アッシュ・エルフ・ディンの場合
アッシュの場合
俺は憂鬱していた。長期間なクエから帰ってきたら、冒険ギルドマスターから緊急クエが出されてしまった。フェザン山が突如爆発したから調査してほしいという内容だった。
フェザン山は大陸一番の大きい山で魔物も大物が多く、危険度が高い。俺くらいの冒険者ではなければ、まともに調査できないだろう。それは充分理解できている。しかし、納得いかない。他にも暇そうな人がいただろうに。いつも絡んでくるしつこい勇者ディンとか。
早目に調査して帰り、寝たいと一心だった。今もそれが現れているかのように風魔法を使い、平原を滑走していた。
「ん、あれは?」
目を細めて見ると黒色の物体、どうやら、人のようだ。それに女性のようだ。
「女性がなぜこんな平原に?」
この平原は狼とゴブリンのみが生息していて、危険はそんなにないが、ゴブリンがいる平原には近づかないだろう。ゴブリンは繁殖の為に女性を拐う性質がある。
それ故にゴブリンは女性の中では嫌いな魔物になっており、ゴブリンがいる生息地には冒険者の女性でもあんまり近づかない。ましてや、普通の女性もだ。もしや、ゴブリンに拐われて脱走出来たのか
「おーーーい!そこの方、待ってくれーーー!」
その女性に呼び掛ける。女性は声に反応して、後ろに下がり警戒の素振りを見せた。不安なのだろうか。
両手を挙げ、さらに呼び掛けた。服見たこともないな。女性はスラリとした細長い足。見たことのない生地が良さそうなひざ上くらいのスカート。上着も見たことないな。また上着からでもわかるほどの胸とスタイル。肩にかかるくらいの黒い髪。顔は小さく、鼻筋通っていて、目は大きく、きりっとした目だ。唇も柔らかそうで全体的に整っている。美しい。今まで女性を見た中で一番の美しさだ。
「道に迷ってしまって、町はどこですか?」
聞こえてたが反応できなかった。これが一目惚れなのだろうか。自分の頭が壊れているかのように反応しない。道に迷ってるのか。だから、俺と出会ったのか。いや、そうじゃない。困っているんだ。助けなければ。決してやましい心はない。
「は!問題ありません、町はそうですね・・・コンパスを貸しましょう。コンパスで西の方に行けば問題ありません」
女性はお辞儀をして、感謝の言葉を述べた。
「ありがとうございます。調査頑張ってください」
「はい!!!!」
俺は山の方へと走っていった。さっきまでの憂鬱な気分が嘘のように晴天のように無くなっている。一気に疲れがどこかへと飛んでいったようだ。
「あ・・・名前きくの忘れた!!!」
自然と声を出していた。反応したのはやまびこだけだった。
エルフの場合
森から飛び出して早数か月、冒険者となったが、まだ未熟者だ。私の力では平原の敵で精いっぱいだ。今日もいつも通りに獲物を狩るだけだ。強くなりたい・・・・
先輩であるアッシュが風魔法を使い、平原を走っているので獲物は逃げていき、今日は何も獲れてない・・・まずいな。
前方を見ていると狼がいた。狼は何やら、鼻を嗅いでいて、慎重に歩を進めている。獲物がいるのだろうか。ゴブリンだろうか・・・
狼の先を見てみると、黒髪の女性が何やら考え事をしており、狼には気づいてない様子だな。狼はにやりと笑うような表情を浮かべ、一気に女性に飛びかかった。
女性はやっと気づいたのか、へたり込んでしまった。それを狼は見逃せない。狼が目の前の命を刈り取ろうとした。しかし、俺は捉えており、弓で頭を射た。狼は飛びかかった勢いで死んだまま、狼はへたり込んだ女性の上に乗った。
これではたてないだろうな。女性を立たせる為に手を差し伸べた。
「ほら・・・」
女性は可憐だった。どこか品を感じさせる顔。そうだ。これはハイエルフの女王にそっくりな品位だ。私は見惚れていた。
んいや、今は冒険者だ。うつつをぬかす暇はない。それより、獲物の素材を獲ろう。素材は魔石か。珍しい。まるでこの出会いを祝福してみるみたいだ・・・・
「・・・やる」
気が付いたら、女性にあげていた。頭の疑問が残る。まぁいい。他にも獲物はいる。しかし、彼女は可憐だ。
こちらの目線に気が付いたのか、女性はこちらを見た。
自然と顔をそらす。何だろう。この気持ちは。
さっさと獲物狩って帰ろう・・・・・
他の獲物を探すべく、その場を去った。
ディンの場合
くそ、逃げられた。家の前で待ってたのに。
急げば間に合う。アッシュを追う。いつもより駆け足をし、土埃が起きているが関係ない。
聞けば、あいつは長期クエに引き続き、緊急クエまでやってる始末。
さすがは俺のライバル。俺とマスターに期待されてるだけはある。しかし、先越されるのは頂けない。俺はアッシュに勝つ。絶対に勝つ。
「アッシュに先越された!!!!ちくしょーーーー!!!!!」
目の前に誰かいるな。アッシュか!止まれ!俺の足!
変な音を立てて、やっと止まった。しかし目の前にいたのはアッシュではなく、黒髪の女性だった。
「ん・・・お前はなんだ?」
「け・・・・ほ、俺、「俺?」私は沢谷光。道に迷ってしまった」
俺か。変な事いうな。この女性。
土ぼこりがはれると、女性は黒髪に埃がかかってしまい、目を手で擦っていた。涙が出てるな。
申し訳ない事したな・・・・
「ああ、悪かった。大丈夫か?」
髪についている埃を手で払って、涙を拭った。ようやく顔を見れた。
顔は今まで見た事のない美しさで、頬を伝わった涙の跡があるが、それも相まって、美しい。
「・・・・名前を沢谷光と言ったな。光」
自然と名前を呼んでしまった。馴れ馴れしいと思ってるはず。しかし、そんなことはどうでもいい。
自然とこの言葉を言った。
「付き合ってくれ!」
「いきなりですまないが、一目惚れした。貴方は美しい、是非付き合ってくれ」
流石に初対面でこれはないだろうと思うが、どうでもいい。これを逃したら一生機会がないかもしれない。
「さっきアッシュに先越されたと言ったけど大丈夫か?」
「は!?むむむ・・・・」
その言葉で現実に戻されてしまった。そうだ、アッシュだ。俺としたことが、アッシュを追いかける為にここまで来たんだ。
目の前の沢谷光に会う為ではない。しかし、告白の返事を聞いていないが、アッシュが最優先だ。
「仕方ない。俺は勇者ディン。フェザン山の調査が無事に終わった後、是非俺と付き合ってくれ!さらばだ!」
俺は無事に帰って沢谷光と付き合うんだ。何度も心の中で繰り返しながら、走った。




