表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダブルイメージ  作者: ナメゐクジ
第2章
9/29

第9話「NEO PROLOGUE」

え?サブタイ縛り辞めたのかって?ハハハやだなぁ。そんな訳無いじゃないですか。無い…じゃないですか…。ハハハ…

俺は、目の先にある洞窟を見て深呼吸を吐いた。

約束はしたんだ。破らない訳にもいかない。それに借りもあるしな。


俺は決心を改めてその洞窟の中に入った。


【フェアリー? 来た…】

【バニッシュさああああああああん!!!!!!】

「グオォ!?」


フェアリーは、俺の腹にいきなりタックルしてきた。

いや、フェアリー的には抱きつきのつもり何だろうが、あまりにも速度が速すぎて俺は口から何か吐いた。俺何吐いた? 臓器?


【! どうしたんですかバニッシュさん! まさか…まだ怪我が完全に治ってないのにあたしに会いたい一心で…!】


【んな訳あるかぁ!!! たった今怪我したわ!!!】


相変わらずのフェアリーに、俺は怒りに任せて怒鳴った。

それでもフェアリーは「えへへ」と笑うだけだった。


クソ…これだから扱い辛いんだこいつ…。




ーーーーーーーーーーーーーーーー




【じゃあアレから、ドラゴンは人間の街には来てないんですね?】


【あぁ、あんま期待してなかったけどな】


【あたしはバニッシュさんが無事ならそれで良いです…うふふ…】


【そうか…。なぁそれよりさぁ…】


今まで我慢してたが、流石に我慢の限界だ。俺は隣のフェアリーを見た。

フェアリーの顔は、もう目と鼻の先だった。


【近すぎない?】


【え? そうですか?】

【そうだよ】


惚けるフェアリーに、俺は反射的にそう返す。


【何? 何でそんな近いの? いきなりキスされそうで怖いんだけど】


【キス!? そ、そんな…バニッシュさんもうそんな事…】


【おい】


【でも良いですよ! 寧ろウェルカムです! あ、どうせならキスの次もやっときます?】


【おい】


【えへへ…遂にあたしもバニッシュさんと…キャー】


【話聴けよストーカー】


駄目だこいつ話にならねぇ。もう帰ろうかな。


【あ、そうだ。例の毒の話は何か分かったんですか?】


おぉう、いきなり話題変えてくるな。ちょっとびっくりしちまった。


【あ、あぁ…。それが…やっぱりおじさんにも分からんらしい】


そう、毒の話というのは俺がドラゴンスレイヤーにワイヤーで刺された際に意識が朦朧とした話だ。


フェアリーにはこの事を話しており、後に俺の正体に気付いた元ドラゴンスレイヤーのおじさんにその事を質問した。

だが、おじさんが所属していた頃にそんな毒を使うなんて話は無かったらしく、その後も調べてくれたが、やはり理由は分からなかった。


【へぇ〜…でも、バニッシュさんはあのワイヤーを刺されて、意識が朦朧としたんですよね?】


【まぁな。ドラゴンスレイヤー側も予想外だったらしいぞ】


【そのワイヤーだけ特別製だったとか】


【だったらドラゴンスレイヤー側も分かってる筈だろ。「ニーベニウム」について調べても、何も分かんなかったしな】


「ニーベニウム」とは、ドラゴンスレイヤーが使う人工金属だ。

ドラゴンスレイヤーの大抵のものはこのニーベニウムで造られている。


ニーベニウムの製造には「魔断石」が使われている。自然にある不思議な鉱物だ。

この鉱物は名前の通り、原理は不明だが「魔力を遮断する」という効果があるとされている。

だから人間側はこの魔断石を重宝しており、それでニーベニウムを造っているのだ。


まぁニーベニウムと魔断石共通の欠点としては、「ドラゴンが触れていないとそのドラゴンの魔力を遮断できない」と「魔力を遮断されるとドラゴンはテレパシーが使えない為、コミュニケーションが取れない」というのがあるのだが。


しかし、そんなニーベニウムには「ドラゴンの意識を失わせる」なんて効果は無いはずだ。

実際、キューピッドはワイヤーを撃たれたが平気そうだった。あの時ドラゴンスレイヤーがワイヤーを撃ったのも、俺と他のドラゴンの反応の違いを見る為に撃ったのもあるのかもしれない。


そうなると、問題は俺にあるのか…?


【う〜ん…じゃあ製造に使われた魔断石が特別製だった? そうじゃないとしたら……やっぱりバニッシュさんが人間と融合したのが悪かったんじゃないですか?】


だからキミはいきなりズバッと来るよね。いやまぁ俺も考えてたけどね?


でも確かに、俺の方に問題があると思ってもおかしくねぇよなぁ…。だって俺異常だし。


【……バニッシュさん】


【ん? 何だ?】


【もし、またドラゴンが人間の街に現れたら、戦うんですか?】


【? あぁ】


こいつはいきなり何を言っているんだろう。

そんな事、分かっていると思っていたんだが。


【でも、あのドラゴンスレイヤーにバニッシュさんと融合した人間のお父さんがいるんですよね? あの人間…言ってましたよ? 容赦はしないって】


あぁ何だそんな事か。

そんなのとっくに覚悟は決めている。


【良いんだよ。だったらやられない様に気を付けるだけだ。お父さんも、大切な人を助けたいんだ。俺と同じさ】


【でも…】


落ち込むフェアリーの頬を、俺は両手で触れた。

フェアリーの桃色の鱗が、赤くなっているのが分かる。


【お前が思い出させてくれたろ? 大切な人を守りたいから戦うんだ。俺はそれを変えない。今も、これからも…】


【バ、バニッシュさん…】


【まっ、罪滅ぼしみたいなもんだけどな】


俺は手を離して笑顔でそう伝えた。

フェアリーはしばらく呆然としていたが、すぐに微笑んだ。

どうやら彼女も、分かってくれた様だ。


【……分かりました。あ、バニッシュさん…】


【ん? 何だ?】


【さっきのもう一回…】

【やだ】



ーーーーーーーーーーーーーーーー



本当に災難だった。


僕は人通りの多い歩道をヘトヘトになって歩いていた。


「おっ。おーい! アピアスー!」


あ、クリントだ。


どうやらクリントはここで買い物してたみたいだ。

クリントはレジ袋を片手に僕の方へ駆け寄っていく。


「もう怪我大丈夫なのか?」


「う、うん! 意外と速く治ってね!」


「意外と…って…。まだ3週間しか経ってねぇぞ?お前確か、6週間入院って…」


「え、えっと…ほら! 僕牛乳飲んでるじゃん!? それで骨が治りやすくなったんじゃないかな〜? ハハ…」


「お前…言うほど牛乳飲むか?」


うぐっ。


痛いところを突かれた。でもこういう言い訳をするしかない。「僕にはドラゴンの治癒力があるんで」なんて言ったら何されるか分かったもんじゃない。


「ま、まぁいいや治ったんなら…。学校は? 月曜から行くのか?」


「うん! 今日が土曜で助かったよ。おかげでゆっくりできるしね!」


「そうだな。月曜からテストな事だしな」


「えぇ!?」


そんなの初耳だ。

うわぁどうしよう…この3週間勉強という勉強をしてないんだけど…。


「予定通りだったらテスト受けずに済んだかもなぁ〜。お前ホント運ねぇな」


「うぅ…そんなぁ…」


マジでどうしようテスト…。

これ、先生大目に見てくれたりするかな? いやするよな? だって手が使えなかったんだもん。勉強どころじゃないもん。そうだよ。大目に見てくれるよ。多分。


「にしてもよ、平和だよなぁ最近」


「え? ……うん…そうだね」


突然そんな事を言い出したクリントに驚きながらも、僕は微笑みながら答えた。

確かに、アルゴラのアップデートからドラゴンの襲撃事件は一向に起きていない。平和そのものだ。


「リーシャも少しは元気取り戻してるらしいぜ? ドラゴン来んのが無くなったおかげかもな」


「え!? 本当!? リーシャ元気なの!?」


「あぁ、最近は毎日ベッドから出れる様になってるらしいぜ」


「そうなんだ…良かった…」


僕はリーシャが元気にやっていると聴いて、とても安心した。

動物園の事件から、また塞ぎ込んでしまっていたらどうしようとずっと不安だったのだ。

でも、その心配もいらなくなったらしい。


「あ、そういえばさぁ…」


クリントが何かを思い出した様に話を始めた。


だがその時…


【聞こえるか。我が友よ】


え?


【我々は「ネオプロローグ」。キミ達の仲間だ】


ネオプロローグ?

何のことだ?


【これが聞こえるという事は、キミ達は特別な存在だ。それも、多くの者達は自覚しているだろう】


これが聞こえるって…これテレパシーだよな?それに無差別の。

そりゃ無差別のテレパシーなら、ドラゴンなら聞こえて当然だと思うけど…。


【政府が我々に対して攻撃をしてきた。それは許されない事だ】


政府が攻撃? ドラゴンスレイヤーの事か?

でもそんなの昔っからあった事じゃ…。


【我々、諸君の力が欲しい! キミ達の中には、迫害を受けた者もいるだろう! だがそれも終わりだ! 我々と共に、新時代の幕開けに向けて共に歩もうではないか!!!】


迫害? ちょっと待て。一体何の事だ?


「おいアピアス?」


「ふぇ!? な、なななな何!?」


いきなりクリントに声をかけられた。

いけない。テレパシーに集中し過ぎてクリントの事を忘れていた。


「またお前…何か考え込んでたのか?」


「い、いやいや! べ、別に何も無いよ!? ……あぁいや嘘! 実はちょっと考え事はあったんだけど…大丈夫! プライベートな事だから!!!」


「はぁ? お前ホント大丈夫か?」


「うん! 大丈夫! 考え事も大した事ないから!!!」


「……そうか…。じゃあ、月曜な」


「う、うん! またね!」


危ない危ない。危うくバレるところだった。

というか、クリントに対していっつもこんなやり取りをしてる気がする。僕もいい加減気を付けないと。


さて、あのテレパシーは…


…………

………

……


聞こえねぇ…。


あの野郎…俺とクリントが話してる最中に話終わらせやがったな…。

一体何なんだよアレ。ネオプロローグ? とか、特別な存在? とか…あぁもう! 全く意味が分からん!!!


というかテレパシーが流れたって事は、近くにドラゴンがいるって事だよな?

でも今のところ姿どころか匂いもしねぇぞ? まさか…そういう魔法か?


……クソッ考えたところで何も分からない。

魔法についてはドラゴンでも全部知ってる訳じゃないしなぁ。まぁいいや、今日はとにかく帰ろう。


それで…出来る限り勉強しよう。月曜テストみたいだし…。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



うぬぬ…全く分からん。


今僕はタブレットの中にある教科書を開いて、クリントからメールで届いたテスト範囲内のページを読んでいる。


でも正直…全然意味が分からない。特に数学。


何これ? え? これがこうなって…あ、分かったかも………え? 違うの? あー! もう! 分からん!!!


あ〜…テストって憂鬱だ…。何でこんなのあるんだろう。ドラゴンにはそんなの無いよ? ドラゴン基本、起きてご飯食べてゴロゴロして寝るぐらいだよ?


……こう客観的に見ると、ドラゴンってマジでだらしないな。いや、ドラゴンにもドラゴンなりの苦労はあるんだけど。


あ〜…ドラゴンが羨ましい…。いや、ドラゴンの生活送ろうと思えば送れるんだけど。あ〜…恋しい…。


勉強に飽きてきた僕は、タブレットでインターネットを開いた。


いや、これはサボりじゃない。これは休憩なんだ。休憩しないと頭も働かないしね。うん。これは必要な休憩だ。


ん?


僕がインターネットを開いた瞬間、ニュース速報に妙な記事が載っていた。


《クロニル市で大規模な破壊行為が発生。犯人はドラゴンか》


僕がそのニュース記事をクリックしたところ、まだ事件は続いている様だ。


アルゴラのアップデート完了からドラゴンの御無沙汰は無かったっていうのに、よりによって今日出てくるのか。

いや、確かにドラゴンの生活が恋しいとは思ったけど…。


まぁいい。休憩にはならないけどちょっとした気分転換だ。


クロニル市…え〜と…う〜ん…あまり人通りの少ない場所には行った事ないな…。


僕はすぐにクロニル市周辺の写真を検索してみた。

僕が転送できるのは異空間か、一度行った場所若しくは目視できる場所と限られている。

そして便利な事に、「目視できる場所」は何もリアルで見る必要はない。


そう、行ってしまえば写真さえあればいいのだ。


僕はクロニル駅の屋根に狙いを定めた。


ここに行こう。


そう決めた瞬間、僕は俺へと切り替わり、クロニル駅の屋根の上にいた。


俺はすぐに空へと羽ばたき、何処で破壊行為が起きているのかを探す。


そしてそれは、案外簡単に見つかった。


驚くべき事に、周りの建物や物が突然見えない何かに踏み潰される様に形を変形させていっているのだ。


透明の魔法か?

まさか、クリントと一緒の時に流されたテレパシーもこいつが?


よく見ると、ある一定の方向に向かって物が潰されていっている様だ。

なら、その進行方向に先に降りてしまえばいい。透明の相手とは厄介だ。しかもあの時の状況を考えるに、奴は匂いまで消す力があるらしい。

そんな相手とどう戦えば良いのか分からないが、一応やってみるだけだ。


【おい透明野郎! 止まれ! どうせ俺が狙いなんだろ?】


俺は潰されていく物の近くにテレパシーを送る。

これで、少なくとも反応がある筈だ。


…………

………

……


反応ねぇ。


あ? 無視? 無視なの? おいちょっと流石に腹立ったぞ。


【おい! てめぇ! 無視してんじゃねぇよ!!! 出てこいこの臆病ドラゴン!!!】


俺がイライラしながらテレパシーを送ると、ようやく先の方から影が見えた。


でも、何かおかしい。


ドラゴンにしては…小さすぎる。


っていうかアレは…。


「……もしかして、さっきから僕に言ってるのか? ドラゴンさん」


人間だった。


スーツ姿のサラリーマン風の男が、一人そこに立っていたのだ。


は?


俺は意味が分からなかった。


何で? 何で人間がいんの? 避難し遅れた? にしてはヤケに冷静だけど…。


「悪いけど…僕の邪魔はしないでくれるかな…? ドラゴンさん」


俺が混乱している間に、サラリーマンはそう言って道を照らす街灯に手をかざした。

すると信じられない事に、その街灯は何かに押し潰されたかの様にグシャグシャに潰れ始めたのだ。


……え?


俺は、さっきの光景が信じられずにいた。


え? 今何した? まさか、今までの破壊行為はこの人間がやってたって事か? は? いや、そんな訳ないだろ。アレは人間業じゃねぇぞ?


あ、人間が俺に手をかざして…


!?


突然、俺の体が重くなった。

俺はアスファルトの床を粉々に砕きながら沈み、ヤケにくる重みに体が動けなくなる。


「へぇ…やっぱりドラゴンは頑丈なんだな。人間だとこれで死ぬのに…」


【て、てめぇ…何者だ…! 本当に…人間か…?】


「あぁ? 人間だよ」


途端、俺の体はさらに重くなった。

違う。これは俺の体が重くなってるんじゃない。俺の周りの重力が強くなっているんだ。


「化け物が僕を化け物呼ばわりするなよ。もうそんな扱いはうんざりなんだよ!!!」


【で、でも…これ…魔法だろ…? 魔法は…ドラ…】


「魔法はドラゴンだけのものだとでも? 違うさ! お前達以外でも使えるんだよ! 僕達、魔術師ソーサラーならね!!!」


魔術師ソーサラー…?


何だ? どういう事だ? 本当にこいつ…人間なのか?


「彼の声を聞いて目が覚めたよ。これが僕なんだってね!!!」


【彼? 彼って誰…】


俺が疑問を訊こうとすると、今度は俺の体が軽くなり、挙げ句の果てには宙にまで浮き始めた。

マジかよ…。こいつ…重力軽くする事もできんのか…。


俺は何も抵抗する事ができず、ただただ浮かび続けるしかなかった。

そして50メートルほど上げられた瞬間、急に重力が重くなり、俺は地面に真っ逆さまに落ちていった。


「グアァ!!!」


あまりの衝撃に、俺は口から血を吐いた。


やべぇ。マジで痛ぇ。骨何本か折れたかもしんねぇ。クソッこちとら治って退院したばかりなんだぞ。少しは労われよ畜生め。


「ドラゴンはそこでくたばってろ」


あいつ…調子乗りやがって…。

生憎ドラゴンはそんなヤワじゃねぇんだよ。


にしても、ドラゴンスレイヤーは来ないのか? 犯人は人間っぽいけど、素人目で見ればドラゴンがやってる様に見える筈だろ? ドラゴンスレイヤーは何やってんだ?


「ハハハ…最高だなぁ…最高だぁ!!! 何で最初っからこうしなかったんだよ! 最初からこうすれば良かったんだ!!! こんなに満たされたのは初めてだぁ!!!」


あのサラリーマン…めっちゃ興奮してやがる…。

何だかさっぱりだが、まずはあのサラリーマンを止める方が先決だ。

でも、どうやれば良いんだ? 今まではドラゴンだから管区外に飛ばすだけで良かったが…。


「愚民共ひれ伏せぇ!!! これからは僕達の時代だ!!!」


あぁもう良い! 兎に角力尽くで止める!!! 死なない程度で!!! 恨むなよサラリーマン!!!


「僕達ソーサラーの…僕達、ネオプロ…」


バシュッ!


……え?


空気を貫く様な音が聞こえたと思ったら、突然サラリーマンが胸から血を流しながら倒れていた。


え? 今…何が…


バシュッ!


ッ!


「グオォォォォォォォ!!!」


痛ぇ!!! 左肩に何か当たりやがった!!!

俺はここは危険だと察し、すぐに家へ転送する。


「……はぁっ! ぐっ! あぁッ!」


家に戻った僕は、左肩を押さえて痛みに耐えた。

僕は痛みに耐えながら、服の襟を引っ張って血塗れの左肩を見る。

もう回復してきているが、そこには抉られた様な小さな穴が空いていた。


「はぁ…はぁ…僕…ぐぅっ! う、撃たれた…の…?」


そう、その跡はまるで弾痕だった。いや、実際銃で撃たれた事が無いので分からないけど、そんな感じがした。

ワイヤーなら撃たれた事はあるし、僕はドラゴンなのだから撃たれても何ら不思議はない。


でもそれより気掛かりなのは、あの魔法を使ったサラリーマンだ。


ソーサラーという言葉も引っかかるが、彼は僕が撃たれる前に倒れていた。

まさか…あのサラリーマンも撃たれたっていうのか?

警察か何処かのスナイパーが、破壊行為をするサラリーマンを撃ったのか?


「い、一体…何が…何が起こってるんだよ…これ……」


僕は頭がパンクして訳が分からなくなった。


魔法を使う人間。


そんなの、考えた事もなかった。

魔法はドラゴンだけが使えるものと思っていた。

まさか、今日クリントと一緒にいた時に聞こえたあの声も人間のものなのか?


《我々は「ネオプロローグ」》


ネオプロローグ…。


そう言えば、あのサラリーマンも撃たれる直前にその名前を言おうとしてた気がする。


もしその名が、魔法を使う人間・ソーサラーの集まりなのだとしたら…。


「何だか……面倒な事になっちゃったな…」



ーーーーーーーーーーーーーーーー



クロニル市に建つ廃ビルの屋上で、一人の男が何かを黒いリュックの中に片付けていた。


それは、折りたたまれた狙撃銃だった。


男のインカムに連絡が入る。男はインカムのスイッチを入れる。


「どうした」


『片付けたか?』


「俺の腕に不安でも?」


『……いや? 訊くだけ無駄か』


そこで通信は切れた。男はすぐにリュックのジッパーを閉め、何食わぬ顔で屋上を降りていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ