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不幸は不幸を呼ぶらしい

 

 夜の帳が下りた頃、辺境と言われる、寒村コブスの入り口付近に盗賊らしき男たちが集まっている。


 このコブスという、お世辞にも立派に見えない集落は、俺の生まれ育った村で

農村らしく点々とレンガや藁葺き屋根の貧相の家が畑を挟み離れて建っている。


 この農村入り口の景観も見慣れたものだが、いつもと違うといえば、この男たちに首筋に短剣が突きつけられている。


男たちは12人、13人目の俺といえば、盗賊でも冒険者でも村人でもない。

いや、正確に云えばつい先日までここの村人であったが、ていよく村を追い出された不幸の少年である。

 不幸は重なるもので、街道でこの盗賊共に捕まり略奪の手引きをさせられているのであった。


 餞別としてもらった金貨5枚を巻き上げられ、断れば拷問に掛けて殺すと脅され仕方なしにだ。

「言うことを聞け、知っていることを全部言えば命までは取らない」

なんの血か解らないが乾いた血がこびり付いている短剣と、この恐ろしい魔法の様な言葉におびえてしまった俺は前面服従であった。

 盗賊共に村の配置図を小石と地面の指で描いた、おおまかな地図、村にある武器の情報、犬のいる家、男の人数等を聞き出され罪悪感に昨日から苦しめられている。

 心の中の、もうひとつの自分が「おいおい、俺よ、いいのかこれで?」と悲鳴をあげるが、どうしようもなかった。

だって逆らうと本当に殺されそうなんだもんと、もう一人の心の中の割と小さいほうの自分に告げる。

今までの状況では、逃げる、逆らうはもちろんのこと、この凶悪そうな顔にすごまれると嘘もつけそうにない。

「なんで俺が・・・」

ため息に混じり愚痴が出た・・・たしかになんでこんな不幸なんだろうと。



 「よし、おまえら手はず通りに動け、行け!」

 この盗賊の首領らしいスキンヘッドの大男が指示をする。額の右側にスペードの刺青があるもっともらしい盗賊だ、だがアイパッチはしていない。

 「今度の仕事は楽勝っすねー、なんたって僕ちゃんのおかげでよー、ウヒヒヒヒッ」

 頭の悪そうな手下が下品な笑いをする。

 「ちがいねぇ、今回はどこに家があるか、そこの家族構成まで解るなんてよ、こんな楽な仕事はなかったぜ」

 別の手下がにやけながら言う、どいつもこいつも頭の悪そうな凶悪な顔で、うすら笑いしていて手馴れているようだ。

 「無駄口叩いてねーで、ととっといきやがれ!女はふん縛れ、男は抵抗するようなら殺せ、いつも通りだ」

 首領らしい大男が舌打ちしながら指示を出す。

 「へい、へい」

 「可愛い娘ちゃんがいるといいなー」

 「おいこら。今度こそおれが一番だぞ」

 「仕事をしたあとは、酒と女両方あるといいな」

 「おいおい金がメインなのを忘れるなよ」

 「まったくだ」と皆、声が響かない程度に笑っていやがる、(まったく笑えねぇよ、この野郎)心の中で少し反抗をしてみたが、なにもできない自分が恨めしく思う。


 「よしいくぞ」誰かの合図で、手下共が、ロープと短剣を手にし散開を開始する、これから略奪が始まろうとしている。

 盗賊共の背中を見つつ思ったのが、俺これからどうなるのだろう、いつ殺されるのか?略奪が始まれば用済みと、今まさに殺されるのか?、略奪がおわるまでは生きていられるのか?自分を中心にどう考えても足が震える。

 そりゃ村を追い出された時は、やけくそになってこんな村みな死んじまえと思ったが、実際自分の所為で死人がでるとなると、ちょっと引いてしまう。

今殺されれば、村の悲劇はみなくてもいいが、女の味ぐらいは知っておきたかった。

 なぜなら、取り上げられてしまったが餞別の金貨で娼館に行くつもりだったのだ。順調に街道を進めば5日ほどで港町にそれはある。


 娼館という言葉で、恐怖のあまり活動を停止していた脳は別のことを考え始めた。

 今の状況は、俺がいなくても盗賊はここに着たかもしれないし、抵抗がなければ死人はでないんじゃないか?

可愛そうな少年を村を追い出した罰があたったんじゃないのか?都合よく俺は考える。


 でも、心の中で必死に罪悪感を軽減しようと考えてみたが、やはり略奪と陵辱をこの村は避けれそうに無い。

 実は盗賊共が「とりっくおあとりーと」とか家を回ることも無いだろう。

「じゃあ皆さん頑張ってください、お先に失礼しまーす!」言ったところで開放してくれそうもない。

ここで一瞬の隙を突き「盗賊だーみな逃げろー!」と叫べばおれは死ぬが皆は助かるかもしれない。

寒村であっても盗賊の12人より男手は多いし、狩猟で使う弓や武器となりそうな農具は各家庭にある。

たしか村の名代の家は貴族の傍流で騎士が着るプレートメイルのような防具があった。

この盗賊共は半分が、レザーメイルと楔帷子の様な軽装である、村の兵力で撃退もできるかもしれない。

 村の危険と自分の命の危険を考え少し天秤に描けている時、棟梁らしき男が、

 「まー上手くいったらお前にもおこぼれっぐらいやるからよ」

ドスが利いた声で言ってきた、棟梁らしき男の眼は笑ってはいなかったが、その一言で天秤の針が一気に自分の命側に寄った。おこぼれって女のことだよな、眼の前が一気に明るくなった気がした。

 そうだ盗賊になろう、これしか選択肢は無い、村人の皆、ごめん俺の幸せの踏み台になってくれ。

美人の義姉と幼馴染でついこないだまで婚約者であったエリカをおこぼれという言葉でまっさきに思ったときに激しい頭痛に見舞われのであった。







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