【二章】 第八話・王都到着
勢い……誇れるものは、ただそれだけ……!
村の女衆たちから、熱烈な別れを告げられ、色々教えてくれた村一番の萌キャラ、村長付き執事のカークさんとも別れ。
僕は王都へとやってきた。途中騎士団の皆さんに、この世界での宗教や神様を軽く教わり、この世界での“世界常識”(食っても体重が増えない……だと……!?)などを聞き出し、せっせと情報収集にも努めました。
流石ファンタジー王都だ。壮大だぜ! 細かい描写は面倒なんで省く!
テンポが重要なのだよテンポが! だいたい真面目なファンタジーでもあるまいし!
ワースアルド中央大陸、三つの国が睨みをきかせる西方の国。
交流は盛んだ。中央に運河が東西に流れており、その河をまるで堀のように王城がそびえている。
正門は南だが、東西南北すべてに大門があり、周辺を4m級なら巨人に攻められても平気なくらいの壁が、強固に国民を守っていた。
僕は運送の馬車に便乗させてもらい、お尻が痛くなるのも耐えながら魔法の基礎練習を繰り返し、四日の日数をかけてナーロ村から王都へと入った。
うっはーーファンタジー王都だー! やっべテンション上がりまくりんぐ!!
……ちなみにここにたどり着くまでに七回オナニーした。夜抜け出し。しょうがないじゃない男の子なんだから。
魔法学園は、北の王城に対比し、運河を挟んで南に居を構えていた。敷地面積は城に遜色ない。流石に向こうの方が尖塔が圧倒的に高いが。
編入手続、今は五月下旬。この世界でも入学は四月らしく二ヶ月ほど遅れての入学だが、足りない部分は努力でカバーしてみせるとも!
やる気は十分だ。
入学の際、エミリーさんとエイミィさん。白銀の薔薇魔法騎士団の隊長と隊長補佐、ド=キャルケン家が保証人になってくれた。
……なんという主人公待遇。僕主人公? 主人公でいいですかー!?(いいともー!)
いやいたれりつくせれりで、本当に頭が下がります。
この借りは必ず! 身体で! この176cm109㎏の太めで脂ぎった汗の多い身体で! 薄い本のちょっとマニアックなジャンルの方向で返せたら……いいな!(いいともー!!!!!)
この作品は万年「いいのよ」タグ全乗せ実施中だ~!
入学の際、僕は魔法学園の学生寮に入ることとなった。エミリィさんもエイミーさんも、「困ったことがあったらいつでも、なんでも言ってくれ」って全力フォローを申し出てくれた。
飛び入りだったため、二人部屋の学生寮は、どうやら僕一人で使用するらしい。ちなみに男女比は普通に4対6。まあ出生率が女子の方が二割ほど多いんだっけ? 妥当な数値と思う。
それでも、女子が多いけどね!!
いや楽しみだ……いや別に男子校の出身じゃないです。まあ僕の周囲は男子校ATフィールド張られてましたが。
どうやら僕は、この美的感覚があべこべなアールドワースで、超美形な容貌の持ち主らしい。王都の繁華街を少し歩いたけど、女性はもう……片っ端から僕に注目した。男子だって見惚れるくらいだった。
始まっちゃいます~~? 僕の、俺TUEEEEE!!!!!! な最強無双伝説? 始まっちゃいます~~~?????
ゴメンね~~強くてさ~~! マジイケメンでスミマセン、嫉妬厨乙~~wwww
…………スミマセン少し調子に乗りすぎました。
謙虚、これ大事。マジ。社会人。OK?
ハーレムを作る? 冗談じゃない。白銀の薔薇魔法騎士団。彼女たちがどれだけ自分を卑下していても、僕の美的感覚まで変わるわけじゃない。
むしろ! 皆様の共有ペットにして下さい! こんな僕の身体とチ●●でよろしければ!!
桐ケ谷琢磨呂。元野川原高校相撲部一年、16歳!
今はタクマロ=キリガヤ、明日から魔法騎士を目指して、魔法学園の一年生に編入いたします!
僕は、アニメの学生寮並に豪華で瀟洒な二人部屋で一人、ベッドをギシギシアンアンと一人で悲鳴を上げさせ、明日からの学生生活に夢を馳せた。
制服は白いブレザー風。特注でジョバンニが一晩でやってくれました。いいね! 書籍化した時にイラストレーターが書くの楽だね!(チラ、チラ。
女子も白のブレザー、学年でリボンの色が違うらしい、コミカライズした時漫画家が楽だね!(チラ、チラ。
白のブレザー、白のブレザーです! 参考文献は精霊使いの剣舞あたりを! 支援イラストも描きやすいね! 描きやすいね!!(……スミマセンくどかったです。
遠足前みたいだ。ドキドキして眠れない!
あ! いかんいかん、自己紹介しっかり考えておかないと! 記憶喪失、どの辺のレベルかまで、しっかりプロット見直さないと。
書いてないけどねプロットなんて。
やべテンション上がりすぎて疲れた……休もう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
朝、魔法学園1年D組。
トーマス=クルーゼは、まだ人もまばらな頃に教室に入り、予習するでもなく机で頬杖を付いて溜息まで吐いた。
教室の扉を開けた時は、六名が自分に注目した。全員女子で、一瞬身体が強張ったけど、全員特に興味もなさそうに再び雑談を始めた。
まぁ……モテないよなぁ。
この顔じゃ~なぁ……。
いやいや、別にモテたくて魔法学園に入学したわけじゃない、故郷の村で、故郷では神童とさえ呼ばれるレベルの魔力を感知され、村人の期待を一身に背負ってこの学び舎の門をくぐったのだ。
魔法を使える村長ももう高齢だ。此処は一つ、俺が村長の後をしっかり継いで村が50年安泰になるくらいの魔法使いに……。
と、思っているのだが。
所詮は風属性。
相当な高レベルにならないと、そもそも実用に至らない。
そしていざ入学してみれば、俺レベルの魔法使い見習いはゴロゴロいた。
……できれば、土属性か水……なんなら火属性でも、お嫁さんに見初められて、うちの村に来てくれれば……。
うちのノクタン村は水も空気も美味しいよ~、特産物はカボチャ、カボチャのスープにケーキに、甘くて甘くて美味しいよ~食べ放題だよ~~!
……まだ入学して二ヶ月。しかしオノボリさんのトーマスは、既に現実を見せつけられていた。リアルとラノベの学園生活は違うんだな~、と……。
「男は楽でいいよね~、お婿さんになればいいんだし~」
……選ばれない男は、辛いよ。
いっそラヴィアンロッド神でなく、ジーヴァ神にでも信仰替えすれば……いやいや、親父が泣くっつの。
トーマスはまた、「はぁ~」と溜息を零した。
と、どたどたと慌ただしい足音が、ちらほら登校する生徒たちに交じってこの教室を目指してきた。まだ遅刻を気にする時間じゃない。
いつの間にか半分ほど席の埋った1-Dに、男子が一人駆け込んできた。
「ビックニュースビックニュース! 今日から編入生が来るんだってウチのクラス!」
今どきラノベでもありえないくらいのベタベタなキャラ。男子のクセに慎みが足りないアイツは、クリス=ダウト。黄緑色の髪と、低身長と丸眼鏡以外特に肉体的に特徴はない。
男子らしいうわさ好きで、容姿に優れないわりに(全く人のこと言えない顔だけど)女子とも気兼ねなく話したりと、正直もっと早く友達になっとけば良かったな~という生徒だ。
机の上に座るガサツな女子が数名、クリスの言葉に耳を傾ける。
「ダレ? 男子? 男子よね? 男子じゃないとリテイク」
「男子よね? 美形? 美少年よね勿論?」
まあネタだけど、それでも食いつきすぎでしょ女子の皆さん。
「それがもう……噂じゃとんでもないレベルの美形男子だってさ! 職員室が騒然となってたよ!」
女子のテンションが一気に膨れ上がった。
あ~~これ以上ライバル増えるとか、マジ勘弁。
でも……そういえば隣に空き席が急に増えたな、そのためかな?
トーマスは窓側から三列目、一番後ろの席だった。
ちょうど虫食いのように空いていた空間だが、できれば俺みたいな不細工にも隔てない美少女が来て欲しかったものだ。
クリスは未だ興奮を抑えきれないよう、クラス中の注目を浴びてあること無いこと言いふらしている。
いやいや地上に舞い降りた天使とか、今どきラノベだってそんな表現ねぇだろ。なんだよ宝石に喩えると値段の付けられない「ザ・グレート・スター・オブ・アフリカ」って――アフリカねえだろこの世界。
予鈴が鳴り、一同席に着く。
やけにそわそわした面持ちで、担任のルシルダ先生が朝礼を始める。ザマス眼鏡がダメな方の意味でマッチしきった、27歳多分処女。担当教科は属性水。
「起立・一堂礼・着席」ホームルームを始める前に、と、ルシルダ先生に呼ばれて一人の生徒がのっそりと、入室する。
教室から――空気が消えた。
一言で言うと……、
「ザ・グレート・オブ・スター・アフリカ」……だった。
もう……世界中のトップモデルが裸足で逃げ出すレベルの美貌、だった。
…………ナンダ、アレ……?
トーマスは言葉を失い、教室中の生徒が呼吸さえ忘れた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ルシルダ=ラ=スール先生、美人過ぎるだろコレマジ……。
鋭角的な眼鏡は知的で、長い砂色の髪をアップに纏めている。タイトなスーツにミニスカート、その美脚は黒ストッキングで包まれ、乳房とヒップははち切れんばかりにムチムチに実っている。
もう――この美貌とスタイルだけで犯罪だろコレ。懲役禁固100万年だ。
しかも担任で、担当教科が“水”ときたものだ。この人に放課後課外授業とかさたら……。
『……もう、タクマロ君、何度言わせるの? ちゃんと聞いてないとダメでしょ?』
『あん、しょうがないわね……先生が、実施で教えて、あ・げ・る♥』
『ダメよタクマロ君……ッ! 私達……生徒と教師、なのよ……ッ!?』
うおぉおおぉぉルシルダ先生ぃぃぃいいぃぃ!?!? もう辛抱たまらんのじゃぁああぁぁあぁ!!!!!?
……失礼。昨夜エミリーさんとエイミィさんと騎士団の皆さんで三回抜いといて正解だった。
だというのにもう、前を歩いて魅惑のお尻をプルンプルン揺らして、時折頬を赤らめチラチラ振り返り、熱っぽい視線とかマジ勘弁して下さい。
既に腹の中が煮えそうなほど熱くなってます。もう魔法騎士なんてどうでもいいからその辺の空き教室に引きずり込みたい。「へへへ、いいだぜ大声出しても!」「ああ、神様……!」
……性欲の無いハーレム主人公が羨ましいって思ったのは初めてだ……。
しかし……本当に大丈夫なのだろうか? まだ教室着いてないんですけど?
王都ですら“アレ”だったのに、歳の近い若い女の子が6割を超える教室とか……。
先に教室に入ったルシルダ先生が朝礼を始める。ああこっちでも「起立・礼・着席」はあるんだな、なんか適当だなこの世界。
そして呼ばれ――もう覚悟を決めて入室する。
魔法騎士に! 僕はなる!!
……その決意さえ、一瞬で粉々に消し飛びそうなアレだ……。
もう路線変更で18禁タグ付けていいですか? R-18にしていいですか??
ファンタジーの魔法学園。
皆の髪は色とりどりだ。男子も女子も、ピンクに紫、水色にオレンジ。
肌の色も褐色から黒、赤銅のような色。
あ――エルフ発見!? エルフ耳だ!? 男子に一人に女子に二人! しかも片方は肌の色が濃くて……ダークエルフ!? 父さん、エルフは本当にあったんだ!!
そして――女子の実に過半数が、もうどのエロゲでも看板ヒロインになれるレベルの……ッ!
僕は入室し、黒板に自分の名前をカタカナで書く。あ、日本語ですここ。
「……タクマロ=キリガヤと申しますぅ。実ぁ、ちょっと記憶を失っておりまして……一般常識さえおぼつかない有様でしゅが、どうか皆さん、よろしくお願いしまぁす!」
元気よくハキハキと、ああダメだ、昨日あんなに練習したのに緊張で噛むし耳まで真っ赤だ。
教室は……全員目が点だ。
……菊地秀雪の書く超美形主人公が転校して来て自己紹介したら、こんな反応なのかな……?
沈黙は、余裕で30秒続いた。反応を待つ。
さらに30秒。さらに30秒が経過した。
1分30秒。いやおい長すぎだろ。
「……よ、よろひくお願いしまぁす!」
もう一度頭を勢いよく頭を下げる。
気を付けたのにまた噛んだ。このデブは。
そして――――四階中に響き渡る大絶叫。
当然隣のクラス、隣の隣のクラスまで響き渡り、だがそれほどのパニックは起こらなかった。
隣のクラスの先生もその隣のクラスの先生も、この事態を想定していたかのように鎮静に努めたのだ。
……なんかもう、生きてるだけで迷惑かけてスミマセン……。
昨日街を歩いた時を思い出した。周囲をがっちり最強の白銀の薔薇魔法騎士団に囲まれていなかったら、二十秒後には身ぐるみ――っつ~か貞操を失っていたのかもしれない。
もっとこう……どっかの妹みたいに、都合のいい時だけ思い出したような絶世の美少女設定になりませんかね? 殆ど死に設定みたいなアレ。
無理ですかそうですか……。




