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STAR・BLAZES  作者: 水無月 明
第1章,星の精鋭達
21/21

アレンの過去

◎本日登場する敵:

☆宇宙海賊リヴァイアス

★提督ダロン

★大船長グラウス・ゴーン

★8番隊船長ミラード・ケトス


★各船長達(名前未定)

 数日前、ベルシエールの秘宝ハイ・ブライトンルビーが厳重な輸送船にてアルケミアに運ばれていた。

 異星の文化遺産を輸送する為、選りすぐりエリート軍人5000を軍最高の輸送船『トロイ』に乗船、さらにトロイの護衛にも50人乗りの最強クラスの宇宙戦艦『ハウンド』を30隻、そのハウンドの船内には宇宙戦闘用イーグルを3機づつ搭載した。

 この事はテレビやネットでも大々的に放送されたが、それは世間を欺く為の罠だった。

トロイには偽物のダミーを用意し、本物は民間人に扮装した軍人が惑星航行用シャトルを利用してアルケミアに届けると言う手筈になっていた。


 だがここで大きな誤算が起きた。

 民間人が使うシャトルには本格的な無重力戦闘を行う為の装備が搭載されていなかった。

 一応流星群などの岩を破壊するだけのレーザー砲は搭載されているが、それでも本格的な戦艦には叶わなかった。

 アルケミアまであと少しと言うところでシャトルは宇宙海賊リヴァイアスに襲われてしまい、大半の民間人は脱出ポットで脱出はしたものの、何人かは間に合わず宇宙の塵となった。

 ハイ・ブライビトンルビーを持っていた軍人もその内の1人で、宇宙空間にカプセルを放り投げる事には成功したが、シャトルと運命を共にしたのだった。


 ソルドリードの町から沖合100キロの地点に小さな離れ小島があった。

 普段は訪れる者すらいないこの小さな島の森の中では夜にも関わらず、宇宙海賊リヴァイアスの海賊船『ハイドーラ号』の修理が行われていた。

 民間シャトルが襲われた時にスタッフがアルケミアの衛星軌道上に造られたアルケミア軍宇宙警備コロニーに救援を求め、駆け付けた艦隊によりハイドーラ号を攻撃した。

 勿論ハイドーラ号も応戦したが数には勝てずアルケミアに逃げ延びたのだった。

 そして偶然にも身を隠すのに丁度良い小島を発見したリヴァイアスは森の中に不時着して破壊された船の修理をしていたのだった。


 その船内の一室、ここはリヴァイアスの幹部である船長ミラードの部屋だった。

 ただ船長室ではあれど私室では無い、正しくは船長専用の仕事部屋だった。

 窓は無いが豪華な内装で、天井の中央に取り付けられた空調用のプロペラが回り、その四隅には照明が取り付けられていて室内を照らし、床には真っ赤な絨毯、その上には黒い皮ので造られたソファーが置かれていた。

 しかしミラードはソファーに腰をかけておらず、壁一面に取り付けられた巨大なモニターに向かって土下座をしていた。

 そのモニター画面は黒いラインで縦に3等分に区切られ、その内左右の2面には横に黒いラインが2本敷かれて3つの小さな画面になっており、その区切られた画面には1人づつ『ある人物達』が映っていた。

 彼らはリヴァイアスの幹部達だった。

 リヴァイアスは1つの本体と1~8の部隊に分けられている、本体以外の部隊にはそれぞれ一隻づつハイド―ラ号が与えられ、幹部達はその船の船長として指揮を執っているのだった。

 ミラードは画面に映る船長…… 特に中央の男に向かって謝った。

「すまねぇ、大船長かしら!! 折角のお宝を逃がしちまった! おまけに大切な海賊船を…… 本当にすまねぇ!!」

 ミラードは深々と謝罪をする。

 すると小さな画面に映る各船長達が次々に口を開いた。

『ったく、何やってんだ。情けねぇ……』

『まぁまぁ、船長ったって所詮新人だろ、一回くらい多めに見てやろうじゃないか』

『そうはいかねぇだろ、お宝はともかく、大事な船も傷つけられたんだ。オレ達の顔に泥を塗ったんだぞ!』

『本当、船長解任したら?』

『恥を知れ恥を!』

『………』

(ぐっ)

 言いたい放題の船長(1人例外)達に対して顔を顰めながら両手の指を折り曲げて拳をワナワナと震わせた。

 リヴァイアスは基本実力主義だが、部隊のナンバーには大した意味は無い、1番船の船長だからと言って1番隊が最強と言う訳ではないが8番隊だけは別だった。

 8番隊は新入り達だけが入り、結果によって他の部隊に配属となる、それは船長も例外では無く敗北すれば制裁が加えられて別の者が船長として入れ替わるのだった。


 するとその時、中央の大きな画面に映っている男が言って来た。

 オールバックの長い金髪を項で縛って前髪は左右に分け、岩の様に厳つい顔の右頬には大きな刀傷、上半身は白いYシャツ、下半身は迷彩柄のズボン、膝から下は黒いブーツを履き、肩から上から金の肩章が取り付けられた灰色のコートを羽織った男が言って来た。

彼は各船長達を束ねるリヴァイアスのナンバー2、大船長『グラウス・ゴーン』だった。

『お前等黙れ! お前等だって似たようなモンだっただろ』

『はぁ? ちょ、大船長! 同じにしないでくださいよ!』

『そうっスよ、俺だってここまで酷くなかったぜ!』

『いや、大して変わらない…… 大体船の破壊なら『あいつ』の方が酷ぇだろ』

『そ、そりゃ、そうですが……』

『……大船長かしら提督ボスを出すのは反則ですぜ!』

 その言葉に船長達は顔を顰めながら頷いた。

 現在この場に『提督』と呼ばれる者はいなかった。

 提督はリヴァイアスのトップの存在なのにも関わらず極度に面倒事を嫌い、船長会議はおろか面倒事は全て押し付けられていた。

 そんな提督と我の強い船長達の板挟みになったグラウスはいつも頭を痛めていた。

 するとグラウスがため息を零しながら言って来た。

『連合軍がとてつもないお宝を運んでるって話は聞いていたが…… まさかあのシャトルが本物を運んでやがったとはな』

 グラウスは言った。

 実はミラードの部隊がシャトルを襲ったのはただの偶然だった。

 フロスト・シャークスを襲撃した後、ミラード達には本隊への帰還命令が出た。

 しかしその最中にハイドーラ号の航海士チームが航行中の民間シャトルを発見し、ディープマンズ達がシャトルを襲いたいと言い出して来た。

 本隊からの命令が出た以上、余計な事をする訳には行かないと言い聞かせるのが船長の務めだったが、あろう事かミラード達は命令を無視してシャトルを襲ったのだった。

 

 そして襲撃の際、民間人に扮した軍人がカプセルを外に排出している所を目撃したディープマンズが軍人を捕らえ、ミラードの前に突き出して尋問を始めた。

 軍人の方はまさか自分が狙われていた事を知らずにハイ・ブライトンルビーを輸送していた事をミラード達にあっさり話してしまったのだった。

 とんでもない宝物を逃がしてしまったと思い込んだミラード達は軍人を殺害し、ハイ・ブライトンルビーを回収に乗り出そうとした。

 だがそこへアルケミア宇宙警備隊が駆けつけ、止む無く逃走したのだった。

 するとミラードが言って来た。

「クッ、名誉挽回だ! 大船長かしら、このままじゃオレは引っ込みがつかねぇ!」

『名誉挽回って…… おいおい、どうするつもりだ?』

「逃がしたお宝を回収する、そうでなきゃオレの気も収まらねぇ!」

『余計な事をするな、連合軍が本気になったらオレ達はひとたまりもねぇんだぞ…… 』

『面白れぇじゃねぇか』

「なっ!?」

『『『『『『ボ、提督ボスッ!!!』』』』』』

 突然グラウスの横から1人の男が現れ、ミラード以下船長達は驚いた。

 年は30代~40代だろう、グラウスやミラードと同じくらい、2~3メートルくらいの身長だろう、黒い髪に褐色の肌、獣の様に鋭い2つの目、鍛え抜かれた肉体の上から黒いシャツと深緑色のズボンを黒いベルトで固定し、肩から下は背中にリヴァイアスの紋章が刺繍された金の肩章の黒いロングコートを羽織っていた。

 彼がこのリヴァイアスをまとめる総元締め、提督『ダロン』だった。

 ダロンは右手の持った酒瓶に口を付け、首を上にあげると酒瓶の中身を一気に喉に流し込んだ。

 するとグラウスは目を細めると呆れた感じで言って来た。

『どういう風の吹きまわしだ? 酒飲んで寝てたんじゃねぇのか?』

『ああ? 提督のオレが来ちゃいけねぇって決まりでもあんのか? お前いつからそんなに偉くなったんだよ』

『テメェの責だろ! いつもいつも面倒だってすっぽかしてんのはどこのどいつだ?』

『チッ!』

 皮肉と皮肉のぶつかり合い、最終的に口喧嘩に負けたダロンは舌打ちをした。

 するとダロンは画面の方を見ると船長達はその鋭い視線に驚いて両肩をビク付かせた。

 それはミラードも同じで、ダロンはそんなミラードに声をかけた。

『おい、ミラード』

「へい!」

『お前のその心意気に免じてもう一度だけチャンスをくれてやる、だが一度口に出した言葉を引っ込める事はできねぇ…… 次しくじった時はどうなるか覚えて置け!』

『へ、へい!』

 ミラードが頭を深々と下げた。

 途端画面の映像が真っ暗になった。

 だが会議自体が終わった訳では無く、自分ミラードが会議から外されただけに過ぎなかった。

「チッ、何で提督が出てくるんだよ……」

 ミラードが立ち上がると顔が汗びっしょりになっていた。

 確かに名誉挽回とは言ったが本気だったわけでは無い、そう言っておけば自分の評価がこれ以上落ちないと思ったからだった。

 自分は船長とは言え末席も同然、いつ船長の立場を剥奪されてもおかしくは無いのだが、ダロンが出てきた時点でそれは最悪な方向へと変わってしまった。

 ダロンはグラウスと違い話が通じない…… 下手をすれば船長剥奪どころか命すら危うかった。

 ミラードはそのまま船長室の机の上にある無線を手に取るとディープマンズ達に招集をかけた。

「テメェ等、船長命令だ! 今から30分以内に広間に集まれ!」

 

 ソルドリードの朝は早い。

 まだ暗い内から男達は船に乗って海に出て、女達はそんな男達の為に弁当をこさえなければならなかった。

 今の季節は秋ゆえにまだ良い、気温も丁度良いし波も穏やか、これから寒さの厳しい冬になれば凍てつく風が吹き荒れ、波もあれる…… 勿論冬の海でしか獲れない魚もいるが漁師達にとっては厳しい物となる。

 しかしそんなソルドリードの町はとある事件が起こっていた。

 その事件にスター・ブレイズ達は巻き込まれる事になった。

「あああああああああぁぁぁーーーーーっ!!!」

 彼女に関しては珍しい、ルイスの大声が荒波の鯱亭に響いた。

 アレン達が駆けつけるとルイスがパニックになって自分とアイファが泊まった部屋を引っ搔き回していた。

 押し入れやクローゼット、まして畳を引き接がそうとしていた。

 そんなルイスをアイファは顔を顰めながら茫然と見ているだけだった。

「……アイファ、これは一体???」

「あっ! 隊ちょ~っ! ルイスを止めてぇぇ~~っ!」

 状況が読めないアレンがアイファにアイファに尋ねた。

 何と自分達が寝ている間にルイスの荷物から財布が消えていたと言うのだった。

 ルイスの財布の中には活動用にマーカーから預かった全財産が入っていたのだが、それが一夜にして消えていたのだった。

 事情を聞いたユウトも焦りながら言って来た。

「マジかよ、どうすんだよ!?」

「貴女達一体何してたんですの? それでも軍人ですの?」

 リリーナも言って来た。

 敵は起きている時だけ来るとは限らないからだ。

 軍人は眠っている時の襲撃に備えて気配を鋭くする訓練もされている、勿論それはスター・ブレイズも例外では無かった。

 しかしそんな彼らが気配を感じられないのは相当な事だった。

 アレンはアイファに尋ねた。

「アイファ、君も何も感じなかったのか?」

「何も感じなかった」

 アイファは首を横に振った。

 アイファは悪人の氣に鋭い、もし泥棒が部屋に入れば真っ先に気づくはず、そのアイファが気づかないのは異常だった。

 アレンは頭を掻きまわしながら呟いた。

「参ったな、これから『任務』があるのに……」

「隊長、そんな呑気な事言ってる場合かよ?」

「任務もそうだけど、宿泊費が払えないのも問題」

 ユウトとサリーが言って来た。

 昨日マーカーから通達された任務は、紛失したハイ・ブライトンルビーの探索だった。

 スター・ブレイズにしては責任重大な任務が与えられた事に驚いていたが、それでも皆珍しくやる気に満ちていた。

 その矢先にこれだった。

 

 だが無くなってしまった物は仕方がない、こうなった場合は誰かがフェニックスまで取りに行くしかなかった。

 バッファローは2台ある、誰かが急いでいけば夕暮れまでには間に合うだろう。

 それまでは自分達が捜査を進めて置けば良いだけの話だが、それでも店側の許可は必要だった。

 アレンは説明しに食堂の方へ向かった。


 荒波の鯱亭の開店は午前11時からとなっている。

 よって今の時間は店主が仕入れに行っていて、厨房では女将が掃除をしていた。

 その女将に先ほどまでの出来事を説明し、支払いを待ってもらう様に頼んだ。

 すると……

「ええっ? アンタ達もやられたのかい?」

「アンタ達…… も!?」

 女将の言葉に皆が顔を見合わせた。

 女将の言葉はアレン達以外にも被害者がいる事になる。


 女将の話では何でも最近この辺りで空き巣が多発していると言うのだった。

 幸い老人の眼鏡や手鏡などの小物なのだが、それでもかなりの家が被害にあっていた。

 最初はどこかに落とした物かと思われていたが、締め切ったはずの扉が開いていたり、テーブルに置いていたカバンが床に落ちて中身が散乱していた事から駐屯軍から空き巣と判断された。

 ちなみに駐屯軍はこのソルドリードの隣町にあり、アレンは事件解決に協力すると交渉した。

 駐屯軍も快く引き受けてくれてデータを送信してくれた。

「……結構な家が被害にあってるな」

 アレンはライセンス・ギアに送信されたデータを見ていた。

 何と被害にあった家は20件以上もあった。

 しかも犯行時間はかなり曖昧で、誰しもが寝静まった深夜帯から、仕事中に少し目を離した隙に盗まれたと言う場合もある。

 町の人間達も皆注意はしている物の、いつの間にか物が無くなっているので注意の仕様が無かった。

 現在アレン達は2手に分かれながら任務を行っていた。

「……相手はただの窃盗犯じゃないかもな」

「隊長! 隊長!」

「そうなるとやっぱり透明化の魔法でも使ってるとか…… でもだったら金目の物を狙うはず」

「隊長ッ!!!」

「ん? 何だ?」

「何だじゃねぇだろ! 空き巣のデータなんて調べてどうすんだよッ!?」

 ユウトが叫ぶ。

 現在アレンはユウト・ジン・リリーナと共に探索に当たっていた。

 確かに重要な仕事ゆえにユウト達も張り切っていたが、そこへ空き巣の捜査も同時に行う事になったのでやる気が下がってしまった。

 ジンは元々興味が無かったのでそれはリリーナも同じだった。

「そうですわよ、一体何の関係があるんですの?」

「可能性が1つでもあるなら、調べるのは当然だろ」

 アレンはこの町で多発している空き巣事件と、ハイ・ブライトンルビーの紛失事件を同時に考えていた。

 勿論可能性の1つでしかないが、その空き巣犯がハイ・ブライトンルビーを発見して持ち去った場合を想定していたのだった。

 ハイ・ブライトンルビーはネットやテレビなどで大々的に放送されていたが、紛失した事は知らされていなかった。

 事実を知らない人間なら大きめの宝石と思うだろう、100歩譲ってハイ・ブライトンルビーと思ったとしても迂闊に街に行く事はできない、現在ネビュラネットが連合軍により厳しくチェックされ、この地域に存在する宝石店や古美術店にも宝石を売りに来た人間達を厳しく監視していた。

 いずれにしろまだこの町のどこかにある可能性は高い、あれだけ大きな宝石を売りに出せばすぐに足が付く、現在そういった情報は入ってなかった。

「まぁ、絶対って言いきれないのが辛い所だな」

 アレンはため息を零した。

 確かにこの世の中に絶対はない、今までも人間が怪獣化したり、死んだはずの人間が蘇って自分達に襲い掛かった。

 まして宇宙は広い、常識で考えるのは止めるべきだった。

 

 アレン達は例の現場までやって来た。

 手がかりが殆どない以上は現場に戻ってくるのも方法の1つだった。

 昨日と違い、浜辺には数人の子供達が遊んでいた。

 子供達は海に向かって石を投げたり、犬と駆け回っ足りと遊びは様々だが、皆笑顔で遊んでいた。

 するとユウトがその光景を見ながら言って来た。

「子供は良いよな、何も考えずに気楽でよ……」

「そうか? 子供は子供で大変だと思うぞ、な、ジン?」

「………」

 ジンは難しそうな顔をして顔を背けた。

 ジンは悲惨な少年時代を送って来た事を思い出した。

 するとリリーナが訪ねて来た。

「そう言えばずっと気になってたんですけど…… アレン様はどのような子供時代をお過ごしになりましたの?」

「え、オレ?」

「ルイスとは幼馴染と聞きましたけど、今の義父様に引き取られてからは聞いておりませんでしたので」

「そうだったか? ……と言っても取り分けて言うような事じゃないぞ」

「そうですの? きっとアレン様の事ですから、少年時代も聡明だったんでしょうね」

 リリーナは両手を握りしめながら首を横に傾げた。

 リリーナの言っている事はただの妄想だが、アレンは彼女が思っているような少年時代を送ってはいなかった。

 すると目を輝かせて近づくリリーナにアレンは顔を引きつらせていると、その間にジンが腕を伸ばして割って入った。

「よせ、困ってるだろ」

「ジン」

「はぁ? 何ですの? 貴方には関係ないでしょう!?」

「………」

 ジンは再び口を紡いだ。

 するとアレンが思いついた。

「そ、そうだ。子供達なら何か知ってないかな?」

 アレンはそう言うと子供達の方に向かって言った。

 様子がおかしいと思ったユウトとリリーナは顔を見合わせた。


 アレン達は子供達に呼びかけて自分の傍に集めた。

 皆10代と言った所だろう、いつもは町はずれの学校に通っているのだが、今日からしばらく連休だったと言う。

 アレンは膝を曲げると子供達と同じ目線になって訪ねた。

「君達、いくつか聞きたい事があるんだけど…… 3~4日前にここで遊ばなかったか?」

 すると子供達は顔を見合わせると首を横に振った。

 その日は大雨だが学校に行っていて、帰ってからも家にずっといたので知らないと言う。

 翌日は学校が休みでずっとこの浜辺で遊んでいたのだが、特に変わった事が無かったと言う。

 するとリリーナが顔を曇らせながら子供達に言って来た。

「本当ですの? 嘘を付いていると承知しませんわよ」

「よせ、リリーナ、この子達は知らないって言ってるんだぞ」

「そんなの分かりませんわよ、大体子供なんて直ぐ噓を付くでしょう、とても信じられませんわ」

 リリーナは両手を上げながら一方的に信じていなかった。

 するとその時だった。

「何だよオバさん! ボク達ウソついてないよ!」

「オバさん酷いよ!」

「オバさんこそ目ぇ腐ってんじゃないの?」

 嘘つき呼ばわりされた子供達はリリーナに向かって怒った。

 まだ21才と言うにも関わらず『オバさん』呼ばわりされたリリーナは長くて細い金の眉をヒクつかせた。

 次第に白い眉間に皴を寄せたリリーナはワナワナと震えだし、目を吊り上げながら子供達を怒鳴りつけた。

「だ、誰がオバさんですのっ!? 年上に大しての口の利き方が全くなってませんわ! これだから田舎は嫌いですのよ、躾って物がまるでなってませんわね!!!」

「何が田舎だよ! バカにすんな!」

「そうだ! オバさんが悪いんじゃないか!」

「そっちこそ躾がなってないじゃない、人に物を頼む態度じゃないじゃなわよ!」

「大人がそんなんだから子供がダメになるんだよ!」

「オバさんのバカ~っ!!!」

 子供達は言いたい放題だった。

 

 子供は加減を知らなかった。

 言葉のナイフは時に人の心を深くえぐってしまう、原因がリリーナにあるとは言え、子供は思った事をすぐに言ってしまう。

 だがいくら大人と言えども我慢の限界はある、怒り狂ったリリーナは子供達に食って掛かろうと一歩踏み出した。

 まずいと思ったアレンはリリーナを背後から羽交い絞めにした。

「よ、止せリリーナ! 落ち着け!」

「放してくださいアレン様! この悪ガキ供に礼儀と言う物を教えてやりますわ!」

 アレンの言う事を聞かずにリリーナは身を揺すって暴れ出した。

 アレンは子供達に向かって苦笑しながらリリーナを連れて行った。

「ゴ、ゴメンな皆、オレ達用事を思い出したから、何か思い出したら教えてくれ! 2人も行こう!」

「えっ、隊長!?」

「………」

 ユウトは呆気にとられながら、ジンは何も言わずにアレン達の後を追いかけて行った。


 アレン達は大急ぎで崖を登り、灯台の傍までやってくるとリリーナを放した。

 全速力で走って来た為にアレン達は激しく息切れをしたが、解放されたリリーナは未だ怒りが収まらなかった。

 まるで雷が落ちたかのようにリリーナの怒号が響いた。

「アレン様っ!!!」

「は はい!?」

 アレンは思わず敬語になった。

 するとリリーナは両手を伸ばしてアレンの胸倉をつかみ上げた。

 漫画のヒロインが絶対になってはいけない顔になったリリーナは夜叉の様に髪を振り乱しながらアレンに迫った。

 そしてリリーナの背後には怒りの炎が噴き出しているように見えた。

 後ろにいたユウトはおろかジンさえも今のリリーナを見て慄いていた。

「一体全体どう言うつもりですの!? アレン様は私と言う婚約者フィアンセが胃ながらあんな悪ガキ供の味方をするんですか!?」

「い、いや、フィアンセってね……」

「どうなんですのっ!?」

「ひぃ!!」

 アレンは言葉を飲み込んだ。

 今のアレンにはリリーナが悪鬼羅刹、地獄の悪魔としか見えていなかった。

 するとユウトが恐る恐る左手を上げながら訪ねて来た。

「あ、あの~、隊長? 少しよろしいでしょうか?」

「何ですのっ!?」

 隊長でもないのにリリーナが答えた。

 しかし彼女が振り向いた際にユウトの背筋に悪寒が走って全身が震えた。

 まさに蛇に睨まれた蛙だった。

 話を邪魔されて怒りの矛先を代えたリリーナに向かってユウトは恐る恐る喋った。

「い、いや、俺…… じゃない、私がお話があると言うのは隊長の方でございます。任務の事もありますので、どうかその御手を御放し願えないでしょうか?」

 ユウトはすっかり下手になってしまった。

 すると頭に上った血が落ち着いてきたリリーナはアレンから手を放した。

 解放されたアレンは胸を撫で下ろした。

 ユウトも安堵のため息を零すと、一間置いてアレンに言って来た。

「なぁ、隊長、リリーナ……様の言う事も最もだぜ、あのガキどもがてる可能性もあるんだぜ?」

「ああ、嘘をついてるよ」

「「はああっ?」」

「………」

 アレンの言葉にユウトとリリーナは驚いて声を上げた。

 ジンも驚きはしている物のそれほどと言う訳では無く、それどころか当然だと言った感じでアレンを見ていた。

 考えて見れば当然の事、アレンは第一印象で人を信じてはいない、つまり思い込みや常識に囚われずに客観的に物を見定める事ができるのだった。

そんなアレンは切り出した様に言って来た。

「分かった事は2つある、1つはあの子達はカプセルを知ってる、そしてもう1つが『盗んでない』って事だ」

「はぁ? 知ってるけど、盗んで無い???」

「つまり、犯人は別にいて、その犯人の居場所を知ってるって言うんですの?」

「ああ、恐らく庇ってるんだろうな」

「じゃあ尚更ですわ! 力づくで聞き出して来ますわ!」

「止めろ! リリーナ!」

「どうしてですの?」

「そうだぜ、俺達は命令できてるんだ。しかも軍と政府の信用に関わるんだぜ」

「事を荒げる必要は無いって言ってるんだ。直に分かる」

 アレンは言った。

 

 その夜。

 荒波の鯱亭のアレン達の部屋ではスター・ブレイズ隊全員が集まり、人数分の飲み物と茶菓子が用意され、今日1日の出来事について話をしていた。

 まずは店で手伝いをしていたルイス組からだった。

 ルイス・サリー・アイファもただ店で働いていただけではない、食事をしに来店した客にそれとなく4日前の事を聞いてみたのだった。

 しかし結果はアレンが聞いた事と同じ内容だった。

 漁師達は皆雨で漁に出れず、家で道具の手入れか寝ているかのどちらかだったと言う。

「私達からはそんな所です」

「でも私達誉められたよね~、若い娘がいると華があるねって~」

「賄いも凄く美味しかった。私、軍止めたらここで働く、女将さんに言われた」

 アイファは顔を赤くなった両頬を抑えて体をくねらせ、サリーは握った右拳の親指を突き立てた。

 何でも店の手伝いをしていると客達がアイファ達をべた褒めしていたと言う。

 ソルドリードは40代でも若者と言われるような田舎町ゆえ、若者は都会に憧れて出て行ってしまうと言う。

 ゆえに若い娘が殆どおらず、大衆食堂では大人気だったと言う、よって仕事が休みで昼間からビールを飲んでいた男達が酒臭い息でルイス達をナンパしたと言う。

「はぁ、自業自得とは言え本当に最悪でした」

「でもお客さん達喜んで沢山おかわりしてくれたじゃん」

「女将さん達も喜んでくれた。昨日と今日の宿泊代これでチャラで良いって」

「そ、そうなのか…… まぁ、ほとんどこっちと同じか」

「同じではありませんわ! 何で庶民や小娘がチヤホヤされて私だけが……」

 リリーナは不貞腐れながら菓子を頬張り、紅茶を飲んだ。

 やけ食いをしているリリーナが尋常ではない事を察したルイスはアレンに尋ねた。

「何があったの?」

「……実は」

 アレンは言おうかどうか迷った。

 しかし報告は報告、義務を怠る訳にもいかなかった。


 アレンは子供達と話し合った事を話した。

 すると……

「あははははははははっ!」

 案の定と言うべきか、アイファが腹を抱えて笑い出した。

 けたたましく響く笑い声にリリーナは忌々しく顔を顰めながらティーカップを持つ手を震わせた。

 アイファは笑い過ぎて涙が出て来た下瞼を指で拭いながら言って来た。

「子供は正直だね~、ホントの事しかいわないんだからね~っ!」

「小娘~っ!!!」

 リリーナはカップを乱暴に置くとアイファに向かって掌を広げた。

 勿論そこをアレンが止めたが、今回はルイスも両サイドからリリーナの腕をつかんで彼女を制した。

 するとアレンはため息を零しながら言って来た。

「今日はこれで解散しよう、明日は各自待機、何をしようと自由、ただ子供達には一切手を出さないでくれ、オレが何とかするよ」

「えっ? 隊長?」

「仮にハイ・ブライトンルビーが見つからなくてもその時はその時だ。君達に何かある訳じゃない」

 アレンはそれだけ言うと仲間達に背を向けて部屋を出て行った。

 

 しばらくルイスとアイファの部屋に沈黙が走った。

 明日も同じ事をするのは(リリーナ以外)良いだろう、しかしアレンの言葉が気がかりだった。

 ルイス達はアレンが出て行った扉をしばらく呆けるように見ていたが、やがてユウトがその場に胡坐をかいて座ると頭を掻き毟りながら言って来た。

「……隊長、何だか様子がおかしくねぇか?」

 ユウトの言葉に隊員達は顔を見合わせた。

 確かに今回のアレンはどこかしら妙な所がある。

 すると他の者達もその場に座りながら言って来た。

「確かに変、いつもの隊長らしくない」

「まさか、どこかお体でも悪いのでしょうか? そうに決まってますわ!」

「ねぇ、ルイス、ルイスは何か知らない? 幼馴染でしょ?」

 アイファはルイスに尋ねた。

 幼馴染だからとて何でも知っている訳ではない、だが心辺りが無い訳では無かった。

 皆もルイスに注目するが、ルイスも話して良い物かどうか迷っていた。

 何しろこれは個人情報だ。

 個人情報の流出は犯罪になりうる…… だが隊の士気や現状の維持をするのも副隊長の務めだった。


 ルイスは知っている事を話す事にした。

 それは今回の任務が銀星系連合軍のトップ、創星会に関わる事をだった。

 ルイスは自分のライセンス・ギアを手に取ると画面に指を滑らせた。

「皆、この人を知ってる?」

 ルイスはライセンス・ギアの画面を見せた。

 そこに映っていたのはとても穏やかで身なりの良い、年は50代~60代の男が演説している写真だった。

 かなり身分の高い人間だろう、白髪交じりの茶髪のオールバック、少し瘦せこけた頬、白いスーツと赤いネクタイを首に巻いた細身だが姿勢の良い老紳士だった。

 皆がこの紳士を見ると目を丸くして息を飲んだ。

 様子からして戦いしか興味のないジンでも知っているようだったが、そんな中でアイファだけが首をかしげながら訪ねて来た。

「この人…… 誰?」

「貴女! どこまで無知なんですの? 創星会の『ディアス・クラウン』様ですわよ!?」

「ディアス氏って言ったら有名だ。知らねぇ方がおかしいだろ」

「うっさいな~……」

 アイファは首を肩に引っ込めながら顔を顰めて吐き捨てた。

 アイファの部屋にもテレビはあるが、アイファにとってテレビはアニメを視てゲームをする為の物でしかなく、ニュースのメディアなどはあまり視る事がなかった。

 ディアス・クラウンとは創星会のメンバーで、2人いる副議長の1人だった。

 彼は人種・出身・身分・生い立ちなどに偏見を持っておらず、どのような人間にも公平に接する人格者として知られ、極悪非道なテロリストでも彼の説得で改心して社会復帰、または軍に入った者もいる。

 また恵まれない子供達に多額の資金援助をしている事で慈善家としても有名だった。

 だがサリーが言って来た。

「理解できない、ディアス氏の事は私も知ってる、でも今回の事と何の関係がある?」

「あるわ、何しろこの人は隊長の……」

「父親か?」

 珍しくジンが口を開いた。

 その言葉に周囲の者達はジンに注目した。

 しばらく体が凍り付いたかのように固まっていた仲間達だったが、やがてルイスが言って来た。

「ジン、あなた……」

「教えてくれたんだ。自分の過去もな……」

 ジンはメサイアの事件の時に聞いた事を話した。

 あの時は『軍でも有名な人』と聞いていて養父の名前は言わなかった。

 しかし幼馴染のルイスの言葉に大体の察しがついた。

 今回の件が公になれば創星会、すなわちディアスにもかなりの負担がかかる、それは間違いなかった。

 子供達をかばった事にしても、恐らく子供時代の事が影響しているのだろうと推測した。

 するとルイスが顔を顰めながら言って来た。

「……その通りよ、大体あってる、手紙に書いてあったのよ」

 ルイスは説明した。

 アレンはディアスに引き取られ、最初は豪邸に住み、養母も含めた使用人、さらには転校した名門の私立学校でもクラスメイトや教師達も皆優しくしてくれると手紙が送られてきた。

 しかし時が経つに連れて不満を書くようになった。

 確かに生活は裕福で恵まれるようになったが、その為か周囲の人間関係に心が折れそうになっているとの事だった。

 ディアスは気にはしていない様子だったが、義母からは成績で常に満点を取れと言われて学校以外でも家庭教師を付けられて毎日毎日勉強漬けの日々、さらにクラスメイト達も自分がディアスの子供だからと言う事で仲よくしようとしたり、学校側も自分への御機嫌取りをしていたと言う。

 だが自分の実家とアレンが住んでいるディアスの屋敷はかなり遠く離れている、ルイスはアレンとの文通の時間を大事にしつづけ、アレンを励まし続けたのだった。

 文通はお互いが中学を卒業するまでアレンもかなり無理はしているようだったが、大分救われたようだった。

 それを聞いた仲間達は言葉を紡いだ。

「多分隊長、義父様の事が気がかりなんだと思う」

「隊長にそんな過去が……」

「だから様子がおかしかったのかよ、って言うか何で俺達に話さなかったんだよ?」

「無理よ、ディアス様との関係は個人的な物だし、何より任務とは無関係だから」

「それでもアレン様のお義父様なのでしょう? 何とかしてあげませんと…… 明日、何が何でもあの子供達から聞き出してきますわ!」

「でもどうするの~? 隊ちょ~から待機って言われてるよ~」

 するとアイファが訪ねてくると、皆しばらく口を紡いで考えた。

 創星会の事はともかくとして任務は任務、自分達としてはハイ・ブライトンルビーの回収は行いたかった。

 しかし現場において隊長の言葉は絶対、アレンの事なので決して私情で言ってる訳では無いだろう、だが腑に落ちなかった。

 そう思っている時だった。

「ん?」

 ルイスは自分のライセンス・ギアにメールが入った。

 見てみるとそれはアレンからだった。

 内容はこう書かれていた。

『バッファローを使う、朝までには戻るから今日はもう休んでてくれ』

 ルイスがメールを読み上げると、表の方から車のエンジン音が聞こえて来た。

 慌てて廊下に行くと、駐車場に止めてあったバッファローのヘッドライトが点くと駐車場から出て行ってしまった。

 慌ててアレンに連絡をするが、運転中は無線もメールも使えないので返信は無かった。

21章アップしました。


今回は戦いはありません。

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