第二話 ⅩⅣ
気まぐれ発動っ!!
これも理由の一つではあるのですが、最近の投稿は文字数・文章量が少ないのが申し訳ない、というのもあります……。
やっと日曜以外に一回投稿してもギリギリ大丈夫な位にストックが溜まりましたので。
お楽しみいただければ幸いです。
「大丈夫なんですか?」
エルが生徒会室から去った後、最初に口を開いたのは副会長のアーロンだった。
解散後、エル以外の面々は誰も席を外していない。
アーロンの言葉には複数の事に対しての不安が滲んでいた。
「……分からない」
オレストは答えられなかった。
アーロンの言った事はオレストも思っている事だ。いや、正直に言って大丈夫じゃないと思っている。それは訊いてきたアーロンも同じ筈だ。
そう思いながらも、彼は不安に背を押されて訊かずにはいられなかったのだろう。
彼だけでは無い。恐らく、この場にいる全員が同じ心境に立っている。
そう考えているからこそ、彼女の言動に疑問を感じた。
「エイレーネ、何故彼にあんな事を言った?」
芝居紛いの事までして。あれでは誘導しているのと一緒だ。
そんな積もりは無かったのに、責める様な口調でオレストは言ってしまった。
思っている以上に、自分は動揺しているらしい。
きつく問われたエイレーネは特に表情を変える事無く答えた。
「彼の生活の平穏を考えると、バルドに勝利する以外の道は無いからね」
勝つ積もりでも負ける積もりでも、結果として敗北すればエルに対する周りの接し方は悪くなると推測できる。例え相手の学年が二つ上の三年生であっても。
過ごし難い環境となれば、最悪エルが潰れる事になりかねない。これは頂けない。
勝利した場合に報復に来るだろうバルド一人であれば生徒会で何とか出来るだろうが、学院の生徒達複数となると手が回せない。
ならば、少しでもエルが勝つ可能性を上げなければならない。
「それに、ホメロスとオルティアが止めなかったからな。グウィードとミズホも」
エイレーネは名前を口にした三人を見やる。
名前を出された四人は表情を変えない。オレストやアーロンの様に不安を感じていないらしかった。
エルの所属している神官部の部長・副部長のホメロスとオルティアはこの事に関して無視出来ない筈だ。荒事に担当である風紀委員会のグウィードとミズホも、立場からしてエルを止めるのが本来の仕事だ。
口を開いたのはグウィードだ。
「……お前達が思う程、悪い結果にはならないと思うぞ」
言われた言葉にオレストは首を傾げる。
「何で?」
「ほんの切れ端にしか過ぎないが彼の魔術の技量を知っているからな」
グウィードはホメロスに視線だけを向ける。
「彼の実力はホメロスの方が知っているだろう」
言われてエルが神官部に入っている事を思い出し、オレストはホメロスを見る。
顔を向けられたホメロスは少し迷惑そうな表情で答える。
「……そんなに心配する必要がある程、フェルトゥナ君は弱く無い」
返答にオレストは息を吐く。
「お前が認めるなら大丈夫かな」
ホメロスは実力主義な人間だから、彼が認めるなら信用できる。
「じゃあ、エル君にはホントに勝って貰わなくちゃ」
ニッコリ笑顔でそう言うクラリス。
「……クラリス、何で落ち着いていられるんだ? キリは別として」
自分と違って全く動揺の色が無いクラリスにオレストが訊く。
「それって褒めてるんですか? 貶してるんですか?」
「感心してるんだ」
キリルのツッコミの様な発言をオレストは華麗にあしらう。
感心しているというのは強ち間違ってはいない。何時でものほほんとしているキリルは焦りや動揺とは無縁に思える。
「ほら、お化け屋敷を異常に怖がっている人を見ると、自分の恐怖が薄まるでしょ? それと同じよ」
問いに笑顔のまま答えるクラリス。
つまり、オレストとアーロンの動揺ぶりを見て、逆にクラリスは落ち着いたという訳。
「そうですか……」
俺、生徒会長なのに……。と落ち込むオレストであった。
お読みいただき、ありがとうございます。




