14 続き
「では、ベールマー様、あのときの話の続きをいたしましょうか」
ヘルガがベールマーに声をかけると、彼に対して視線が集まる。
隣に座っていたハイムゼートはとても厳しい表情をしていて体格に恵まれているベールマーでも威圧感を覚えているらしい。
エヴァーツ伯爵家にやってきたときにはあんなに自信満々に振る舞っていたのに、今では三割減で小さく見えた。
「私はきちんと申し上げたはずです。対応しますと。その対応の結果がこれです。あなたや騎士団の方々がその気ならば、こちらも同じ」
「…………」
「私たちの信用によって行っていた行為は見合わせると言うことになります。どうでしょうか。ベールマー様」
ベールマーはこわばった表情でテーブルを見つめていて、眉間には深いしわが刻まれていた。
「私はあなたから直接言葉を聞きたいのです。むしろあなたからの言葉がなければ、ああよかったと安心することは難しい」
「……」
「なぜなら、先ほどオリヴァーの言ったとおりオスヴィンとカリーナは王家直属の騎士団という部隊の中で不貞行為をし威信を損なった。それを理由に解雇された。それはまっとうな出来事のはずでした」
ヘルガはベールマーが答えずとも言葉を並べていく。
「しかし、突然それは覆され、私たちの行いが間違っていたかのように牙をむいた。そして騎士団はオスヴィンたちの肩を持っているような発言をされ、依頼をないがしろにされた。これは恐ろしい裏切りです」
淡々としゃべるヘルガの声だけが響いている。
「こんなことでは騎士団、ひいては王家を信頼し盾を託していいのかどうかもわからない。その気持ちで揺れている。いくら上層の人間が団全体の意向としてあなたを処罰しても、また実際に動く騎士の方々からそう言われてはたまらない」
「……っ」
「だからあなたから、どういう理由でこうなったのか、あなたはなにを考えていたのか、あなたはどうするのかお聞きしたいのですよ」
ヘルガがしっかりと説明して、ベールマーがきちんと対応しなければいけない理由を示しても彼はうつむいて、言葉を返さない。
本当は、そういう騎士は少数で、騎士団はきちんと機能しているし、問題を起こしているのはベールマーとそのグループに属する騎士で、彼と仲の良い騎士たちは浮いていると言う情報も得ている。
オリヴァーが実際に勤めている騎士に話を聞いて、なにもこんなことはもう起こらないだろうこともわかっている。
しかしヘルガは聞いた。
なんせこれは、ベールマーとの争いだからだ。
彼がふっかけてきたのだから、ヘルガは彼に攻撃する。物理ではなく心理的に。
「無視してんじゃねぇぞ」
ヘルガはぽつりと言った。
ベールマーは驚いてやっと反応し、ヘルガの方を見る。周りの三人も突然の乱暴な言葉遣いにぎょっとしていた。
「本当に生意気な女だな、こんなことして許されると思ってんのか? 騎士団の結束はかてぇんだ、今までみたいに守ってもらえると思うなよ」
「っ、」
「わかってんのか? ……と、私に騎士団の想いを感情豊かに伝えてくださったじゃないですか。忘れたとは言わせません」
ヘルガはあのときのベールマーほど威圧的ではなかったがそれでも、有無を言わせない空気をまとっていて、逆に平坦な口調はその雰囲気を助長させていた。
「あんなことをしたのですから、あなたの属する騎士団に盾を託すようなことなどしません。私の言い分がわかるでしょう。あなたと同じですよ、同じことをしています」
ベールマーは葛藤しているような顔をしていた。
しかし見たいのはそんな表情じゃない、打ちのめされた彼の表情だ。




