第二話 Ⅱ 下
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珍しい来客に少し落ち着かない空気の中、実習は始まった。
そして、講義開始の鐘が鳴った瞬間から、珍しい光景が繰り広げられていた。
「明日は武器選択をする日だ。以上の事から、新しいことは出来ないので今日は特にすることが無い」
生徒の前に立って話しているのはカルロ、ではなくスハイツだ。
入学してからスハイツが実習で生徒の前に立って話したのは最初の自己紹介のみだったので、この光景がとても奇妙に感じる。
「だが、このまま何もせずに解散は出来ない。という訳で、今までは魔術を止まった的に当てていたが、今日は動く的に当てる練習をする」
ニヤリ、とスハイツが笑った。
何だかよく分からないが、とても楽しそうだ。
「そして、丁度いいことに今日は動く的が来ている。それに当てることにしよう」
ククククク……、と笑うスハイツは悪役にしか見えない。
彼は一年に向けていた視線を壁際に立っている上級生に向け、言い放った。
「お前等! 死ぬ気で逃げろよ!」
次に展開が見えず、目を白黒させている一年に言い放つ。
「覚えた魔術をあそこに突っ立ってる上級生共に当てろ! 当てた奴にはご褒美が待ってるぞ!」
G、H組の生徒に後ろを向かせ、スハイツは言った。
「開始!」
第四訓練室にいた上級生は十数人。彼等は自分達の約五倍いる一年生から放たれる魔術を必死に避ける。
しかしやはり、次々に放たれる攻撃全てから逃げることは難しい。
「ぐはぁぁっ」
上級生が魔術を避けることかなわず吹っ飛んでいく。
数が多いこともあるだろうが、特に厄介なのは魔術の使い手が未熟なことだ。
未熟でなければ、自分を狙ってくる魔術の軌道も読めそうなものなのだが、残念ながら未熟な魔術師の放つ攻撃は予測できない。タイミングも狙いも滅茶苦茶な一年生の攻撃に上級生は翻弄されるばかりだった。
G、H組の生徒達が一生懸命魔術を発動させる中、何故かスハイツも一緒になって魔術を放っていた。
「そらー! 逃げろ逃げろー!」
ははははは、と笑うスハイツは本当に楽しそうで。
エルはそんな彼を見て呆れながらも、真面目に魔術を放った。
「うぎゃぁ!」
そしてまた一人の先輩が吹っ飛ばされる。だが、怪我を負ってはいないようだ。
見れば、G、H組とスハイツの後ろでカルロが上級生に魔術を掛けていた。
怪我を負ってはいないが吹っ飛ばされている所を見ると、攻撃を弾くものでは無さそうだ。完全には守っていないことから、これは上級生の訓練にもなっているのかもしれない。
一人だけ、誰よりも現状を楽しんでいるスハイツの後ろで、カルロが眉間を揉んでいたのが印象的だった。
スハイツの悪戯計画のお陰か、G、H組の生徒が揉まれることは無かった。
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