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計画その1 状況把握

 その日俺は、行く当てもなく、家の近くを彷徨っていた。何も予定がない日曜日ほど、無駄な時間はない。本当は日曜ぐらいゆっくり寝ていたかったが、朝から布団を干すからと親に起こされ、ベッドという俺の聖域から追い出されてしまった。酷い。使用者が干す必要が無いと言っているのに無視なんて。

 家にいても暇なので、外で面白い事でも探そうと、家を出てから、かれこれ一時間ほど経った。未だに面白い物を発見できず、俺は近所の公園まで来ていた。

 平日でも朝から老人や子供を連れた人妻などがごった返している公園なのに、今日は人気がない。不思議だな~と思い、公園に入ると、広場の中心でしゃがみこんだ子供が泣いていた。その少年の傍らには、コーヒーの缶が置いてある。

「どうしたんだい?」

 俺は、少年に近づくなり、そう声をかけた。俺に気が付いた少年は顔を上げ、俺の目を見つめた。今まで泣いていたせいなのか、目は真っ赤に変色し、鼻からは大量に汁が垂れていた。

「うぐ……ぐす……缶蹴り……ずっと鬼なの……」

 缶蹴りか。その単語を聞いた俺は、子供の頃の記憶を読み覚ましていた。鬼には見つかるのが早いくせに、鬼になるとすぐに全員を見つけ確保出来た。そんな俺に仲間が付けたあだ名が『鉄壁の鬼』だった。あの頃に比べ、運動能力も多少上がっているだろうし、今、鬼をやったら、きっとあの頃の自分を凌駕するのではないか。そう思った瞬間、俺の中の熱い魂に火が点いた。

 鬼をやりてぇ!!

 いや、待てよ。しかし考えてみろ。この少年が鬼と言う事は、相手もガキだ。俺がでしゃばって鬼になったら、簡単に終了してしまう。それではあまりにもガキ相手に卑怯じゃないか? お前は普通の人とは違うんだ。『鉄壁の鬼』なんだぞ。しかも凌駕した。

「そうなのか。君、大変かも知れないけど、頑張ってくれ」

 ふう、危ない危ない。大人気ない姿を子供に見せてしまう所だった。さてと、邪魔になると困るし、ここから立ち去るか。

 そう思った俺のズボンの裾を、少年が掴んだ。

「……うぐ……お兄ちゃん……助けて……お願い……」

 めっちゃ哀願されてるよ! うわぁ、参った。

「少年。俺は中学生だ。少年は小学生だろ? ってことは相手も小学生……」

「違う……多分……お兄ちゃん……ぐす……よりも……年上」

 はい? 俺は耳を疑った。つまりあれか? 俺よりも年上。つまり高校生とかか? それは邪道だ。いじめに近い。いや、いじめそのものだ!

 俺の中の正義感が爆発した。

「おい! 缶蹴りしているお前ら! 卑怯だと思わないか!? こんな幼い小学生を相手に!」

 俺は叫んだ。しかし、辺りは静まり返っている。何て奴らだ。

 俺は少年を放って置く事が出来なかった。今から俺は『鉄壁の鬼』と化す。

「少年。俺が助けてやる。この『鉄壁の鬼』がな!」

「何言ってるのかわからないけど……お兄ちゃん……頑張って」

 少し殴ってやろうと思ったけど、少年の声援を受け、俺は戦いに臨む事にした。

「おい! 選手交代だ! 俺が鬼をやる! 不満がある奴は出て来い!」

 俺の叫びに対して、誰も発言をする奴がいなかった。晴れて俺は鬼になったのだ。

「お兄ちゃん……気を付けて……相手は三人だけど……みんな強いから」

「少年。心配するんじゃない。お兄さんのかっこいい姿を目に焼き付けておくがいい!」

 そう言って、俺は、缶の上に右足を置いた。今の俺、すっごく輝いている。

「よ~し! どっからでもかかって来い!」

 そう大声で叫びながら俺は、ゆっくりと、缶から足を離した。

 次の瞬間。缶が宙を舞った。

「え?」

 あまりにも突然な出来事に、俺は唖然とした。

 何が起こったのだろうか? わからない。

 ただ1つ言える事は、缶を敵に飛ばされたということだ。

「お兄ちゃん……早く……缶を……」

「あ……あぁ」

 少年の言葉で我に戻った俺は、急いで缶を拾った。そして気が付いた。缶に何かが刺さっていると言う事を……。

「ちょっと待て。これはどういうことだ?」

 俺は、缶に刺さった、手裏剣を缶から抜くと、少年に見せながら質問した。

「手裏剣だよ……知らない?」

「あぁ知っているよ。知り合いに忍者がいるからな」

 そう。知り合いに二人ほど忍術をマスターした人間がいる。それはどうだっていい。

「そうじゃなくて、何でその手裏剣が缶に刺さっているんだい?」

「敵の一人で、サスケって名前の人の必殺技だよ……」

「いいかい少年。まず最初に、必殺技という言葉はこの場合使わないほうがいい。いろいろ俺が怖い妄想してしまうから。理由はな、必殺技っていうのは、必ず殺す技って書くんだ。へぇ、それが何か? って思うかもしれないけど、この手裏剣には読んで字の如く必殺技になりうる殺傷能力があんだよ! いや、それはこの際置いておくとして、それをそのサスケとかいう奴が投げて缶を倒した。そういう事か?」

 少年は、不思議そうに頷いた。

「少年。飛び道具はあり、というルールなのかい?」

 俺がそう聞くと、少年が目を見開いた。

「普通駄目なの!?」

 ほう。悟ったぞ。これは勝てるはずがない。だが、そういうルールなら仕方がない。わかった乗ってやろう。本当は乗っていけない気がするんだが。わかった。手裏剣くらい許してやる。構うもんか。もう忍者如きで驚くもんか。

「お前達! もう手裏剣は無駄だ! 他の方法を使うんだな!」

 そう言って、俺が缶を地面に置き、手を放した瞬間だった。

『パン!!』

 という銃声と同時に、缶が吹っ飛んだ。

 俺は呆然と缶を見送った。

「それはタイサとかいう人の必殺技で……」

「もう聞きたくない……」

 何かやばいゲームに巻き込まれた気がする。

「少年。もう一つ質問していいかい? 三人いると言ったが、もう一人はどんな奴だい?」

「えっと……コロシヤって人がいて、その人の必殺技は……ナイフ……」

「集合!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

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