一撃でしかない。
そこから先、彼の声を聞くことは2度と出来なくなった。
「ククク・・実に愉快ですねぇ。助けようとした獣族人の童を、託そうとしてたお気にいりの女が、わざわざ連れてここに来てくれるとは、本当、有難い限りですなぁ」
地に響く不気味な声で語る男は、ブラドの胸に貫通させた大太刀を突き刺したまま不適な笑みを溢した。
俺たちの出現に注意がそれたブラドは、直前迄対峙していたのであろうこの男に隙を見せてしまい命の灯を摘まれた。
「しかしまあ、よくもここまで見事に私の体を痛め付けてくれたものですねぇ」
奴はそう言いながら、ブラドに突き刺した大太刀を引き抜き、首を左右に振って“コキッ!コキッ!“と鳴らした後、大きく首を回す。
一回りして、顔が元の位地に戻ると
「雑魚のぶんざいで!!」
怒りに満ちた顔に変わり、絶命していながらも立ち続けるブラドの腹部へ浅めに大太刀を再び突き差して、そのまま大きく振り上げる。
それは剣運びの勢いで俺たちの前に、ブラドを放り投げる動作だった。
よく現状を見れば、奴の後方には数十人の男達が武器を手に待機し、俺たちの後ろには、まともに武装もしてない人達が纏まり、震えかたまっている。
ブラドは奴等にこれ以上の進行させないよう、身を挺して必死に阻止していたのだろう。
「イ、イヤァァァ!!」
エリーザの声が集落全体に響き渡る。
彼女は龍化して基本となる能力が一般人離れしていても一人の女性でしかないのだ。
そして俺はブチブチブチっとなにかが弾け、考えるより先に体が勝手に動き出す。
今の俺に、善悪の意識なんて無い。
ただ激しい憎悪だけは感じていた。
前世で恩人あり俺の錬金闘士の師でもあった人に頂いた長剣を異空間収納から取り出す。
それを手に、目の前の男の懐に飛び込み胴を目掛け水平に剣を振る。
奴は俺の動きに目を丸くするが、戦場慣れしているらしく、大太刀を俺の剣筋に合わせ垂直に構えた。
俺の長剣と奴の大太刀がぶつかり“ガキ!“っと鈍い音をたて、胴を狙った一振りが不発に終わった事を告げる。
ニヤニヤっと俺を見る奴の顔が気色悪い。
だが俺にとってこの一撃は有効打になろうがなろまいが、どちらでも良い一振りで、今回は止められた故に、そのまま相手の大太刀に合わせて長剣をあることをしながら滑らせる。
自分の能力に自信があったであろう奴のニヤケ面に焦が生まれ始めた。
たぶんそれは俺の剣の動きに対してではなく、自分の手に伝わる痺れに対してのものだろう。
俺の師匠をナメるな!
普段は何の変哲もない長剣だけど、鞘から剣身を引き抜く際、強い電撃が剣身に付与される剣なんだ。
ただしこの効果もついで程度で、この一振りは剣身を抜くためだけの一撃でしかない。




