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三十五 ツヴァイドの『試験』

『試験』前に彼は僕に対し、能力や魔法の情報開示を求めてきました。僕はそれに応じ、自身の能力や魔法を簡単に説明します。


 しかし、このまま『試験』を開始する気はありません。僕だけ開示するなんて不平等だと思ったからです。僕はその思ったことをそのまま口にし、彼に同様に情報を開示することを求めました。


 ……すると、「いいよ」などと簡単に言われ、淡々と開示されました。あまりにあっさりとしていたので驚きましたね。


 彼が持っているのは洞窟内のモノを自由自在に操ることだそうです。魔法は使えないとのこと。


「『試験』開始は五秒後ね」


「はい」


 彼は僕のその言葉を聞くと、自身の指を折って五秒を数えていきます。その時にはもう僕は魔力を溜めていました。当然少量。


 五、四……


 魔力の溜めと思考は同時に行います。


 相手の強さをまだよくわかっていないので、僕は最初に『黒球』を放ち、反撃を受けないためにその後に『黒結界』を展開する予定でいます。最初の『黒球』で仕留められたら、それが一番いいとは思うんですが、そんなに上手くは行かないと思いますので。


 そう思っていたら、ツヴァイドは数え終わり……先程のように土人形を創り出してこちらに向かわせてきました。


 それが通用すると思っているのか、それとも、土人形に僕が目を向けている間に別のことをするつもりなのでしょうか……?


「……っ」


 ……当たりっぽいです。創り出された土人形十体によって僕の視界が塞がれたことでツヴァイドは何かを呟き始めました。


 その呟きによるものか、土人形はその口(?)と思しき部分から、何かの種を吐き出してきました。


 すぐに『黒結界』を展開したので、大丈夫でしたが、食らっていたら危険だったでしょうね。何かの苗床になっていたかも。


「怖いことをしますね」


 種は落下した後に毒素のようなものを撒き散らしました。結界越しでも色でわかるんですよ。


『黒球』を放つつもりだったのに、これじゃできませんね。


「まだまだ行くよ」


「!?」


 今度は足元の地面が隆起します。それにより、僕は洞窟の天井まで飛ばされました。


 勢いが強くとも強度が高いので、結界が壊れることはありません。なので、天井に変な感じで突き刺さりました。


 その突き刺さった瞬間に天井から這い出た別の土人形が僕の結界に張りついてきます。一体何を……


 ……す、るつも……り。


 その時には僕の体は地面に落下していました。


 爆散しましたね。土人形がパラパラと砂の欠片となって地面へと降り注いでいますよ。


「養分を吸い取って殺されるのと、岩石攻撃でジワジワと殺されるのどっちがマシ? 選んでいいよ」


 岩石攻撃ってなんなんですかね。具体的にお願いしたいところですが、聞いてはくれないと思いますので……


「前者で」


 ……と答えます。


「了解。後者で行こう」


 そう言うと思ったので、嘘をつきました。本当は後者が嫌。


 養分を吸い取るということは先程のように何かを植えつけるつもりということでしょう。キモいですし、消去法で後者を選択しました。もちろん、後者の通りに殺されるつもりなど毛頭ありませんが、もしものことを考えておくのも悪くはありません。


 ツヴァイドは自身の左手を何かの蔦に変質させると、それで僕の体を拘束しました。


 そして、右手に岩石を生成すると、それを僕のあちこちに埋め込んできました。出血します。


 この方……表情に大きな変化はありませんが、楽しんでいることは伝わってきますね。


「……ツヴァイドさん、あなた……」


「何か言ってる? ごめん、聞き取れないな」


 あなたがそれを止めればいい話だと思うんですけどね。


 ……ま、聞き取る姿勢になってもらう必要などありません。これだけ至近距離なら嫌でも耳に入ってくるでしょう。


「……屋敷の侵入者、そして……僕のご主人様を殺したのはあなたですよね。アルッディなどではなく」


「……なんでそう思った?」


「その前にどいてください」


「がっ……お前、その箒どこから……もしかして、魔眼持ちか?」


 この人、やっぱり予想通り惰眠を貪っていたせいで僕の魔眼のことを知らないんですね。


 ……魔力箒で『黒球』を放ち、ツヴァイドがそれによって僕から離れていった後に……そう思いました。


 こうなることを見越し、魔眼を事前に発動させ、体内魔力のほとんどを魔眼内の箒へ移動させておいたのです。それにより、こうして離れたところに放置していてもすぐに操作が可能でした。


 相当、高難易度なもので体力だって消費します。そして、それを上手く表情に出さないようにするのは苦労しました。


「あなただって僕に話してないことが一つや二つ……あるでしょう? お互い様なのでは?」


「ま、あるかな。それより、さっきの問いに答えてよ。なんでオラが君のご主人様を殺したと思ったんだ?」


 あるんなら教えてほしいですね……


「……僕とクロノ様が遭遇したアルッディは戦闘時に危機に陥っても一切超能力を使わなかったんですよ」


 眉がピクリ……そして、彼の一瞬の口の動き。そのパクパクと餌を求める魚のような驚き顔を僕は見逃していません。


「……」


「あなたが彼に化けていたんでしょう?」


「それをどこで知った?」


「言いませんよ。さっきも言いましたが、あなただって隠していることの一つや二つ、あるでしょう?」


 おかしいと思っていました。ただ、隠しているだけとは思っていましたが、アルッディは結局最後まで浄魂場の『エイゾウ』で見せたあの超能力を使いませんでしたから。


『エイゾウ』で登場した時に躊躇いなく使っていたので、回数制限や時間制限つきの能力とも思えません。仮に制限つきだったとして『エイゾウ』でアルッディが屋敷のご主人様を殺してから相当な時間が過ぎています。多分、回復していると思うんですよ。


「未来を視ている? いや、違うな。それなら、もっと上手く立ち回れているはず……まあ……何であれ、お前は危険な存在だよ。本当危険な存在だ。オラが思っていたより、何倍も」


 未来を視る魔眼とか能力欲しいですねぇ……あったらいいんですけどね、そんなものが……


「危険な存在と認識してくれるのはありがたいですね。これから、本気を出してくれますか?」


「よく本気を出してないと気づいたな」


 そんなわけないじゃないですか。気づいてるわけないでしょう。言ってみただけなのに、まさか当たっていたとは。


 幸運ですね。僕は……


 ……と思った瞬間の岩石纏拳!?


 訂正訂正。やはり、僕は幸運などではありませんでした。身体能力が称号によって上昇していなければ食らっていたかも。


 岩石纏拳、というのは瞬間的に僕が名づけたものです。岩石を拳に纏わせていたから、そう名づけてみました。


 ……僕も、似たようなことをやってみますか。


「あなたが本気を出してくれるなら、僕も本気を出しましょう」


 僕は箒を自身の右横に浮かばせ、その後に右手と左手に魔力を纏わせていきます。魔力纏と呼ばれるもの。


 纏わせる感覚はすぐに想像できたので、難易度はそれほど高くはありませんでした。


 僕は黒の魔力を纏わせた手をツヴァイドに向け、出来るだけ優しそうで……気品を感じさせる口調で言います。


「どうぞ、ツヴァイドさん。先攻はお譲りします」

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