少女現る
やったー!!やっと出てきたー!と、喜んでいるのはきっと作者だけです。
「ったく!あの馬鹿が!」
ロゼが巨大な竜を召喚した数日後。ルシフェルは急いでガルドエルムへ向かっていた。
ロゼが召喚術を使った時、運悪く誰もロゼの側に居なかった。いればなんとしても止めた筈だ。
(前の時は制御しきれずしばらく寝込んでいたが・・・あの時より大分魔力は安定していた。すぐに戻った様だし、きっと大丈夫だ)
ルシフェルはそう自分に言い聞かせ足早にガルドエルムに足を進めた。
もうしばらく行けばルシフェルが作った[道]がある。
そう思い脇道を抜けようと進路を変えた時だった。
背後から誰かが駆けてくる音がルシフェルの耳に入って来る。なんだ?と振向こうとしたルシフェルはその姿勢のまま前方に思いっきり吹っ飛ばされた。
「うおぉ!!」
地面に四つん這いになり背後を振り返ってルシフェルは眼を見開いた。
「よう!久しぶりだな役立たず」
そこには光の反射できらきらと輝く金色の短い髪をなびかせたルシフェルのよく知る少女が立っていた。
「お前!!来るのが遅いんだよ!どれだけ探したと思ってるんだ!」
ルシフェルは先程蹴られた背中をさすりながら立ち上がる。勿論蹴っ飛ばしたのは目の前の少女である。
「はぁ?別に逃げも隠れもしてないけど?お前らがトロいんじゃね?」
この少女は昔から口汚い喋り方をする。
黙っていればそれなりに綺麗な見た目なのだが。
「ファイ。さっさと要件をすませろ」
ルシフェルと少女が言い争っていると背後からすらっと背の高い紫色の髪の男が口を挟んできた。ルシフェルはファイと呼ばれた少女に問う。
「こいつは?」
「一応今パーティを組んでる私のかね・・・・仲間」
おい。今、金づるって言おうとしただろ?
二人の男はじと目でファイを同時に見た。
「で?あの阿呆は今どこにいんだよ?」
人の話しを聞かないファイにルシフェルはやれやれと首を垂れた。
ロゼはガルドエルムとラーズレイの中間に位置する小さな町にいた。
まだ身体が安定せず言う事を聞かないのだ。
(あまりゆっくりしても居られないれないけど。とりあえずなんとか誰かと合流して・・・)
そこまで考えてふと思う。
仲間を巻き込んでいいのだろうかと。
(もう十分巻き込んでる。これ以上は危険だわ。イントレンスも絡んでるし、ルシフェルもきっと反対する)
しかしロゼには他にどうしたらいいのか分からなかった。
しばらく宿の部屋でボーとしていると窓際から囁き声が聞こえてきた。
[あの子じゃない?何となく似てるし]
[えー?そう?全然似てないよ?]
「何?人の部屋で噂ばなし?」
森の妖精だろうか?
ガルドエルムの地にいる妖精よりやけに流暢に会話している気がする。妖精はロゼの近くまで来るとまじまじと見つめた。
[貴方ロゼ?]
「そうよ。私ってもしかして妖精の間でも有名なのかしら?」
[いいえ。本当に似てないのね。彼女ならあっちに行けって追い払うのに]
それを聞いてガバリと勢いよく身を起こす。
[すぐ近くに来てるわよ?貴方を探しているみたい。珍しく私達に声をかけてきたから・・・]
「ありがとう!」
ロゼは勢いよく立ち上がると部屋を飛び出す。
宿の外を出て辺りを見渡した。
すると町の入り口から見覚えのある二人の姿が見えた。
「マジお前役立たずだな!何の為にロゼの側にいるんだよ!ほんっっと使えねえ!」
「はぁ?そんなに文句があるならお前が見張ってろ!人に任せっぱなしでフラフラ遊び回ってる奴に文句を言われたかないわ!!」
「私はお前みたいに暇じゃねぇーよ!!大事な用事があるから旅に出てんだよ!お前と一緒にすんな!」
ハッとロゼは息を吐き出した。
言い争っている二人はロゼに気づいた。ファイは顔を怒らせている。
「テメェ!!ロゼ!」
「ファイ!!」
今にも殴りかかりそうなファイに向かってロゼは構わず駆けてきた。
おい!と、心配して止めようとするルシフェルの目の前でロゼはファイに抱きついた。
「ファイ!ファイ!!」
ロゼの震える身体を力強く抱き返しファイは怒った顔のまま言葉を吐き出した。
「お前が無事じゃなかったらお前を危険な目に合わせた奴等全員ぶち殺すとこだったぞ」
ルシフェルはゾッとする。
(その中に絶対俺も入ってるわー)
この二人は全く異なる性格や能力の持ち主だが反発し合う事がない。本当の姉妹のように仲が良いのだ。
「もしかして見つけに来てくれたの?」
「そうだ。お前がいきなりあんなもん召喚すりゃ知ってる奴はすぐに気づく。ギルドの間でもすでに噂になってるぞ」
伝説の邪竜である。
そんな物が現れればすぐに噂にもなるだろう。
「そうでしょうね。でも、きっと、アレを使った理由を聞いたらもっと怒ると思うわ」
ロゼは素直に自分の非を認めた。
「詳しい話は中でもいい?あとそちらの方を紹介してくれない?」
さっきから黙って傍に立っている男性に眼を向けるとファイは、ああ!と忘れてたとばかりに紹介した。
「こいつはサナ。ウィンドレムで私が無一物で野垂れ死そうな所で会った奴。世界を見て回ってるらしいから護衛する条件で連れてきた私のかね・・・仲間だ!!」
金づるって言おうとしたよね?
三人がいい顔で笑っているファイを無言でつっこんだ。
四人は事の経緯を聞いて沈黙した。
最初に口を開いたのは意外にもファイだった。
「で。お前はその魔人を探すのか?」
「それは・・・・・」
ファイはいつも率直に物を言う。
「お前がここで手を引けばお前は自由になる。元々お前には関係ない話しだしな」
その通りだ。
これはあの国のそしてバルドの身内の中の揉め事であってロゼには関係ない。ただ利用されただけだ。
「だがお前は竜を召喚した。その男を助ける為に」
ファイの眼はロゼと同じグリーンアイである。
その眼が静かにロゼを見つめている。
「何を迷っている?その男を愛したんだろ?」
「あ、あ、あい?」
それにはルシフェルが狼狽える。ロゼは助けを求めるようにファイを見た。
「一度決めたなら迷うな。どんな事をしても手に入れろ。どうせお前のことだ相手の立場とか気持ちとか無駄に気を回して中途半端な態度しかとらなかったんだろ?」
ズバズバと事実を言い当てられてロゼは前のめりになった。しんどい。
「自分の心に正直に生きることだけが私達に与えられた物だとお前は忘れたか?いつ死ぬか分からないのに何故躊躇していられる?」
ファイは嘘は言わない。そして誤魔化さない。いつだって自分がしたいように生きてきた。だからいつだってこの少女のことだけは信じられた。
「その魔人の女を捕まえて殺せば全て終わる。その後どうするかはまた考えればいい。シンプルだろ?」
「物騒だなぁ〜殺すとか。他に方法を考えないのか?」
ルシフェルの言葉にファイは冷ややかな目を向けた。
「その魔人が自分の愛する者を殺してもお前はそのセリフが吐けるのか?」
ルシフェルはその言葉には黙りやれやれと首を振った。
「ロゼ」
「何?」
「もう、いいんだな?アーシェの事は」
そう言われ眼を見開く。
「お前があの時の事を思い出さないのはアーシェが死んだ事が原因だろ。でも今はもう大丈夫なんだな?」
ロゼの唇がカタカタと震える。
そうだ。だからファイは今までロゼに何も言わなかった。
「あの女だ。私達を騙しあの村の封印を解き、村を滅ぼしたあの魔人。きっとあいつに違いない」
「パメラ・リュー。そいつが呪いをかけた魔人だ」
その名前を聞いた時ロゼの中で何かが、ざわりと湧き上がった。身体中鳥肌が立っている。
「何故わかる?」
今まで全てを黙って聞いていたサナの質問にファイは清々しいほど分かりやすく嫌そうな顔をした。
「本人に聞いたからだよ!自分は愛する者に呪いをかけたってガキ相手に秘密を漏らしても何も出来ないと思ったんだろうが」
「お前が追っているもう一つはそれか?」
サナが静かに問うとファイはチッと舌打ちした。
あまりサナには言いたくなかったらしい。
「そうだよ。アイツだけは許さない。絶対に私の手で殺してやる!!」
その瞳にはハッキリとした憎悪と怒りがみてとれた。
ロゼは思わずファイの手を掴んだ。
「分かったけど一人で飛び込んで行かないでよ?」
心配そうに言うロゼにファイはふんっと鼻を鳴らした。
「約束は出来ない」
「大丈夫だ。俺が見張っておいてやる」
サナの意外な加勢に思わずロゼとルシフェルが彼を見た。
「俺がコイツにいくら貸してると思う?全てを徴収するまで側にいるから安心しろ」
「「・・・・・・・・・・・・」」
その言葉で何となく事の経緯と二人が一緒にいる理由が理解出来た。
「・・・・ファイ・・・・・」
皆んなの非難の目線にさっきの空気は何とやらいい笑顔でファイは言い放った。
「大丈夫大丈夫!すぐひと山当てて倍にして返してやるって!!」
こりゃダメだ。
ロゼとルシフェルはその場に突っ伏した。




