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双鏡の君へー姿を変える幼馴染との恋と、残したい記憶ー  作者: ゆら。


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第七十五話 問題は教科書の外にある


放課後。


琴葉は鞄を肩にかけたまま、廊下でうなだれた。


琴葉「……今日の数学……さっぱりわからなかった。どうしよう……」


隣を歩く敦が、ため息まじりに答える。


敦「しかも宿題付きだぞ。先生、容赦なさすぎだろ」


二人が校門へ向かおうとした、その時。


ほぼ同時にスマホが震えた。


――琴葉母:

『今日、敦家で勉強会やるんだって〜!

 手土産のおやつ買ってあるから持っていきなさ〜い!』


――敦母:

『琴葉ちゃん今日来るって聞いたんだけど!

 晩ごはん多めに作るね!』


琴葉「言ってない!!!!」


敦「誰が誰に何を聞いた!?」

 


——結果。

抵抗むなしく、敦家へ向かうことが確定した。




二階・敦の部屋。


机の上には教科書とノートが並ぶ……はずだった。


琴葉「あ、シャーペン忘れた……」


何のためらいもなく、敦のペンを取る。


敦(そのペン……俺の普段使いなんだけど……

 いや、別にいいけど……)


琴葉「やっぱりこれ書きやすい!敦の字が綺麗な理由これだな!」


敦「いや……字は人間性の問題だから……!」


気づけば、問題の難易度より

二人の距離感のほうが圧倒的に手強い。


敦(心の声)

(集中できねぇ……原因が隣にいる……)

 

琴葉「えっと……この公式って……」


敦「ここだろ。ほら、この——」

 

――どたどたどたっ!!


敦父「おーい!コーヒー持ってきたぞー!」


敦母「はい差し入れ〜♡

   これ食べながら勉強しなさい!」


敦「あがるな!!部屋に!!」


しかし親ズは止まらない。


敦父、部屋を覗きながら満面の笑み。


敦父「お〜〜勉強中の二人って……青春!!」


敦母「答え合わせしてるのかわい〜い♡

   あ、写真撮っ——」


敦「撮るなぁぁぁ!!」


そこへ、なぜか琴葉母からビデオ通話着信。


琴葉母『もしも〜し? 琴葉〜?

    ちゃんと勉強してる〜?』


敦母「きゃー!琴葉ママ〜〜!!」


画面越しに母親同士が大盛り上がり。


敦父が軽く言った。


敦父「なんなら来る?」


琴葉母『行くっ!!』


琴葉・敦「来ないで!!!」


——が。


15分後。

ピンポーン!


ドアが開くと、

袋からチラ見えする大量のお酒。


そして琴葉母の圧倒的オーラ。


琴葉母(テンションMAX)

「来ちゃった♡」


琴葉父「お招きありがとうございます。家内が行くって聞かなくて……」

 

敦母、一拍も置かずに歓迎モード突入


敦母「キャ〜〜!ようこそ!!

たくさんのお酒♪みんなで飲んじゃおうか!!」

 

琴葉母「ね〜♡せっかく集まったんだし!

 今日は“親睦”深めよ〜♡」

 

琴葉父「……健司さん、今日って平日ですよね?」

 

敦父「はい。でも妻たちが顔を合わせた瞬間終わりました」

 

琴葉父「奇遇ですね。俺もです」

 

琴葉父「……逃げ道あります?」

 

敦父「ないです」

 

琴葉父「ですよね……では飲みます?」

 

敦父「……飲みますね」

 

琴葉母「ほらほら遠慮しないで〜♡」

 

トクトクトクトク……コップから溢れんばかりのお酒

 

琴葉父「……健司さん、今日ここで生き残れます?」

 

敦父「無理ですね」

 

琴葉父「ですよね……じゃあせめて」

 

敦父「はい?」

 

琴葉父「奥で静かにやられましょう」

 

敦父「名案です」

 

(二人、静かに立ち上がる)

 

琴葉父「では、俺らは奥に行く」

 

敦父「勉強頑張れよ〜(手には握らされたビール)」 


 

敦「飲むな!!」

 

琴葉「今日の主役こっち!!」


 


親ズの賑やかな声が、壁越しに響いてくる。

 

琴葉父「あ、この唐揚げうっま!!」

 

敦父「晩酌進むなぁ〜」

 

(……うるせぇ)

 

琴葉母「……子供たちが仲良くしてくれるおかげで私達も楽しい時間貰っているのよね」

 

琴葉(……お母さん……)

 

母のしみじみした声が聞こえて少し胸がじんわりする。

 

敦母「そうそう例の『魂沈めたお弁当事件』!最高だったわっ!敦なんて玄関で思い出し萌えしてた!」

 

琴葉「え?萌え?どんな状態?」

 

敦「言うなっ!!想像すんなっ!」

 

琴葉母「琴葉ったら初日なんて気合い入れすぎて大惨事だったのよ」

 

琴葉「見てたの!?」

 

琴葉父「これビデオ」

 

琴葉「撮るなっ!!」

 

敦父「これ玄関で魂撃ち抜かれている敦の写真」

 

敦「いつの間に!!」

 

琴葉「見たいっ!」

 

敦「やめろっ!」

 

ーーまっっっったく集中出来ない勉強会だった 


ーー親の酒盛りはまだまだ続く

 

ー敦母「うちの敦はね、奥手だけど本気になると一直線なの!」


琴葉母「琴葉はね、ドジだけど恋は自然に身を任せるタイプなの!」


敦父「いや敦は慎重すぎて踏み出せないタイプだ」


琴葉父「琴葉は素で距離感バグるタイプだ。恋人を翻弄する」


敦母「つまり二人は——」

 

琴葉母「合う!!」


父ズ「いや待て!!」


母ズ「合う!!!!!」


父ズ「(勝てねぇ……!!)」 


賑やかな両親ズの部屋と対照に静かな敦の部屋…… 

 

シャーペンを握りしめて動けない二人


敦の部屋で二人そろって机に沈む。


琴葉「……敦の家……強い……」


敦「……うちの母さん、最近テンションおかしい……

たぶんお前の母さんと連絡取り始めたからだ……」


琴葉「地獄の連携だな……」

   

琴葉(心の声)

(…この家……逃げ場……ない……)


敦(心の声)

(俺もだよ……)



ー「敦の脳内は、常に非常事態宣言」ー

(※同じ日/敦視点)


——勉強会。


(集中しろ俺)

(公式だ公式)

(横を見るな)


……横にいる。


(いるな)

(近いな)

(息が当たるな)


琴葉「あ、これ——」

 (肩触れた)

 (終わった)


親乱入

(詰み)


親ズ合流

(世界の終わり)


酒盛り開始

(もはや勉強会とは)


壁越しの会話

(聞きたくない)

(でも聞こえる)

(俺の人生の黒歴史、増えていく)


ここまで読んでいただきありがとうございます。


集中力は環境に殺されます。

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