死を迎えてしまった。
3度目となる人生は転移を選択。
幼いまま人生が終わってしまった悔しさと、せっかく手に入れた異空間収納や空間ウインドウといった能力を失うのには気が引けたんだ。
転移した直ぐは、この世界で生きていけるか不安だらけだった。
だって、ファンタジーな世界そのものだったもん。
剣と魔法が交差し、異種族抗争等々、小説の中で語られるような事が日常茶飯事。
不安に成るさね。
幸い、この世界で1人の男と知り合い、生き抜く術を教えられた。
彼は70才後半ぐらいだったが、ある特別な職の者だった。
それは錬金闘士と呼ばれるもの。
平たく言えば、錬金術士兼武術家。
無論、各々の専門職の者に比べれば、極められる高みは低い。
だが、己の武具に、自分の使い勝手に合わせた能力を自分で付与出来る。
この世界で平和に生き抜く為には非常に効率が良かったんだ。
因みに、彼の能力は、錬金術4、武術3と至って平凡。
空間ウインドウの機能を使って能力を盗み見したから知ってる。
ばれて無いから良いよね?
ダメ?
・・・ゴメンちゃい。
それはさておき、彼との生活は楽しかった。
一緒に狩りをしたり、稽古をつけてもらったりしながら過ごした。
だが、そんな生活は4年で終わる。
周りからも評価される強さで無双し続けた彼。
だが、病には勝てず、俺の見届けるなか永遠の眠りについたんだ。
心から信頼できる人を失った俺は、彼と過ごした地を離れる決意を固めた。
この地で1人で生きていくには、心の拠り所もなく辛かったからだ。
それに、いつの間にか俺にも錬金闘士の称号が備わってた。
恩人の死の前には無かったスキル。
だが、旅に出ると決め、ふと自分のステータスを確認すると、追加されていたんだ。
俺の能力振り分けは、錬金術3+5(異空間収納補正)、武術2+3(空間ウインドウ連動補正)
補正値合算で武術が5。
これは、この世界においての専門職では、中級に位置する。
錬金術に至っては8で、これは上級ランクだ。
恩人の能力値で他を圧倒出来る無双ぶりだったから、俺はチートすぎるぜ!と有頂天。
ところがどっこい。
それは、あくまでもスキル値の話であって、身体的能力は、彼とは雲泥の差が有った。
そう、レベルが違ったんだ。
恩人はレベル50。
対し、俺はたったの10。
つまり俺は、高度な技や体術、錬成は出来るが、使用可能数が極めて少なかったんだ。
と、気が付いたのは、旅に出て多くの魔獣に囲まれた時。
俺はまたしても死を迎えてしまった。