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三十八 立派なメイドになってみせます

これで序章終わりです!

「ずっと肩を落として歩いていたので何分経過したかはわかりませんね」


 宝箱のような物が安置されている場所にたどり着いた僕はそう呟きました。


 警戒心は未だに消えていません。なので、そこには慎重に近づいていきました。


「魔道具なんていらないとも思いましたが、なんか歩いているうちに気が変わってしまいましたね。取り敢えずもらっておき……あ」


 この宝箱、何か仕掛けがあったりしませんかね。あったら怖いんですけど。開けたら、毒霧が散布されるとか宝箱自体が魔物になって動き出すとか嫌ですよ? 勘弁してくださいよ?


 結界を体の一部に張るなんてことはできないので、開けた瞬間に罠が発動したらすぐに結界を張れるように手に魔力を溜めておきながら、僕は恐る恐る……その宝箱を開けていくのでした。


「……よ、よかった」


 中には棒のような魔道具が。罠は……なさそうです。


「……」


 周りを見渡して、何か魔物が襲ってこないか……罠が飛んでこないか確かめたのですが、そんな気配はありません。


 五分ほど確かめたので、多分本当に罠はないですね。よかった。まあ、さすがにこんなところに罠は仕掛けませんか。


 胸を撫で下ろし、僕はそれを魔眼に仕舞います。そして……


 宝箱を開けたことにより、出現した出口と思しき光の穴へ……僕は向かうことにするのでした。






 *****






 出た瞬間には眩い陽光が僕のことを照らします。


 熱いです。目が覚めます。死んだ表情筋を弄って眠気覚まし代わりにする必要なんてなかったです……と思っていると……


「イスヴァ!」


「……もしや、クロノ様!?」


 洞窟の目の前にいるじゃないですか。すごいありがたいです。


 僕はそれまでの疲れきって死人のような表情はどこにいったのか……晴れやかな表情でクロノ様に抱きつきました。


 それが失礼だと感じる余裕は僕になかったんですね。


「いきなり、抱きつくね。ヤバ」


「あ、はい! 申し訳ございません!」


 失礼なことをしていると気づいて、飛びのきます。色々とゾンマー先輩に偉そうなことを言ってしまったのを思い出し、少し顔が赤くなってしまいます。何がメイドとして不適切、ですか……


 僕もまだまだメイドとしては未熟ですよぉ……


「いや、そのままでいい」


 クロノ様は僕のことをギュッと抱き返すと、耳元でボソリと優しげに……呟いてくれました。


「頑張ったんだろう。見ていたらわかる。一度休むか?」


「クロノ様は大丈夫なのですか?」


「他人の心配をすぐにできるところが君の美徳だよね。問題ないよ。こんなこと言っちゃったけど、君の方こそ大丈夫?」


「大丈夫です!」


 こんな状況で何かしようとしてもすぐに倒れるのがオチです。それぐらいは疲れていても、まあ……わかります。


「これからどうしよう。どこに行こうか?」


「ここは臭いが強いですもんね」


「そういうこと。なんかこの森の主が死んだせいなのかもしれないけど、魔物臭が酷いからここでゆっくりするべきではないかなって思ったんだよ。魔物に襲われたら堪らない。能力とかを使えばいい話かもしれないが、そういったものは今は温存したい」


「結界張ります?」


「そうだね。あ、私が張るから心配いらないよ」


 クロノ様はそう言って周りに結界を張ってくださいました。『強闇結界』ですかね。僕がやろうとしたんですけど、そこは止められてしまいました。まあ、確かに今使うべきではないかも……


 結界の強度は見るからに高い。これなら、魔物の心配なんかはしなくて良さそうですね。魔物臭も結界により、緩和され……


 あ。


 とあることを思い出した僕はクロノ様にそのことを尋ねます。


「マ、マジロはどうなったんですか?」


「あ、そのことか。すまない。あの子は森のどこかに逃げてしまったんだ。私が探しに行こうか?」


「いえ、あの子が自分の意思で森に戻ったのならいいです。何か考えがあるのかもしれませんし」


 賢い子でしたからね。


「そうか。わかった。あのさ、イスヴァ」


「どうされました?」


「一回ちょっと寝転がるよ」


「どうぞ」


 僕はさすがにここで主人と同じく寝転がってしまうべきではないと感じ、正座でいるつもりです。


 しばらく正座で寝転がるクロノ様のことを見守っていたら、突然に彼女が僕に向けて口を開きました。


「君はさ。これからどうするの? いや、どうしたいの? さっき洞窟でも聞いたけどさ。あれから時間も経ってるし、考えが変わっている可能性は十分あると思ってさ」


「……」


「あ、体力が回復してからのことね。思ってることそのまま言ってよ?」


「これからですか。そうですね。ゾンマー先輩の埋葬をきちんと済ませた後に生き残っていると思われる先輩のメイドの方々に会って、謝罪などを行おうかと考えております」


 転移されてしまったせい、などと言い訳を言うつもりはありません。緊急事態に屋敷にいることができなかったのは紛れもない事実ですからね。誠意を持って謝罪すべきと思うのです。


「ああ、わかった。なら、付き合おう」


「え……いえ、そんな……」


「遠慮をするな。それに、私は君のメイドの先輩を一目見たいと思っていたのだ。迷惑なんかじゃないよ」


「それなら……あの……ではなく、かしこまりました」


「じゃあさ、その後は」


「……そ、その後ですか」


 その後は……正直、考えてはおりませんでした。先輩方に謝罪することで頭がいっぱいでしたからね。


 謝罪時の腰を折る角度とか、謝罪の言葉とか……先輩方がどんな顔をするだろう、とかそんなことばかりを……


「えっと……」


「……君さ、私の旅に……一緒に着いてきてくれないかな? もちろん、嫌なら断ってくれていいよ。強制しない」


 旅……旅ですか。少し戸惑っていると、クロノ様は言います。


「私はね。目的があるんだ」


「目的、ですか……」


 頷いて、耳がピクリと動いて話をきちんと聞くための状態になりました。背筋もきちんと伸ばしてます。


「ああ、私は好きな人……片想いしている人がいてね。どうしても、その人に会いたいんだ。今までずっと諦めていたんだけど、君を見ていてまた行きたいと思うようになったんだ」


 片想いしている人……


「何故、僕を見て……思ったのでしょうか?」


「君はその人に似ているんだ。顔じゃない。雰囲気……とでも言うべきなのかな。なんか、似ているんだよ。思い出す」


「えっと……感謝……いたします?」


「ははっ……まあ、知らない人間と似ているなんて言われても困惑するよね。悪かった」


  クロノ様はそう言って頭を一瞬下げようとしました。もちろん、急いで止めましたよ。


 そんな謝るようなことではありませんからね。


「とにかく、私はその人に会いたい。その時に……彼に君を紹介したい。だから、着いてきてくれないかな?」


 風が吹き、メイド服のスカートがめくれそうになります。返事をしようというところで吹かないでいただきたいですね。


 僕はそんなスカートを抑えてから、未熟なりに姿勢を整え、自分なりにメイドらしさを心がけた返事をしました。


「喜んで」


「よかった」


 その後にクロノ様が僕の手を握ってきたので、僕はそれをギュッと握り返してみました。


「いい手だ。細いけど、簡単には折れそうのない……そんな感じ」


「……感謝いたします」


 ……そう仰いますが、あなたの手も細くしなやかで綺麗でありながら、決して折れそうにない手をしていますよ。


 あなたのことを視界に入れる度、あなたに触れる度……僕の心は温かくなり……それと同時に『支えたい』……『奉仕したい』という考えが浮かんできます。


 ……シュバーイン様、僕は立派なメイドになってみせます。今はまだ未熟ですが、いつかきっと……


 今度こそは、あなたのような大切な方を失ってしまうことのないように……精神も肉体も強い理想のメイドへと……



 陽光と風を一身に浴びながらも、姿勢を崩さぬよう努めながら僕はそのようなことを思うのでした。

これで序章は終わりとなります!

少しでも「面白い」と思ったら、広告下にある評価ボタンを押してくださると助かります!


*****


溜めたストックはこれで使い切ったので、一旦更新停止します。ストックさえ溜まれば、また再開しようと思っているのでそれまでお待ちいただけると嬉しいです。


*****


新作のハイファン(追放モノ)と異世界恋愛作品を今日のうちに投稿する予定でいます(二十三時とかになるかも)。

こちらもこの作品と同様に心血を注いで書いているので、読んでいただけると非常に嬉しいです。

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