第四話 Ⅱ
エルの溜息の原因、それは1週間前の出来事。
その日は、合宿が始まる1か月前に担任のスハイツから予告された、合宿で一緒に動くチームを決める日だった。
A~Hまでの8クラス全てが行動に集められ、チームの定義や行動の仕方などをザッと説明され、その場でチームを組む事となったのだが。
そのチームを組む人数が、エルの不運の始まりだった。
チームを組める人数は5人。それ以上は認められない。
エル達の何時ものメンバーは、エル、ロウェン、マリア、ユウキ、ナディア、ソフィア。の計6人。
1人余るのだ。
それで、誰が抜けるかとか3人と3人で分かれるかとか、議論が交わされる前にエルが。
「俺が抜ける」
と言って、さっさと抜けたのだ。
「「「「「あぁ……、うん」」」」」
意表を突かれて生返事をする5人を尻目に、エルはカイとジョルジオを探した。
チームを組むのにクラスは関係無かったので、丁度良いから友人である2人にチームに入れて欲しいと頼む積もりだったのだが。
「フェルトゥナ君!」
普段中々呼ばれない苗字で背後から呼ばれ、エルが振り返ると。
そこには薄い茶色の髪と瞳を持ち、頬にそばかすがある男子生徒が駆け足で近寄って来ていた。
「ブッツィ君? どうしたんだ?」
彼の名前はラポ=ブッツィ。エルと同じG組の生徒だ。話した回数は片手の指で足りる程しか無いが。
特に親しい訳でも無い彼が声を掛けてきた事にエルは目を丸くして問うた。
「ラポで良いよ。それで、あ、あの……。フェルトゥナ君、1人みたいだったからチームを組まないかなって思って……」
気の弱そうな見た目の彼がこんな事を言うとは意外だ、とエルは思った。
実際、今もオドオドしているし。
クラスメイトとはそれなりに会話はするが、ロウェン達とは圧倒的な差があるのでもう少し親しい人を作った方が良いかな、と思った。
「うん、良いよ。組もう。それと、俺もエルで良いから」
恐らく、かなり勇気を出して誘ってくれたのだろうし、良い機会なので了承する。
「そ、そう……? ありがとう」
苦笑して礼を言うラポは、あまり嬉しそうには見えない。
体調でも悪いのだろうか? 不思議に思って訊いてみる。
「気分でも悪いのか?」
「い、いや。大丈夫だよ」
苦笑で返され、誤魔化される。
あまり仲が良い訳では無いので、これ以上訊くのを止め、別の事を尋ねる。
「ラポの他にメンバーはもう居るのか?」
「う、うん……。あ、あっちに…………」
表情を一気に曇らせ、視線をある方向へ向けるラポ。
またも不思議に思いながらも、彼が目を向けた方をエルも見た。
そして、もう居るというメンバーを認識した途端、ラポの落ち着かない態度の理由を悟った。
「あの、ごめん。ごめんね、エル君……」
謝る彼の顔は若干青くなっている。
そんなに怖い顔になってるかな、俺。とエルは思う。
でも、それは仕方ない事なのだろう。
だって、視線の先に居て、こちらを見ているのは。
アマンシオ=ムローワ、ガロ=コルチノ、サルバ=メドウェスの3人だったのだから。
お読みいただき、ありがとうございます。
先週いきなり更新できなかった事、また本日の投稿が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。
今後もお楽しみいただけると嬉しいです。




