二人の旅立ち
最終話になります。
読んでくれた皆様ここまでお付き合い頂き本当にありがとうございました!!
あれから数日経ち、ロゼは普通に生活できるほど回復していた。
「うーん!いい天気!」
ロゼは部屋の窓を開け空を見上げた。
ここはラーズレイ付近にある森の中の家屋である。
ルシフェルのつてで、動けないロゼ達の為に貸してもらった場所である。本来なら冬に狩をする為の休憩所らしいが元々人が住んでいたのもあり、とても過ごしやすかった。
「ロゼぇ〜おはよう。エルディはもう起きて支度してるよ〜」
エルディとはエルグレドのことである。
名前が長いので省略しろと仲間から言われ愛称で呼んでいる。ロゼが支度して降りていくとご飯の支度を始めているラウルとエルディの姿があった。
「ホント朝早いのね・・・・手伝うわ」
「構わない。もう出来るから器を出してくれ」
ロゼは言われた通り器を出し出来上がったスープを器に盛っていく。
これは生活をして気がついたのだがエルディは貴族なのに何故か料理も掃除も自分で一通り出来るのだ。
特に料理は意外過ぎて初めて出された時は仰天した。
「お?美味そうだなぁ。俺もくれ」
「アンタは何にもしないわねぇ」
最後に起きてきたルシフェルに呆れたように呟いてスープを渡す。
「何もしないとは心外だな?俺はもう充分働いたと思うが?」
それはそうなので苦笑いで返した。
「まぁアンタのご飯なんて食べられたモンじゃないから何もしなくていいけど?」
「お前等ほんと一言多いよな?」
そんなやり取りをしながら皆それぞれ朝食を済ます。
今日はここを出発する日である。
一度解散し各々活動する。
支度を終え外に出るとルシフェルとエルディが何やら話をしている。この二人。年が近いせいか意外と仲がいいと思う。
「おお!支度出来たかロゼ!」
ルシフェルは足早に近づいて来るとポンっとロゼの肩をたたいた。
「お前。気をつけろよ?」
なんだ急に。何を気をつけろと言うのだ。
訝しげな顔でルシフェルを見るとルシフェルは真剣な顔で耳打ちしてくる。
「絶対に浮気はするな」
「は?」
真剣に何を言っているんだこの男。
「お前は魔人の本質を分かっていないからな。奴らは普段とても温和だが愛する者に関しては豹変する。」
え?とルシフェルを見るとその顔は冗談を言っているものじゃない。
「奴らは自分が伴侶と決めた相手だけを生涯愛し続ける。その上独占欲が強く嫉妬深い。昔も今も魔人が世界を揺るがすきっかけは、その強い想いゆえの行動が大きい。だからこそ異種族間の交わりは危険視されている」
ロゼはチラッとエルディを伺いみる。
話を聞いたせいかこちらを見ているエルディの目線が鋭い。気がする。
「あまりエルグレド以外の男に近づくな。お前がそのつもりがなくても、相手が仲間だったとしてもだ。あいつが平気な顔をしているから大丈夫だなんて間違っても思うなよ?」
なんだろう。ルシフェルの発言なのに笑い飛ばせない。
自分はもしや新たな爆発物を抱えてしまったのかも知れない。
そんな事を考えているといつの間にやら近づいてきたエルディに抱き寄せられルシフェルから引きはがされる。
「いつまでくっついてるんだルシフェル」
ルシフェルは両手を上げ、やれやれと首を振った。
ミイルとラウルが三人の下へ駆け寄ってくる。
「何?なんの話?」
「これからエルディと二人きりだからな。子作りのタイミングは気をつけろと忠告しただけだ」
「んなぁ!?」
ロゼは眼を剥いてルシフェルを見た。
コイツ今とんでもない発言をしやがったと、拳を振り上げるロゼに何故かミイルが追い打ちをかけた。
「ああ!そっか。エルディもロゼも発情期だもんね?すぐに子供が産まれるかもね?」
ニコニコと悪気なく言い放ったこの発言には流石のエルディも同時に声を上げた。
「「発情期じゃない!!!」」
えー?と不思議そうに首を傾げるミイルと赤い顔で困っているラウル、そして爆笑するルシフェルと別れて二人は遠くのガルドエルムが見える丘までやって来た。
「帰りたい?」
遠くを見つめるエルディにロゼは問う。
それに笑って首を振る。
「あそこには、大切な者達が大勢住んでいる。だがずっと俺は何処かに帰りたいと思っていた」
あそこにいた時エルディは気が付かなかったが、あの地はいつも彼の帰る場所では無かった。帰りたいと思えなかった。
「だから早く終わらせたいと願っていた。大切な者を守り死ねたら本望だと・・・」
だがエルディ。エルグレド・ファイズはあの国の人々に愛されていた。本人も気が付かぬうちに。彼が彼らを大切に想っていることに彼らはちゃんと気付いていたのだ。
「だが、今は帰る場所がある。どこに居ても自分を見失わずに目指して行ける場所が・・・」
エルディはロゼの前で跪いた。
ロゼは驚いたが黙ってそれを見守った。
「エルグレド・ファイズはただ一人。目の前の女性だけを生涯愛し慈しみ護り抜く。その生涯を終えるまで。その生涯を終えた後も」
それは婚約の儀で交わされる誓約の言葉である。
ロゼは真剣な眼差しのエルディを見つめ自分もその言葉を口にした。
「私はその生涯を終えるまで貴方だけを愛し貴方だけを慈しみ貴方を最後まで護り抜く。その生涯を終えた後もその心はエルグレド・・・貴方と共に・・・・」
ロゼが白い痣がある左手を差し出すとエルディはその手を片手ですくい上げ、その痣にそっと口付けた。
エルディは顔をあげ、そして笑った。
それはロゼがずっとずっと欲しかった彼の本当の笑顔だった。
ロゼもつられて笑顔になる。
エルディはそのまま下からロゼを抱え上げ、ロゼは嬉しくて彼の首に手を回して抱きついた。
ここはファレンガイヤ。
多種多様な種族が暮らす未だに謎多き大地である。
その地には5つの宝玉を持つ神の御子と呼ばれる少女がいた。
彼女はこの日、最も愛する者とこの地を守る為立ち上がった。
「行きましょう。自分の心のままに生きる事が私達に許された唯一の自由なのだから」
こうして二人は出会い旅立った。
そしてこれが彼女達の本当の物語の始まりだった。
ー完ー




