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俺は寄生体(エリクシール)である  作者: おひるねずみ
第二章 エルキア王国編
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第三十一話 捕らわれの身

「んっ、ここはっ? どこだ? あれ? 腕が自由にできな…………手錠? 服も下着だけだし、それに首に首輪?」

「おはよう。どうやら気が付いたみたいねアナタ。気分はいかがかしら?」

「……最悪だな……頭がガンガンする。誰だか知らないが後頭部を思いっきり殴りやがって! で、ここはどこだ?」

「見れば分かるわよ……ここは牢屋よ……あたし達は捕まってここに運び込まれたのよ……」


 俺に、挨拶を掛けてくれた人は、女海賊風の赤髪の女性で、身長は俺と同じ位ある。

 俺と同じように、手首と首を拘束されており、行動が制限されていた。

 唯一の救いは壁に繋がれてない事か。

 起き上がり周囲を見渡すと、壁は茶色い岩盤で出来ていて、洞窟にいる様な雰囲気だ。

 俺の前には鉄の棒の柵があり、目の前の牢屋には三人ずつ捕らわれた人がいる。

 どうやら牢屋一室につき、三人入れられている様だ。

 俺が閉じ込められている牢屋には、俺と二人の女性の計三人だ。

 その内の一人は幼女で、俺を見て酷く怯えている。


「酷いな……そんな年端もいかない子供も攫うのか」

「本当に最低ね。けど、アナタ。あたしの胸ばかり見てるけど、隙あらば襲うつもりなのかしら?」


 あら? 視線で胸見てた事バレてましたか。

 仕方ないじゃん。下着姿なんだから! それにスタイルもいいし。

 なるべく顔を見る様にはしてるけど、自然に視線が下がってしまうんだよ。

 男のサガなの! 勘弁して下さい。


「貴方みたいに綺麗な人は滅多にいませんから……その、すいません」

「ふう~ん? まあ、いいわ。綺麗に免じて許してあげるわ。アナタ、名前は?」

「これは失礼しました。紳士の俺とした事が。名前はエリクシールと言います。長いのでエリクでいいですよ。以後お見知りおきを」

「面白い人ね……リナよ。で、あたしの後ろに隠れてるこの子がアリスよ」


 俺が近づこうとしたら、アリスがグズつきそうになったので近づくのを止めた。

 ハァ~、泣きたいのはこっちだよ。

 近づくだけで幼女が泣いたら、俺の心は粉々に砕け散るぞ。


「アリスちゃん。エリクは悪い人じゃなさそうだから安心して、ね」

「うん、リナお姉ちゃんが言うなら……」


 容姿は全く似てないけど、まるで、歳が離れた姉妹だな。

 微笑ましい光景で安らぎを与えてくれる。

 ここが牢屋でなければ、どんなに良い事か。


「リナさん。質問ですが」

「リナでいいわ。こんな味気ない所だし、普通に接してくれて結構。さんづけは不要よ」

「分かった。リナ。これから俺達はどうなるんだ?」


 リナは少し思量したのち、顔を上げて現状を打ち明けた。


「先程ね、別の牢屋にいた人が牢屋から出され連れていかれたのよ。その時、迎えに来た偉そうな男が『喜べ、お前は私が買い取った!』って言ってたから……もう分かるでしょう?」

「つまり、ここでは人身売買が行われていて、俺達はその商品……つまり、奴隷なのか!?」

「ビンゴ。その通りよ。手が使用できなく、この手錠がどうやら特殊に出来ていて魔法も使えない。おまけに、この首輪には魔力が込められていて、この牢屋から出ると激痛が生じるそうよ。正直、お手上げよ……」


 完全に油断していた。

 そうだよ、ここは日本じゃない。

 異世界なんだ、真昼間から誘拐が起きる事もあると、認識を改めないといけない。

 ちやほやされて、危機感を感じていなかった俺のミスだ。

 まさか自分が誘拐されるなんて思ってもみなかった。


 それにしても、これはあんまりだろう。

 目が覚めたら、王様から奴隷に転落って、どうなってんだ! ああ、こんな事になるなら、あの三人の護衛の任を、一時的にでも解除するんじゃなかった。

 もう、全てが遅すぎる。

 ナーヤと二度と会えなくなると思うと、悔しさを通り越して悲しみで涙が止めどなく溢れてくる。

 止めたいのに止まらない。

 感情を殺したいのに、後から後へと悲しみの感情が流れ込んできた。


「ハァ~、しょうがないわね~」

「な、なにを? ムゥ!?」


 リナは俺に近寄り、俺の顔をご自慢の胸に押し込み、頭を撫でて癒してくれていた。

 まるで母親が子供を落ち着かせるように。

 数十秒経過し、俺が泣き止んだ事を確認してリナは体を離した。


「すいません……大変お見苦しい所を、お見せしました」

「別にいいわ、泣きたい時は泣いた方がスッキリして冷静になるものよ?」

「そうですね、お陰で目が覚めました。ありがとうございます」

「エリクお兄ちゃんは、泣き虫なんだね」

「うっ!? それは、否定できないな」


 子供に泣き虫呼ばわれされると、流石に辛いな。

 ここは大人の対応で、グッと堪えないと。

 事実、目の前で泣いたから否定できない。

 否定したら、己自身の器の小ささが露呈してしまう。

 けど、泣いた意味はあった様だ。

 アリスの表情が、俺の泣き顔を見て、幾分か柔らかくなった気がする。


「エリク。先程のお礼をしたいなら、あたし達をここから連れ出す事でいいわよ?」

「アハハハっ。ちょっと、難易度高過ぎですよ。どう考えたらそんな思考が出来るんですか?」


 ん? リナの様子がおかしい。

 片面の右側の口を吊り上げ、ニヤリと笑ってる。

 何か悪い事を企んでそう。

 俺の直感が警告を発している!

 

「もしも助けてくれなかったら、あたしが貴方にした事を人にバラすわよ?」

「へっ? それは、貴方が勝手にやったことですよね。それに、穴があり過ぎじゃないですか? 人に喋っても……あー……」

「うふふっ! どうやら気付いたみたいね。看守にも喋っても、よくってよ? それとあたしが売られたら、同じ奴隷になった人にも話すけど、噂って怖いわよねぇ~、いつの間にか尾びれが付いて膨らんじゃうから、気が付いた時には噂がねじ曲がって伝わるかも……ね(にっこり)」


 悪魔だ、人の皮を被った悪魔がここにいる。

 さっきの行為は、この為の伏線だったのか! きっと、捻じ曲げて伝えるに違いない。


「わ、わかりました。善処しますが、期待しないで下さいよ?」

「わかってるわ。気を紛らわせたいから言っただけよ。気にしなくていいわ。アリスちゃん。お兄ちゃんが助けてくれるそうよ」

「ほんとうに? なんだか頼りなさそうだよ?」


 グハッ! 今の言葉は、ガラス細工の俺の心に来たね。

 それはもう「グッサグサ」と、刺さって亀裂が入ったよ。

 後は、割れるだけだ……あと一言で、俺は死ぬ! 


 場が和み、知っている情報を共有していると、靴の足音が聞こえ、徐々に靴音が近づいて来た。

 足音の発していた者達は、俺達が入る牢屋の前で足を止め、牢屋の鍵を開けた。

 目の前には、平凡そうな男達が二人とガタイがいい人物が一人。

 俺は、すかさず強さを見てみた。


 名前:モヒカン・リッチィニ♂

 種族:人間

 職業:盗賊副頭

 レベル:39

 ランク:Eクラス

 HP:455/455

 MP:150/150

 STR:99

 VIT:95

 INT:49

 MND:41


 名前:ボッゴラ・ローテス♂

 種族:人間

 職業:盗賊

 レベル:31

 ランク:Eクラス

 HP:253/253

 MP:90/90

 STR:77

 VIT:70

 INT:34

 MND:31


 名前:アクビ・ヒデオ♂

 種族:人間

 職業:盗賊

 レベル:21

 ランク:Eクラス

 HP:122/122

 MP:87/87

 STR:54

 VIT:52

 INT:33

 MND:24


 おっ? 手錠さえ無ければ、一人くらいならどうにか出来そうな気がする。

 寄生したいけど同ランクだから、寄生は無理そうだな。

 寄生できれば、ここの場所や組織の規模も分かったんだけど、今は行動は起こせそうにない。

 


「そこの嬢ちゃん、こっちへ来な。身内が迎えに来たぞ」

「えっ!?」


 盗賊のモヒカンが伝えた言葉により、俺の思考が加速した。

 リナとアリスは同様に表情が硬く、驚きを隠せない。

 モヒカンがアリスを牢屋の入り口まで誘導し、首輪を外してアリスを外に連れ出した。


「おい! 身内が迎えに来たって、どういう意味だ!?」

「そのままの意味だ! お嬢ちゃんの身内が金を揃えたんだよ……ん? コイツは新入りか?」

「へい。さっき、連れて来たばかりですぜ」

「けっ、生意気な目をしてやがる。ボッゴラ、アクビ。少し痛めつけておけ」

「兄貴、了解でさぁ!」


 ボッゴラとアクビは「武器何ていらねぇ!」と息巻いて、牢屋の外に待機している看守に、腰に下げている剣を渡し、牢屋の中に入って来た。

 モヒカンはアリスの手を握り、牢屋の外に出て待機している。

 俺がボコボコされるのを見物するのが楽しみなのかもしれない。ヤな奴だ。

 ボッゴラとアクビは両手を左右に広げ、うすら笑いを浮かべながら、じりじりと距離を詰めて来る。

 リナは、俺の後ろで迫ってくる二人に対して、軽蔑の視線を飛ばし、嫌悪感を感じているのが見て取れた。

 俺は相手に感づかれないよう、液体を霧状にして飛ばし、寄生しようとしたが、体内に入っても手ごたえが無く、無効化されている。

 寄生して操る事は、やはり出来そうにない。

 くそっ、どうしたらいい! カウンターを狙ってる相手二人に、攻撃なんて馬鹿な真似は出来ない。

 振りかぶりがミスしたら、それで終わりだ。

 状況から見て、既に詰んでるな。

 なら、突撃するしかない。

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