助がさっきまでいた大きな池の手前です。
「ぼうや、カエルがどのように飛び上がるかよく見てごらん」
カエルじいやにうながされるように、水助は池のハスに乗っているカエルの様子をじっとながめています。
「ゲロゲロッ! ゲロゲロッ!」
カエルたちは、自分たちを見ている人間の子どもの前でいいところを見せようとはりきっています。ハスの葉っぱの上で両手両足を合わせると、池の上をまたぐようにいきおいよく飛びはねました。
「わあっ! やっぱりカエルは本当にすごいなあ!」
葉っぱから葉っぱへ飛びうつるカエルの動きを見て、水助はカエルになりきりたいという思いをますます持つようになりました。
「はっはっは! ぼうやもカエルになりきりたいのかな?」
「うん! カエルみたいになりたい!」
「そうか! それじゃあ、最初はカエル飛びの練習をするかな」
水助は、カエルじいやの前で手を地面につけています。いつも池へ行ってはカエルを見ているだけに、カエルがどうやって動いているのかすぐに分かります。
「えいっ!」
かけ声を上げて飛び上がろうとした水助ですが、なかなかうまくいきません。すると、カエルじいやは水助にある言葉をかけました。
「ぼうや、カエルみたいに飛びたいと気にしていたらいつまでも飛べないぞ」
「えっ? どうしてなの?」
「カエルが、ハスの葉っぱに向かって飛びはねたりするのはごく自然なことじゃ。カエルのまねごとをしたいのは分かるけど、まずはその場で立って上へ飛ぶ練習から始めようか」
水助は、カエルじいやの言うことにしたがうことにしました。その場で立ちあがってから飛んでみると、さっきよりも高く飛び上がることができました。
「わあ~っ! これくらい飛べればだいじょうぶかな?」
「高く飛ばなくてもだいじょうぶじゃ。今度は、カエルみたいに飛べるかどうかじゃ」
水助は今度こそカエルになりきって両手を地面からはなすと、しゃがんだ様子から前に向かって飛びました。これを何回もくり返すうちに、水助のカエル飛びはすっかり身につけることができるようになりました。
「そうそう! その調子じゃ」
カエルじいやのはげましを受けながら、水助はカエル飛びを続けています。水助のがんばりに、カエルじいやはとっておきのごほうびをあげることにしました。
「暑い時だし、ここで一休みしようか」
水助の目の前には、カエルじいやが持ってきた大きなスイカがあります。大好きなスイカを手に取ると、水助は大きな口でかぶりつきながらおいしく食べています。
「ぼうや、スイカはおいしいかな?」
「うん! とってもおいしいよ!」
あまりの食べっぷりに、カエルじいやは水助の顔をやさしそうな目つきで見つめています。子どもにとっては遊ぶのと同様に、好ききらいしないで食べることも大切なことです。
木かげですわって一休みした水助は、大きな池に向かってカエル飛びをしようと立ち上がりました。でも、人間のすがたのままでカエル飛びをしたら、ハスの葉の上にいるカエルたちがびっくりしてしまいます。
カエルじいやは、そんな水助におまじないをかけることにしました。
「ぼうやよ、ぼうやよ、緑色の小さいカエルになっておくれ。緑色の小さいカエルになっておくれ」
おまじないをかけると、水助の体が白いけむりに包まれました。すると、水助は本物のカエルに変わりました。
「わあ~っ! 本物のカエルになったぞ!」
本物のカエルになった水助は、ピョンピョン飛び上がりながら喜びを表しています。水助は、カエルのすがたで池に向かって飛び上がりました。
「ちょっと! カエルになることができる時間は……」
大きな池へ向かって大ぼうけんに出かける水助に、カエルじいやの声が耳に入ることはありません。




